「手元供養とは何か?

『手元供養』とは、遺骨を一般的なお墓や納骨堂に納めずに自宅で管理し、故人をしのび供養をすることです。『自宅供養』と呼ばれることもあります。

手元供養と言っても、遺骨や位牌をすべて自宅保管する人もいれば、お墓や納骨堂に納骨したうえで、一部だけを手元に保管する人もいて、その方法はさまざまです。持ち帰った遺骨や遺灰はデザインされた納骨容器に納めて家の中で保管できますが、一方でお骨をペンダントやプレート、ダイヤモンドなどに加工して携帯する人も少なくありません。

手元供養を選択する理由も人によって実に多様です。お墓が遠方にあり、定期的なお墓参りが難しいために遺骨や遺灰を手元に置いている人もいれば、経済的な理由などでお墓を建てられない人。また、無宗教でお墓や戒名は不要と考える人や、自宅に仏壇を置ける場所がないが故人をしのぶことができる場所が欲しいと考える人など、それぞれ身近で手軽な手元供養を選択することがあります。

どのような理由であっても、空に帰った大切な人をより身近に感じられる手元供養は、故人を想う人間の心から生まれた、新しい供養のかたちと言えるでしょう。従来の形式にとらわれることのない、自分たちのライフスタイルや気持ちに沿った供養として現在注目を集めています。

ライフエンディングジャーナル第26弾の今回は、手元供養を広める活動をする『NPO手元供養協会』をご紹介します。手元供養の発展は、NPO手元供養協会の存在を無くして語れません。

取材・文/Life.編集部 橋本 寛奈

NPO手元供養協会とは

NPO手元供養協会は手元供養という新しい葬法の普及や社会的認知、発展を願う賛同者が中心となって平成17615日に設立した組織です。

本部と関西支部は京都府京都市に位置していて、他にも東京都には関東支部、また岩手県遠野市には東北支部が置かれています。本部と各支部を拠点に、さまざまな仏具店や石材店、葬儀会社の支援を行なっています。

設立目的

NPO 手元供養協会は、手元供養を日本の新しい供養文化として広めつつ、社会的認知の啓蒙活動を健全に行うことを目的としています。手元供養が樹木葬なども含む散骨やお墓などの一般的な葬法のひとつとして認知されることを目指し、宗教儀礼やしきたりにとらわれない手元供養の方法や商品の提案、そして手元供養の具体的な情報の提供を行っています。

NPO手元供養協会の活動内容

NPO 手元供養教会は、設立から今に至るまで「手元供養の普及と発展」を目的に、さまざまな啓蒙活動を行っています。そのなかで新しい供養の選択肢として、遺骨を収納するオブジェやミニ骨壷、また遺骨や位牌からメモリアルプレートやペンダントなどに加工する方法の提案も行いました。これまでで手元供養文化とともに新しい葬法の普及活動を行ってきたことで、現在は年間10万人を超える人が手元供養を行うようになっています。

NPO手元供養協会の会員について

NPO 手元供養協会では、協会主催のイベントにボランティアで参加や、葬儀方法関連の相談ができる協会一般会員を随時募集しています。

会員の募集概要

NPO 手元供養協会では、「手元供養文化並びに協会会則」を理解し、ボランティアで活動していただける一般会員を募集しています。お申込みは、随時受け付けています。

会員の種類 入会金・年会費(41日~翌331日)
一般会員 1,000円(入会年度の年会費を含む)
協会の趣旨に賛同する個人
法人会員 入会金50,000円・年会費20,000
協会の趣旨に賛同し、協会の啓蒙活動に協力していただける団体・法人。
会員特典 ・協会主催のイベントにボランティアで参加できます。(一般会員)
・葬送に関する相談が受けられます。(一般会員)
・各種イベントやセミナーへの参加資格があります。(法人会員)

近年は一般に浸透してきている手元供養ですが、一体どのような背景から広がりを見せているのでしょうか。今後の供養の在り方についても気になるところです。

そこで今回の取材では、 NPO 手元供養協会の会長・山崎様にインタビューをさせていただくことになりました。設立当初から現在に至るまで、強い信念を持ち続けて手元供養の普及に努めていらっしゃる山崎様のご経歴と、これからの供養のありかたについておうかがいしました。

インタビューに答えてくれた 代表・山崎譲二氏

手元供養協会代表の山崎さん手元供養品を京都で2002年より創り続けており、2005年に手元供養協会を設立。
この業界に入る前は、不動産ディベロッパー会社で勤務していた。

手元供養協会・会長の山崎様へインタビュー

編集部ロゴLife.編集部

山崎様は元々不動産業界出身とお伺いしていますが、どういったきっかけで葬送業界に入られたのでしょうか?


山崎さん
:直接的なきっかけとなったのは父親のガンの発覚で、一年の余命宣告を受けたことです。私は両親から大きな愛情を受けて育ったので、余命宣告を受けたときには大変なショックで、これからどうやって恩返しができるのかと考えました。それは父を亡くしてから一層強くなり、父への感謝をどのようにしたらいいのか、ずっと考えていました。

私は当時転勤で地方を転々としていたので、(愛媛県)松山市にある実家の墓参りにもそう行けません。そこで、いつでもそばに置けて感謝を伝えられる手元供養に興味を持ち、文化として世間に広めたいという思いから業界に飛び込む決意をしました。45歳の時でしたね。今でも私は、供養の本質は「故人をしのび、感謝する心の実践」であると考えています。

編集部ロゴLife.編集部

当時からすでに時代の先を読んでいたのですね。今、さまざまな考えで手元供養を選ぶ人が増えていますが、山崎様は手元供養の最良のポイントはどちらにあると思いますか?

山崎さんそれは遠方に住んでいる人が、いつでも供養できる点に尽きると思います。私にも4人の子どもがいますが、皆仕事があり、東京や横浜にバラバラに住んでいることもあって、一年のうちで家族が一同に会するのは夏休みと正月ぐらいのものです。これでは、なかなか墓参りもできませんよね。

現在、87%がサラリーマンの日本では、我が家と同じような状況にある人が非常に多いのではないかと考えています。そういった人も移動に時間やお金をかけることなく、いつでも供養できるところが手元供養最大のポイントといえるのではないでしょうか。

昨今は海洋散骨や樹木葬も流行していますが、すべて遺骨や遺灰を撒いてしまってから「やっぱり少しは手元に残しておけばよかった」と後悔する声もよく聞かれます。そのような人も手元供養であれば、遺骨や遺灰の一部を保管できるのでおすすめです。

編集部ロゴLife.編集部

遠方に住んでいる人にとって、手元供養は最適な供養かもしれませんね。しかし、これまで葬送業界に身を置いたことがなかった山崎様にとって、NPO手元供養協会の立ち上げや運営は苦労が多かったのではないでしょうか?

山崎さんはい、設立当時から周りの理解を得られずになかなか進歩が見られない、苦闘の日々でした。協会設立以前の2002年から私は手元供養を提唱し、手元供養品を作って販売し始めていましたが、当時は戦前・戦後に確立された昔ながらの葬儀事業の形が圧倒的な支配をしていました。この業界に携わるほとんどの人の思想はかなり保守的で、お寺とのつながりを強く意識していたように感じます。

住職の声がかなり大きかったので、手元供養商品を売り込んでもお付き合いなどの事情で「自店では取り扱えない」伝えられたことが何度かありました。手元供養商品は単価が低く、当時浸透していなかった手元供養の説明に時間を要することも、拒否の原因のひとつです。

葬儀会社、石材店、仏具店と葬儀業界全体がユーザーのニーズを把握しておらず、近代的なアプローチを考えている人がほとんどいなかったことは、異業種出身の私には理解不能でしたね。  

編集部ロゴLife.編集部

最近でこそ一般的になってきた手元供養も、わずか20年前はまったく浸透していなかったのですね。それがなぜ今手元供養を選択する人が増えているのでしょうか?


山崎さん
それには大きく分けて3つの背景があると私は感じています。ひとつはマーケットの変化。家意識が薄れて檀家制度が崩壊したことでお墓のニーズが減少し、売れなくなってきています。今は少子化や核家族化が進んでいるので、供養に対する考え方も個人化してきているように感じますね。

ふたつ目は人生100年時代と呼ばれる、日本人の長寿化にあります。現在、80歳以降に亡くなる人が68%以上に達しているようです。以前は定年後10~15年程度が寿命とされていましたが、今それが長寿化していることから、亡くなる時にお金がほとんどないという方も少なくありません。そのような高齢者が葬儀に大きなお金をかけられず、子どもにも負担をかけたくないという想いから、脱お墓や小さなお葬式、直葬など葬送儀礼の小規模化を選択するようになってきています。 

最後は個性が認められる社会への変化が挙げられます。マスコミが肯定的な報道をしたことで、現在は散骨や樹木葬、永代供養など、多様な葬法や供養が肯定的に受け取られるようになったことが大きいですね。これまでは世間体を気にしていた方も、選択肢がたくさんあることを知ってお墓に縛られなくなっているのではないでしょうか。

編集部ロゴLife.編集部

さまざまな時代背景が重なって、手元供養文化が発展してきたということですね。今後はさらに多様な葬送方法が認められていきそうですが、山崎様はどのように変化していくとお考えですか?


山崎さん
供養はそれぞれの心の問題として捉えられ、より自由で多様なかたちになるのではないかと考えています。実は葬儀の方法についての法律ってほとんどなく、死亡診断書の必要性と24時間以内の埋葬・火葬の禁止ぐらいのものです。それであれば、葬儀や供養にももっとさまざまなかたちがあっても良いのではないのでしょうか。

そのためにも、葬儀業界はさらなる努力をして、檀家に代わる新しいかたちを作っていかなければなりません。よく布教をして信者を獲得しようという住職がいますが、まずはお悩み相談を受けることから始めてみても良いのではないでしょうか。そうした取り組みで、信者になってもらうためのハードルは下がっていくはずです。信者の心に寄り添えない僧侶は、お墓のさらなる衰退を招きます。寺院に限らずユーザーサイドのニーズをより強く理解できる業界づくりが今後は必要です。

編集部ロゴLife.編集部

業界の取り組み次第で、これからもどんどん供養のかたちは多様化していきそうですね。NPO手元供養協会としては、どのような取り組みをしていきたいと考えていますか?


山崎さん
今、推定10万人の人が手元供養をするようになったと言われています。ここまで手元供養協会が普及したことで、私たちは一旦役割を終えたと考えています。今後は、自立的に手元供養を選択する人を増やしていくことが、我々の任務と考えています。前述の通り、埋葬や供養方法についての法律はほとんど存在しません。「お金をかけることだけが正しい供養ではありませんし、しきたりや世間体に縛られる必要はないのですよ」と伝えることでみなさんの心配の種を少しでも軽くしてあげられるよう、引き続き啓蒙活動を行っていきたいと考えています。お墓のことで悩まれている方がいましたら、お気軽に協会支部にメールをください。 

編集部ロゴLife.編集部

目まぐるしく時代が変わっていくなかで、供養の変化に注目したいですね。本日は、お話をお聞かせいただきどうもありがとうございます!

NPO手元供養協会の概要

法人名 NPO手元供養協会
設立年月日 平成26年6月15日
協会 会長 山崎 譲二(㈲博國屋 代表取締役)
協会本部所在地 京都市中京区寺町通夷川上ル久遠院前町669 サンアートビル4F 博國屋内
公式サイトTOP https://www.temoto-kuyo.org/
お問合せ info@temoto-kuyo.org

編集後記

取材をしていると、大切な亡き人を手元に置いて毎日手を合わせることで、心が落ち着くという話をよく聞きます。最近需要が増えている散骨も、全てのお骨を撒いてしまうと手を合わせる対象がなく寂しい思いをしてしまうこともあるでしょう。そういったときに、手元供養品で大切な人を身近に置いておくことがロスを防ぐ方法として良いのではと思います。まだまだ業界のなかで越えていくべき壁があると山崎様がおっしゃっていましたが、協会のご活躍をライフドットして注目させていただきます。

ライフエンディングジャーナルは、「Life.(ライフドット)」が企画・発信する特別インタビュー企画です。ライフエンディング業界のイマを取り上げ直接取材し、業界全体をライフドットからも盛り上げて行きます。業界に関わるサービスや商品、そして第一線で活躍する人々にフォーカスし、ライフエンディング業界に対する想いやこれからの展望をお届けいたします。