終活はいつから?年代別の声や背景、ベストなタイミングをご紹介

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終活とは「人生の終わりのための活動」のことですが、昨今の終活ブームによって葬儀、お墓、財産、身の回りの整理などを元気なうちから考える人が増えました。ところでこの終活、いつから始めればよいものなのでしょうか。

この記事ではこのような疑問の解消!

  • 「世間では終活したほうがいいと言われているが、忙しくてなかなかできない」
  • 「もう70歳になるのに終活をなにもしてないけど大丈夫?」
  • 「まだまだ元気だけど、早いうちに終活して意味あるの?」

…などと、不安や疑問に思われている人もいることでしょう。そんな人たちのために、この記事では終活をいつから始めるべきかについてまとめました。調査データや終活をしている人の生の声などを交え、分かりやすく解説いたします。

再度、終活について気になった方は、こちらの記事もご覧ください。

この記事の目次

  1. 終活は60代~70代で始める人が多い
  2. 筆者が考える!終活を始めるタイミングベスト3
  3. 【年代別】実際に終活をしている人の声 ~思い立ったタイミングで始めよう~
  4. 始めるタイミングが早すぎることによるデメリットはない
  5. そもそも終活をする理由とは?
  6. 終活でまず始めるべき2つのこと
  7. まとめ
  8. 監修者コメント

終活は60代~70代で始める人が多い

世間の人たちは終活をいつから始めているのでしょうか。くわしく調べてみると、圧倒的に60代〜70代の人が多いことが分かります。まずは客観的なデータからご紹介します。

20代~70代にきく終活に関する意識調査(株式会社マクロミル調べ)」では、終活の実施率は60代と70代が圧倒的に多いことが分かります。

終活の実施率(性年代別)

20代30代40代50代60代70代
男性5.2%4.2%2.5%6.1%10.1%19.9%
女性3.8%4.3%6.2%12.1%23.2%30.2%

楽天インサイト株式会社(旧楽天リサーチ)の「終活に関する調査」でも同様の結果が出ています。

終活を始めたい年齢(年代別)

20代30代40代50代60代70代80代以上状況次第、必要に応じて
0.7%3.5%5.7%12.4%41.7%23.6%3.2%9.2%

このような結果からも、終活を最も行なっている、あるいは始めたいとする年代層は60代から70代にかけてということが分かります。

しかし圧倒的に多いのが60代から70代です。 なぜこの年代の人たちが最も多く終活に取り組んでいるのか、その背景をひとつずつ考えていきましょう。

定年を過ぎ生活が安定し時間ができる年代

60代から70代は、定年退職を終えた人がほとんどです。仕事に通うこともなく、生活も安定し、時間の余裕ができる年代です。
いわば、仕事や生活など、生きることに忙しい50代までと違い、自分たちの老後や死後を 、どのように迎えようかとゆっくりと考える時間があるのです。

終活は、医療、介護、葬儀、供養、相続、遺品整理などとその切り口が多岐にわたり、片手間ではなかなか本格的には取り組めません。ひとつひとつをじっくり考えるには、どうしてもまとまった時間が必要になります。

身体は元気で動くことができる年代

定年を迎えた人たちの中でも、後期高齢者(75歳以上)の年代になると、身体的にも衰えを見せ始め、自分自身で終活を行うのが難しくなってきます。
例えば、「どこかのセミナーに参加しよう」「専門家に話を聞いてみよう」「ノートを本格的に書いてみよう」などと取り組もうとしても、活動的になるにはある程度の体力が必要です。
自分自身が80代や90代になって、体の自由がきかなくなる時のことを見越して、60代や、70代あたりで、終活を行う人が多いように思われます。

筆者が考える!終活を始めるタイミングベスト3

終活カウンセラー

終活を始めるタイミングは基本的には自由です。何歳から始めたからよい老後やよい最期を迎えられるというものでもありません。 人の人生は人それぞれ。何よりも思い立った時が吉日ではないでしょうか。その上で筆者が考える終活を始めるタイミングのベスト3をご紹介いたします。

①自分が思い立ったタイミング

最も良いタイミングは、自分が思い立った時です。どんなことでも自分が「よし、やろう!」と、やる気にならないと気持ちが入らないものです。気分が乗らないのに、無理やり世間の空気に合わせて自分も終活してみようと思うのであれば、無理にしなくても良いでしょう。もちろんまだまだ現役世代の若い人たちが終活をしても構いません。

どんなに終活がブームだからといっても、しなければならないという強迫観念に捉われる必要はありません。
早すぎることも、遅すぎることもありません。気が向いた時、必要に駆られた時が、その時です。

②定年を迎えたタイミング

全体的にみていますと、やはり定年が終活を最も始めやすいタイミングなのかもしれません。

会社勤めを終え、時間に余裕もでき、そしてまだまだ元気で色々なことにアクティブに取り組める人が多い年代だからです。

死はそんなに先でもありませんし、かといってすぐそこにまで迫っているわけでもない。セカンドキャリアを迎えるにあたり、まず自分がどのような最期を迎えたいのか、そしてどのような道を過ごしたいのか、という理想像を思い描いて新たな人生を歩みだす上でも、終活は有用です。

③環境や体調の変化をきっかけに

自分の身の回りに大きな変化が起きた時、あるいは自分自身の体調に変化が起きた時に終活を考える人もいるようです。

例えば身近な人に不幸が起きた時、あるいは身近な人が病気になってしまった時、こうした時に私たちは命について、そして死について、思いを巡らすものです。

また自分自身が体調を崩してしまったり、病気になってしまうことで、いつまでも元気で若くはないんだということを再確認させられます。

やがてやってくる終わりを自覚しだした時こそが、終活を始めるタイミングなのかもしれません。

終活を始めるタイミングベスト3を紹介しましたが、実際に終活をしている人たちは、どのよう想いで終活を始め、どのような事に取り組んでいるのか。次の章では、具体的な事例をご紹介いたします。

【年代別】実際に終活をしている人の声 ~思い立ったタイミングで始めよう~

事実婚 相続

さまざまな年代の人たちに、実際に終活をしてみた感想について伺ってみました。みなさんそれぞれ、「何歳になったから」という年代ベースではなく、「自分が体調を崩したから」「大事な友人を亡くしたから」「あととりがいないから早めに準備をしておきたいと思った」などと、何らかのきっかけとなる出来事があって、終活を始めているようです。あくまでも、思い立ったタイミングで良いのでしょうし、終活を始めるのに「早すぎる」ということはありません。あなたが終活を始める参考にしてもらえれば幸いです。

一番多い【60代】から終活を始めた人の声

60代から終活を始める人は、やはり定年というものが大きく作用しています。これまで長く働いてきた人たちが新たなライフスタイルを築いていくことが、同時に自分自身の最後を見つめるきっかけになるようです。
また30代や40代の子を持つ人たちも多く、子や孫のライフスタイルが自分たちの未来を決める側面もあるようです。そこには「子供たちには迷惑をかけたくない」という想いを持つ人が非常に多く、団塊の世代特有の独立心の強さや、核家族社会による家族観の変化の影響が見て取れます。

終活を始めたきっかけ

「終活にはずっと興味がありましたが、定年を迎えて時間に余裕ができたことで本格的に取り組みだしました。わが家には娘が2人しかおらず、私たち夫婦のことを見てくれる跡取りがいないため、元気なうちから終活をしようと決めていました」(60代夫婦)

「故郷の熊本には高齢になる両親がまだ健在ですが、子供は私たちしかいないため、こちらに引き取るつもりです。デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの施設について探さなければなりませんし、熊本にあるお墓を処分して遺骨をこっちに持って来なければならない。そのためには納骨堂や樹木葬など新しいお墓について考えなければならない。そうした必要性から終活を始めました」(60代女性)

「40歳の時に離婚して、女手ひとつで子供二人育ててきました。息子は仕事で海外を駆け回ってますし、娘は結婚して東京で家庭を築いています。子供たちの人生を考えた時に、私のことで彼らの人生を縛りたくないと思い、自分の最後は自分で考えようと終活をしています」(60代女性)

実際に終活でどんなことをしているか

「葬儀社のエンディングノートセミナーに参加して、そこで出会った講師の人と定期的に連絡を取り合ってます。まだまだ元気な体なので、今すぐどうのこうのと本格的な動きは取っていませんが、専門家がそばにいるという安心感があります。エンディングノートは気が向いた時に開いています」(60代男性)

「遺産相続について早めに税理士さんや弁護士さんに相談しています。わが家は父が残した遺産があるのですが、悲しいことにその遺産を巡って兄弟間の仲が悪くなってしまいました。そのことを母が大変気を揉んでいます。母が亡くなった後、さらに家族が不和にならないよう、今のうちから相続問題に向き合っています。自分のためというよりは母のためですね」(60代男性)

「お寺の期限付き墓石を購入しました。私は愛媛県生まれの次男で、兄が実家にいて両親を見てくれているので私は自分の墓を自分で買わなければなりません。また妻も沖縄出身で、沖縄に戻ることはありません。私たちには子供もいないので早いうちから期限付きのお墓を買って安心感を得ることができました。ただお墓を買っただけではなく、そのご縁でお寺が主催するイベントなどに参加して、さまざまな友達ができ、良かったなと思います」(60代男性)

60代から終活を初めて良かったか

「元気なうちに終活を始めて良かったと思います。終活は思いの外、たくさんのことをしなければならないので、頭や体が元気なうちにしておくに越したことはないなと思いました」(60代男性 福岡県)

「決して遅くはないと思いますが、終活を一緒にしていた60歳になる大切な友達を亡くしました。彼女の家族がさまざまなことで振り回されているのをみると、もう少し早くから終活をしていてもよかったのかなと思います」(60代女性)

「良かったと思います。50代まではバリバリ現役で働いてますから、 老後のことなど考える暇がありませんでした。今でも、細々と仕事は続けていますが、時間に余裕ができたため落ち着いて終活ができます」(60代男性)

遅めの【70代・80代】から終活を始めた人の声

70代や80代の人たちにとって、終活はより身近なテーマです。すでに病院への通院や介護施設に入所する人もいらっしゃるかもしれません。介護や葬儀の必要性がより間近に迫り、具体的に計画を立てていかなければならなくなるでしょう。年齢を重ねれば重ねるほど、さまざまな活動に取り組むことが困難になります。また、家族、友人、知人、専門家などの力を借りながら終活を進めていくのがよいでしょう。

終活を始めたきっかけ

「78歳まで働き続けましたが、さすがに体力が限界に来て、仕事を辞めました。私はひとりもんなので自分の葬式をどうすればいいのだろうと考えるようになり、葬儀社のセミナーに参加して、まずはエンディングノートを書くようにしました」 (80代男性)

「主人が亡くなり、いよいよ自分一人で生きていかないといけなくなるので、終活を始めました。葬儀についても供養についても、何も知らなかったので、主人の葬儀の時は苦労しました。一人娘がいますが、娘には苦労かけたくないので、自分の老後や葬儀について今のうちから準備しようと決めました」(70代女性) 

「ありがたいことに特に大きな怪我や病気もなくここまで生きてくることができました。70歳を超えても孫の守りに忙しく、生きることに一生懸命で終活なんて特に考えませんでした。それでも80歳を超えて、肝臓にがんが見つかり、いよいよ自分も終わりについて考えにゃいけんという気持ちになりました。とはいっても、私は何もしなくて、息子や娘たちが、一生懸命、病院やら、葬儀社やらを探してくれてますが、私はあの子らがきっと何とかしてくれるじゃろうと安心して見てます。頼りすぎかもしれませんが幸せもんです」(80代)

実際に終活でどんなことをしているか

「まだまだ体が元気なうちから家の中の物を整理しておこうと、生前整理の業者さんに来てもらいました。いるものいらないものを一緒に分けてもらい家の中がだいぶすっきりしました。先に亡くなった主人が集めていたいろんな骨董や書画があり、業者の方に鑑定士を紹介してもらい、わずかとはいえお金になったので良かったです」(70代女性)

「家を売り払い、賃貸マンションを借りました。息子や娘も巣立ち、私たち夫婦二人ではあまりにも大きい住まいなので、慣れ親しんだ家で名残惜しさもありましたが、思い切って売却し、2 LDKのマンション住まいを始めました。どうせやがては施設のお世話になるのですから賃貸で十分です」(70代男性)

「高校時代の同級生達に連絡を取り、実に60年ぶりの同窓会を開きました。いろんな人生を送ってきた学友たちが集まり、それでも当時のこと、今はない校舎のことなどで話が盛り上がり、とても良い機会だったと思います。その後も定期的に会おうと連絡を取り合っています。これも終活のうちに入るのかな」(70代男性)

70代、80代から終活を初めて良かったと思うか

「もう少し早くから始めても良かったかもしれません。人生100年時代なんて言いますが、やっぱり70歳を超えると体力的にしんどくなり、若い時のように体がついていけません。急に体調を崩して、息子が急いで高齢者住宅を探してくれましたが、若い時にもう少し自分なりに計画を立てておけば、息子にそこまで苦労かけなかったかなと思います」(70代男性)

「72歳までずっとタクシーの運転手をしてきたので、終活なんてする暇もなかった。早いも遅いもない。自分にとってはこれが今のタイミング」(70代男性)

「もっと早くからしておいてもあったかもしれません。自分では何も分からないので子どもたちに迷惑をかけてしまっている面もあります。自分にとっての理想の最期というものもありますが、何よりもあの子たちや孫たちの幸せを願ってます。

早めの【40代・50代】から終活を始めた人の声

まだまだ働き盛りの40代や50代の人たちにとって、死は遠くにあるという人が多いようです。しかし中には、病気にかかったことで死を見据えるようになった人、親の介護や医療に触れることで自分自身の終活を始める人もいらっしゃいます。社会を支える年代が元気なうちに家族や自分の将来のことを考えることは、家族にも自分にも、大きな安心感と余裕を与えてくれるでしょう。

終活を始めたきっかけ

「親友が交通事故で亡くなったからです。彼には愛する妻と子どもたちがいました。私の命はどうなるのかわからないと自分ごとのように思え、少しずつではありますが終活を始めるようになりました」(40代男性)

「乳がんにかかり、自分の命のことを本当に見つめるようになり、終活を始めるようになりました。がんそのものは早期に発見できたため、摘出手術にも成功し、なお元気に生活しています。それでも自分の命を見つめる機会になったかと思います」(50代女性)

「スティーブ・ジョブズの 『もしも今日が人生最後の日なら…』というスピーチに出会い、終わりを考えることで今の人生がよりよく輝くことを知りました。 また、両親も高齢になり、葬儀社やお墓探しなどの親の終活をしていく中で、自分自身の終活を少しずつ取り組むようになりました」(40代男性)

実際に終活でどんなことをしているか

「エンディングノートを書くようにしました。市販にあるものを買って、定期的に書き換えができるようにしています。夫や子供たちにもそのことを伝え、命や死についての会話が増えたように思います」(40代女性)

「今すぐ何か特別なことをしているわけではありません。ただ葬儀社に勤める知人や、弁護士の友人たちに、終活現場の実態を聞いて、今から何をしておけば良いのか情報収集するように努めてます」(40代男性)

「両親の終活と合わせて、自分自身の終活も行なっています。私は結婚もしておらず、兄弟もいないため、私を最後に家が途絶えることになります。今のうちから両親の事を任せられる永代供養してくれるお寺を探しています。やがては私もそこにお世話になると思います」(50代男性)

40代、50代から終活を初めて良かったと思うか

「良かったと思います。今すぐ必要に駆られているわけではないのでどういう面で役立ったかは言えませんが早いに越したことはないと思います」(40代男性)

「早くに終活に取り掛かるのは良いことだと思います。自分たちが将来どのようにありたいかを、両親や主人と話すきっかけになりましたし、そのためにいまからどのように生活していくべきかという課題も見えてきました」(40代女性)

「自分の終活が今すぐ必要というわけではありませんが、両親の終活をすることで、必然的に自分の老後についても考えざるを得ません。そういう意味ではこのタイミングではじめて遅くはないと思います」(50代男性)

終活をしているさまざまな人の声を聞くと、それぞれに事情や背景があることが分かります。そして、ほとんどの人が「早いタイミングで終活に取り組みに越したことはない」と口を揃えるのは、大変興味深い点です。

なお、ここで掲載している内容は、筆者が日々の業務の中で耳にする様々な人の声をまとめたものです。

始めるタイミングが早すぎることによるデメリットはない

意味を考える人

ここまで読んでいただいたことで、終活を始めるタイミングは早すぎるに越したことはないことがおわかりいただけたと思います。始める年代は人それぞれですが、60歳を超えて取り組む人が多いのが実情です。しかし、終活の本質を考えた時に、最も本腰を入れて考えるべきなのは、30代や、40代の人たちではないかと筆者は考えます。この章では、老後や死からはまだまだ程遠いと思われる30代や40代の人たちにとって、どうして終活が有用なのか、その理由についてご紹介してまいります。

親の終活を支えながら自分も終活できることの利点

まだまだ働き盛りの30代や40代の人たち。自分自身の死について考えるにはまだまだ早いですよね?
しかしこの年代になると、親の介護や医療について取り組み始めなければなりません。自分自身の体力や気力は充実していても、年を重ねていく親のことを考えなければなりません。つまり、親の終活に一緒に取り組みながら、自分自身の将来も一緒に考えることができるのです。そこには次のような利点があると考えられます。

  • 親と一緒に終活と取り組むことが、将来的な「いい介護」「いい看取り」につながる
  • 体も心も元気なうちから行うことで、さまざまなセミナーなどに訪問でき、知見が広がる
  • 自分が将来どうなりたいかが明確になり、これからの人生を見つめ直すきっかけになる
  • 家族との対話が増え、つながりが強くなる
  • 専門家とのつながりが増えることで、さまざまな不安が軽減される
  • 死生観が養われ、目の前のことばかりにとらわれなくなる

本格的な終活に取り組まないにしても、前向きに終活を意識しながら若いうちから生活をするだけで、これからさらに年を重ねていく親をしっかりと支えることができますし、自分自身に万が一のことがあった時にも、家族に迷惑をかけることがなくなるでしょう。終活は、自分のためにも、そして家族のためにも、有用なのです。

終活の落とし穴 終活は自分ひとりでは完成させられない

昨今ブームの終活には、一つ大きな落とし穴があると筆者は考えます。それは、ほとんどの人が「自分の終わり」についてしか考えていないことです。

「自分自身の最期をどのように迎えようか」
「子供たちに迷惑がかからないように、自分自身で老後や死後を考えたい」

こうした理由から終活を行う人が実に多いのです。もちろんこうした取り組みはまったく間違っていませんし、悪いことではないのですが、現実的なことを言うならばこれは「片手落ち」なのです。

なぜなら、私たちは病気になった自分のことを治療できませんし、足腰が立たなくなった自分のことを介護できませんし、亡くなってしまった自分の葬儀を執り行うこともできません。

片手落ちにならないためには、自分の希望を、自分の代わりに実行してくれる人とともに終活するのが望ましいのです。

親子で行う終活がもっとも理想的

理想的な終活は、親子で行うものです。病気の人と看護する人。亡くなる人と看取る人。 こうした関係性の中でしか私たちは理想の最期を迎えることはできません。若い人たちがともに親の終活に取り組んでくれることが親たちにとっての何よりの喜びでしょう。さらには若いうちに介護や医療や葬儀の知識を得ておくことは、自分自身が高齢者になった時に大きな支えになるはずです。

昨今の終活ブームは、子どもの世代に頼れない60代や70代の人たちが、積極的に自分たちの最期をプロデュースしようとしているところから始まっています。子のいない世帯や単身者の人たちが終活を行うのはもちろん理解できますし、大切なことです。しかし、もしも子どもがいるにもかかわらず「迷惑をかけないために」と考えているのであれば、まずは可能な限り親子で話し合ってみてはいかがでしょうか?

親は子に自分の最期をこのように考えているんだと話してみること。子は親にどのような老後や葬儀を考えているのと聞いてみること。こうした対話を繰り返すことが、最も理想的な終活なのです。

だからこそ、30代や、40代の若い人たちは、仕事や子育てで忙しい毎日を過ごしていると思いますが、その中でも親の終活について考えてみてほしいです。そのことが、ひいては、自分自身の、そしてまだまだ幼いわが子たちの命について考えるきっかけにもなるのです。

そもそも終活をする理由とは?

そもそもなぜ多くの人が終活を行おうとしているのでしょうか。そこには、「自分自身のため」と「残された家族のため」という2つの理由が考えられます。

  • 自分自身のため
    終活をすることで、自分自身の将来の目標や課題が明確化しますし、不安が軽減されます。たとえば、お墓を生前契約すると、自分の終の住処を得たことで安心感を得られるというのはよく聞く話です。「自分が亡くなったらどうすればいいんだろう」というような不安が少しでもなくなると、その分、いまをよりよく生きることができます。

  • 残された家族のため
    終活をすることで、万が一の時に周囲の家族が困らないよう事前に対策を打っておくことができます。子どもや家族に早めに希望を伝えておくことで、いざという時にどのように動けばいいかが明確なので安心できます。また、身寄りのいない人であっても、早いうちから葬儀の生前契約や死後事務委任契約を交わしておくことで、誰に何をしてもらえばいいのかがはっきりするので、自分自身も、託された人も、慌てることがありません。

「じゃあ自分もさっそく終活しよう!」このように思っていただけれると嬉しい限りですが、ではまずはじめに何から手をつければ良いのでしょうか。次章でくわしく解説いたします。

終活でまず始めるべき2つのこと

ポイントを示す女性

終活でははじめに「エンディングノートを書く」「財産の整理をする」この2点から始めるとよいでしょう。終活はすべきことがたくさんありますので、まずは自分自身の想いや希望、さらには財産など、現状について把握することから始めましょう。

終活で何から始めて良いか分からない方は、より詳しく記載されたこちらの記事もご覧ください。

エンディングノートを書く

終活の基本はエンディングノートです。まずはエンディングノートを開いてみて、自分たちがこれからなにを考えていかなければならないかを把握しましょう。エンディングノートには、終活で考えなければならないさまざまなことをメモ書きできます。遺言ほど堅苦しいものではないため、気軽に取りかかれるのも利点です。

特に大事な項目は、医療、葬儀、お墓、財産についてです。そのほかにも、自分自身のこと、家族や親族のこと、友人知人のこと、デジタル遺品のことなど、考えるべきことはたくさんありますが、すべてと向き合ってノートを完成させようとはせず、まずは自分たちにとって考えなければならないところから向き合ってみましょう。

財産の整理をする

終活でもうひとつ重要なのは財産の整理です。というのも、遺産相続は手続きがとても大変なだけでなく、争いごとになることもしばしばだからです。財産の全容が分からないことには遺産分割協議もできないため、財産の整理は大変意味があることなのです。まずは財産目録を作成し、自分がどれだけの資産を持っているのかを明確にしておくだけで、残された家族の負担はかなり軽減されます。

財産目録の作成はそんなに難しいものではなく、財産の種類と、それぞれのくわしい情報を、エクセルなどで簡単な表として記録しておくだけで十分です。預貯金、不動産、金融資産だけでなく、自動車やバイク、骨董品や美術品、高級時計や着物なども財産の対象になります。また、借入金やローンについてもまとめておきましょう。

コロナ禍社会での終活とは

コロナウイルスが社会に大きな影響を与え、私たちは人と人とが直に出会うことに対してこれまでにはない注意を払わななければならなくなりました。「終活」と聞くと、どこかのセミナーや見学会への参加をイメージする人も多くいますが、こうしたイベントの開催は難しくなっているのが実情です。

しかし、家の中にいても終活は可能です。エンディングノートを購入し、ひとつひとつの項目について考えを巡らせながら、インターネットでいろんな情報収集をしていきましょう。

もちろん、葬儀会館、墓地、お寺の見学など、現地に行かなければわからないこともありますが、情報収集の段階であれば家にいてもできます。財産や相続についても、いまでは弁護士や司法書士など士業の人たちがどんどんオンライン相談を導入しています。

こうした新時代の仕組みをうまく活用することで、家にいながら情報収集し、考え、必要な時だけ現地に出向くようしましょう。

もっとも大切なのは、「対話」

そして、なによりも大切なのは、「対話」です。前の章でも述べましたが、介護する人される人、葬儀を出す人出される人の中で対話することがもっとも大切なことです。なぜ親子の終活が理想なのかというと、そこに対話が生まれるからです。

いろんな本を購入し、ネットで情報収集し、イベントやセミナーに参加してみる。もちろんこうした行動も大切ですが、まずは自分の面倒見てくれる人、供養をしてくれるであろう人に、自分自身の将来について話してみることから始めしょう。これなら電話でも、メールでも、どんな形であろうとも可能です。

終活ですべきことについて詳しくは「終活」の記事をご覧ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。終活はいつ始めても構いません。あなたが思い立った時がベストのタイミングですし、早くに始めるに越したことはありません。この記事が、あなたのよき終活の出発点になれば幸いです。

では最後に、この記事のポイントをまとめます。

  • 終活は60代~70代で始める人が多い
    終活を始める年齢は60代〜70代がもっとも多いのが実情です。「定年を迎えて時間に余裕ができた」「高齢になり老いや病気について向き合わなければならない」「残された人生をどのように過ごすか考えたいなど」の理由が挙げられます。

  • 終活を始めるタイミングベスト3
    • ①自分が思い立った時
    • ②定年を迎えた時
    • ③環境や体調に変化が起きた時

  • 終活に「早すぎる」ということはない。
    終活に「早すぎる」ということはありません。早い人では30代や40代から始める人もいます。自分自身のため、そして、親は子のために、子は親のために、いますぐに終活を始めるのが良いでしょう。
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監修者コメント


監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

終活というと「何かをしなくてはいけない」と思いがちですが、「家の中で怪我をしないように片付ける」「不用品を捨てる」といった日常の延長も終活です。健康的に過ごすために、日々身体を動かすように心掛けるという姿勢も終活といえるでしょう。コロナ禍では、家の中で過ごす時間が増え、「日常を快適に過ごす」ことを目的に掃除や片付けをする人が多かったようです。不用品の処分をする依頼も増え、メルカリやオークションなどの利用者も多かったようです。葬儀やお墓のことを考えたり、相続の準備をすることが終活と捉えられがちですが、健康的に生き生きと暮らすという視点で終活を考えてみてはいかがでしょうか。