納棺士を育成する『おくりびと®アカデミ』を紹介:ライフエンディング ジャーナル vol.005

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ライフエンディングジャーナル第5弾。

今回は、納棺士としての人材育成を行う「おくりびと®アカデミー」について代表の木村氏にお話を伺いました。

木村光希さん

どのようなきっかけでおくりびと®アカデミーを設立したのか、今後アカデミーではどのようなことに力を入れていくのか等、さまざまな事を聞いてきました。

代表取締役社長 木村 光希氏

幼少期より納棺士である父から、納棺士としての作法を学ぶ。大学在学中に、納棺士としてのキャリアをスタートさせ、アジアでの普及活動に従事。現在は、日本国内で納棺士の技術・作法を伝承するため「おくりびと®アカデミー」を運営している。また、オリジナルの葬儀を執り行う「おくりびと®のお葬式」という葬儀社を全国で展開。同時に、ライフエンディング業界を盛り上げるべく「フューネラルマスターズクラブ青年部」の幹事として活動もしており、多忙な日々を過ごしている。

 取材・文/Life.編集部

この記事の目次

  1. 木村さんが納棺士としてのキャリアをスタートするまで
  2. おくりびと®アカデミー設立の経緯と学べること
  3. 納棺士という職業に向いている人とは
  4. 今後の展望とは
  5. おくりびと®アカデミーの概要

木村さんが納棺士としてのキャリアをスタートするまで

お着せ替えの授業

編集部ロゴLife.編集部

まずは、アカデミーの創業までの木村さんご自身の経歴についてお伺いいたします。会社の成り立ちについてお聞きしたいです。
木村さんは、幼少期から納棺士としての作法をお父様に教わっていたそうですが、当時納棺士という仕事に対してどのように感じられていたのでしょうか?

木:初めのころは、意味なんて分からずやっていたという感じです。教えられるままに学んでいました。僕、小さいときは臆病者だったんですよ。少しずつ意味が分かってきたときに父が仕事で着る黒い服が、何だか怖く感じていて・・・。何となくですけど。

でも、家にお弟子さんが来ているのを見ていて、すごい仕事をしているんだって段々と感じていったのを覚えています。

編集部ロゴLife.編集部

そこから仕事として納棺士を選ぶまでにどのようなことがあったのですか?

木:大学のときにインターンをしたのがきっかけです。大学までずっとサッカーに打ち込んでいて、社会人になってからもサッカーを続けられたらって考えていたくらいです。

そんな大学生のときに、家族と相談してインターンに行ったのが納棺士を仕事として考えるきっかけになりました。

編集部ロゴLife.編集部

インターンの時の何がきっかけだったんですか?

木:何と言っても、実際の現場に立った時に感じた遺族の方々の熱量ですね。

ご遺体って、本当にいろいろな状態なんですよ。もともと綺麗な顔で眠っている人もいれば、臭いがきつかったり顔が分からなくなっていたりって…。でも納棺士の仕事は、そういった人たちを綺麗な状態に仕上げていくんです。

その仕事として取り組んだことに、ご遺族の方が「綺麗にしてくれてありがとう」「良かった」って、喜んでくれる姿がものすごく嬉しくて。その熱量に心を動かされました。

編集部ロゴLife.編集部

ご遺族の熱量、きっと想像するよりも熱いんでしょうね。考えるだけで、心が震えます…。

納棺の作法の授業

一方で納棺士というのは、職人肌で師匠と弟子という関係で仕事の内容を教わります。インターンのときに僕が就いた会社の先輩は、ベテランの納棺士の方だったのですが…。かなり厳しくて、自分の仕事を見て覚えろというタイプで手取り足取り教えてもらったという感じではなかったです。

まわりも同じで、怒鳴られることがよくある結構厳しい世界でした。途中で挫折しちゃう人ももちろんいます。自分は、「二世だから」とか思われたくなくて、その気持ちをモチベーションにめちゃくちゃ頑張った感じです。

それと僕、サッカーを長年やっていたから「勝つチーム」「負けるチーム」というのが直感でわかるんですよ。インターンで入った会社の雰囲気に対して、「あ…このチームはあまり良くないな」って感じてしまって。

折角すごく良い文化があるのに、挫折しやすい環境だとやる人が少なくなるのは勿体ないじゃないですか。

そこで自分がこの世界に入って、環境を変えていきたいなって思ったんです。

編集部ロゴLife.編集部

お話を聞く前に思っていたよりも、かなり厳しい環境です。
では、その後の活動を日本国内ではなくアジアでの活動を始められたのにはどのような理由があるのでしょう?

木:まず納棺士としての技術や知識を伝えて行きたいと思ったんです。ただ、日本ではさっき言ったような難しい環境で。なかなか受け入れられるのには時間がかかるなって、思ったんです。

でもアジアの他の国は、日本と比べて葬儀の業界で先進的な取り組みをしているところが多いんです。例えば、台湾において葬祭ディレクターは政府が認めている職業なんですよ。国として葬祭業界への取り組み方が進んでいて、力を入れているんです。

その環境の中で、自分自身の価値を高めていこうと挑戦しました。

編集部ロゴLife.編集部

政府が認めている職業になっている国があるなど、業界への取り組み方が国ごとでかなり違うんですね。

そうです。仏教をもとにした葬儀という点では日本と変わらないのに、携わる人々を取り巻く環境が違うんです。私自身、父が映画「おくりびと」を監修したということで、「スターが来た!」っていう感じで暖かく迎えてくれたんです。めちゃめちゃ喜んでくれましたね。

そして、教えること一つ一つをしっかりと吸収してくれているのが伝わってきてとても教え甲斐がありました。

おくりびと®アカデミー設立の経緯と学べること

木村さんの横顔

編集部ロゴLife.編集部

海外でご活躍されてきて、おくりびと®アカデミーを創立することになるまでの経緯を教えてください。

木:アジアでの活動を行っていくうえで、教育機関との繋がりがあることがこの業界の発展には重要だと思いました。国内においても人材の確保や技術や知識を伝えていくためにも学校の創立は手段として有効だなと。一定のレベルの人材を輩出するために、学校を創立して伝えていこうと立ち上げることにしました。

編集部ロゴLife.編集部

若手人材の輩出が主な目的ということですね。
それでは学校創立を構想されてからこれまでで、苦労されたことはございますでしょうか?

木:たくさんありますよ!でも何と言っても、受講生が全然集まらないことですね・・・。人が集まらないとお金がないので、学校で教えてくださる講師の方を集めるのもなかなか難しく。

はじめのころは、昼間は自分自身の納棺の仕事を請け負って、学校の運営も行うというように休みなく働いていました。

編集部ロゴLife.編集部

それは大変でしたね…。でも今は、その道の講師の人たちが講義を担当されていて、魅力的な内容が多いですね。
納棺士になるための学校とありますが、具体的におくりびと®アカデミーではどのような事を学べるのでしょうか?

木:おくりびと®アカデミーでは、「死を人生の終焉ということをサポートできる人材」を育成しています。「納棺士コース」では、約半年間の講義を受けてもらいます。

講義内容は、納棺士になるための基礎的な知識と技術の習得を目的としたものが中心になっています。お着せ替えの技術やご遺体の処置、メイクなどいろいろな場面に対応できるような、基礎コースです。

メイクの授業や遺体衛生保全の授業など、それぞれの分野のプロフェッショナルである先生方から学ぶことができますよ。また、座学だけではなく実技の時間もたっぷりあるので、結構体力が必要になってきます。

メイクの授業

納棺士という職業に向いている人とは

編集部ロゴLife.編集部

おくりびと®アカデミーでは約半年間で、納棺士としての基礎的なことがばっちり身に付くわけですね。
ところで…体力の話も出てきましたが、納棺士という職業に向いている人はどのような人なのでしょうか?

木村さんのインタビュー写真

木:納棺士って大きく分けると2つに分けられると思っているんです。職人気質な人と、人との対話が好きっていう人。

前者は、いかにご遺体をご遺族のご意向に沿って、生前に近い姿にするかというのを求める人が多いです。後者は、少しでもご遺族のためになるようなコミュニケーションを得意としていたり、ご遺族にかけられる感謝の言葉を働くモチベーションに繋げたりすることができる人が多いですね。

そして共通して大事なのは、納棺士という仕事に覚悟ができる人だと思います。納棺士が触れるご遺体は、実にさまざまな状態です。想像していた姿を超える場合もあるため、精神的に参ってしまう人もなかにはいます。

だから、しっかりと覚悟を持って取り組める人が向いているんだと思いますよ。

編集部ロゴLife.編集部

実際に目の当たりにすると、気持ちの部分で戸惑ってしまいそうですもんね…。
では、おくりびと®アカデミーへの入学に悩まれている人へのメッセージをいただけますでしょうか。

木:納棺士について学ぶためにアカデミーに通うには、周りの人のご理解や家族のサポートが重要になります。だから、家族ときちんと話し合っていただき、納得してもらったうえで入学をしてください。

先ほどもお話しした通り、学ぶことは多岐に渡るため体力的にも結構しんどいことがあります。精神的にも辛くなることもきっとあるので、近くにいる人々には理解してもらってほしいです。

理解してもらうために、気になる方はぜひオープンキャンパスにお越しください。どのような事が学べるのか、どういった職業なのかをしっかりお伝えさせていただきます。

編集部ロゴLife.編集部

アドバイスありがとうございます。
家族からの理解というのは、アカデミーに通うことだけではなく、納棺士というお仕事をするうえでとても大切なことですね。

今後の展望とは

編集部ロゴLife.編集部

最後に、おくりびと®アカデミーとしての今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。

納棺士のコース以外にも、葬儀に関わることを学べるコースを充実させていこうと思っています。最終的には、葬儀に携わるならおくりびと®アカデミーでいろいろと学べばいいね、と言われるまでにしたい。そのためには、卒業していった人たちが活躍できるようにもっと教えられることは心構えや想い等も含め、伝えていきたいです。

また、おくりびと®アカデミーで働くこと自体が納棺士や葬祭業の人たちのセカンドキャリアの場になるといいなとも思っています。納棺士は体力が必要な仕事なので、年齢を重ねるとしんどく感じる方もいます。

でも、そういった人たちも次に若い人たちに技術やマインド、知識を伝えていくということができる場として、おくりびと®アカデミーがなっていくのが理想だと考えています。

おくりびと®アカデミーの概要

おくりびとアカデミーの授業風景

企業名株式会社おくりびと®アカデミー
電話番号03-3457-2088(代表)
本社所在地東京都中央区入船3丁目7-7 ウィンド入船ビル6F
設立2013年6月
おくりびと®アカデミー 公式サイトhttps://okuribito-academy.com/

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編集後記

木村さん、お忙しいところおくりびと®アカデミーに関するインタビューにご対応いただき有難うございます。納棺士という職業の厳しさと、取り巻く周辺の環境について理解することができました。大変な仕事である一方、ご遺族にはとても喜んでもらえるというやりがいのある職業だなと感じました。人の最期のときに立ち会い、ご遺族のためという意志を持って働かれる人が、おくりびと®アカデミーからこれから先も輩出されるのを期待しています。

ライフエンディングジャーナルは、「Life.(ライフドット)」が企画・発信する特別インタビュー企画です。ライフエンディング業界のイマを取り上げ直接取材し、業界全体をライフドットからも盛り上げて行きます。業界に関わるサービスや商品、そして第一線で活躍する人々にフォーカスし、ライフエンディング業界に対する想いやこれからの展望をお届けいたします。