樹木葬における「シンボルツリー」の意味~亡き人を自然のなかで弔うための目印
「死」「葬儀(葬式)」「最後の居場所」に対する価値観が昔と変わってきたこと、また多様化していったことにより、現在は「死んだら盛大な葬儀をやって、先祖代々のお墓に入るのだ」というのとは別の考え方をする人も増えています。
そのなかで近年注目を浴びているのが、「樹木葬」です。
ここでは樹木葬の形態について軽く説明するとともに、この樹木葬において欠かすことのできない「シンボルツリー」について取り上げます。
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この記事の目次
樹木葬で目印に建てられる木をシンボルツリーと呼ぶ
シンボルツリーとは、ごく簡単に言うのであれば、
「樹木葬を選択したときに、墓碑などの代わりとして置かれることの多い木」
のことを指します。
なお、樹木葬でも「シンボルツリー」を据えるのではなく、「お花」による花壇型になっているものもあります)。
この「シンボルツリー」について詳しく解説していきます。
樹木葬とは自然に還る弔い方
樹木葬は、
「従来のような墓所を必要とせず自然中にご遺骨を埋めて、墓石の代わりにシンボルツリーを配置する」という弔い方法です。
この方法は
- 自然と一体化できること
- 一般的に、墓所を買うよりは安上がりであること
から近年注目を集めています。
樹木葬には、以下の種類があります。
樹木葬 種類
- 公園型(都市型とも)
- 里山型
「公園型」は、整備された公園のようなところにご遺骨を納める方法です。
一方「里山型」は、自然の野山のようなところにご遺骨を納める方法をいいます。
さらに樹木葬は、「合葬型」「個別型」に分かれます。
合葬型とは、「最初からほかの人と一緒にご遺骨を埋葬する方法」をいいます。
対して個別型は「個々人に分けて埋葬する方法」をさします。
この「合葬型」「個別型」は、シンボルツリーのあり方を決める意味でも非常に重要になってきます。
シンボルツリーが持つ意味とは
「シンボルツリー」は、樹木葬においてよく用いられる表現です。
このシンボルツリーが持つ意味を紹介します。
手を合わせる対象として
樹木葬の場合、一般的な墓所(墓石)とは異なり、「個々人の名前が識別できるもの」をおきません(※例外はあります)。
自然と一体化できるという意味では樹木葬は非常に魅力的な弔い方法ではありますが、このような特徴を持つため、「お墓参りに来た人が、どこに対して手を合わせたらよいかわからない」という状況も招いてしまいます。
弔いのかたちやお参りのかたちに明確な決まりはありませんが、「やはりそれでも、手を合わせることのできる対象(目印)がほしい」と考える人がいるのはごく自然なことです。
そのとき、「シンボルツリー」の存在は大きな意味を持ちます。
墓石(とその下で暮らす故人のご遺骨)に手を合わせるように、シンボルツリーに手を合わせることができるのです。
供養のかたちに「正解」はありませんが、「墓石と同じように、故人に対して語り掛け、故人に対して手を合わせられること」は、供養をする人にとって大きな救いとなるでしょう。
樹木葬は「自然葬」の一種に分類されるものであり、この「自然葬」のなかには「海洋葬」も含まれます。
海洋葬は故人のご遺骨を海に撒く方法であり、これもまた自然のなかに故人をお還しする方法だといえます。
しかし海洋葬の場合は樹木葬とは異なり、シンボルツリーに代わるものがありません。
このため、「自然に還すという考え方は同じだが、手を合わせる場所が欲しいから、シンボルツリーの下で眠ることができる樹木葬を選びたい」という人もいます。
なお、「原則として樹木葬は墓碑などを持たない」としましたが、墓碑を置くことのできる樹木葬もあります。
「名前をしっかり刻んでおきたい」と考える人の場合は、この「墓碑を置くことのできる樹木葬」を選ぶべきでしょう。
また、シンボルツリーの考え方は主に公園型の樹木葬施設においてよく見られるものです。
ただしここでは、今後は特筆しない限り、「墓碑を置かないでシンボルツリーを置く形式を取っている樹木葬施設」を前提として話を進めていきます。
故人とともに成長していく
シンボルツリーの大きな魅力の一つとして、「植えられた木々は育っていく」というものがあります。
当然の話ではありますが、シンボルツリーは自然に植えられている植物であり、太陽と水の恵みを受けてどんどん成長していきます。
人間が成長するようにシンボルツリーも成長していき、そして人間自身よりもずっと長生きします。
そのシンボルツリーの姿に、ありし日の故人を重ね移したり、故人が今も生きて自分たちを見守ってくれているような感覚を抱いたりする人も多いことでしょう。
墓石もまた、長く残り続けるものです。
先祖代々の名前が彫られた墓碑などは、自分のルーツをたどり、記録する意味でも非常に大切なものではあります。
ただ、墓石の持つ「冷たさ」に違和感を持つ人などにとっては、暖かみのあるシンボルツリーは心の慰めとなるでしょう。
樹木葬の、そしてシンボルツリーの性質として、「四季によって景色が移り変わる」というものがあります。
シンボルツリーの成長と四季の移り変わりを確かめ、故人の姿をそのなかに移しこむことができるのは、シンボルツリーの持つ大きな魅力のうちのひとつです。
故人や家族の心の慰めとして
樹木葬に限った話ではありませんが、「自然葬を」と考えるご遺族の多くは、「故人が愛した自然のなかで眠らせてあげたい」という気持ちを抱いています。
海を愛していた人ならば海洋葬に、山を愛していた人ならば樹木葬の里山型に、花を愛していた人ならば樹木葬の公園型に……と考える人が多いことでしょう。
シンボルツリーは、木や花を愛していた故人の心の慰めになるものです。
特に故人が愛した木・花を植えたり選んだりすることができれば、一層格別なものとなるでしょう。
そして「故人の心の慰めになっていること」「大切な人を、彼(彼女)が愛したものでこれから先もずっと包んであげられること」は、ご家族にとっての心の慰めにもなります。
シンボルツリーを取り上げるとき、
- 「墓碑の代わりになるもの」
- 「目印になるもの」
という性質が強調されます。
これももちろん間違いではありませんが、それと同時に、「遺された人の、そして旅立った人の心の癒しになる」という観点があることも覚えておくとよいでしょう。
2種類ある樹木葬の埋葬方法とシンボルツリーの関係
シンボルツリーは、大きく分けて2つの種類があります。
一部の例外はありますが、樹木葬において「シンボルツリーを用いた埋葬」といったときは、以下の2つのやり方のいずれかを指すことになります。
シンボルツリーの下に合同で埋葬する
1本の大きなシンボルツリーの下に、多くの人のご遺骨を埋葬する方法をいいます。
一般的に、「1つの木で個別に埋葬するかたち」よりも大きめの木(あるいは墓碑)が置かれることが多いようです(ただし木は自然のものであるため、そのうち育つので最終的にはこの限りではありません)。
この「1本のシンボルツリーの下に合同で埋葬する方法」は、さらに以下の2つに分類されます。
- 合葬型
- 集合型
合葬型
合葬型(ごうしがた)の場合は、1つの木の下に多くの人のご遺骨を一緒に埋葬するやり方です。
骨壺からご遺骨を出して一緒に埋葬する方法で、樹木葬に限らず一般的な墓所でもこのようなやり方がとられることもあります(いわゆる「合葬墓」と呼ばれるものです)。
この場合は個別に収容するよりも費用が安くなりますし、また永代供養や管理費などが安く設定されることもあります。
ただしこの方法の場合、「ご遺骨がほかの人と混じる」ということから、心理的な抵抗感を覚える人もいると思われます。
集合型
対して集合型の場合は、「シンボルツリーを中心としてほかの人と一緒に埋葬する」というかたちは変わりありませんが、区画自体はそれぞれ別個に設けられています。
そのため、合葬型よりも抵抗感は少なくてすむでしょう。
いずれの場合にせよ、「シンボルツリーの下に合同で埋葬する」という形式を選んだ場合、「すでに植えられているシンボルツリー」の下に入ることになるので、自分でシンボルツリーを選ぶということはできません。
またこの方法の場合、原則として、「お墓を建てたからご遺骨を取り出して、新しくお墓の下に入れ直す」ということはできません。
そのため、最初の施設選びとそこに植えられているシンボルツリーの種類をしっかり見極めることが重要になってきます。
1つの木で個別に埋葬する
樹木葬には、「個別型」と呼ばれる形式もあります。
これは従来の墓所と少し似たかたちをしています。
個別型の場合は、区画がはっきりと区切られています。
その区画のなかに入ることのできる人数は施設や区画によってよって異なりますが、家族で入ることができるものもあります。
正確に統計をとったわけではないため、あくまで私が得た情報だけでの判断ですが、1人用~4人用程度の区画に区切られていることが多いようです(10人ほどが入ることのできるところもあります)。
この個別型の場合、「その区画に応じてシンボルツリーを入れる」ということも可能です。
合葬型・集合型とは異なり、それぞれの区画に個別にシンボルツリーが入れられるわけです。
合葬型・集合型のときは「すでに植わっている木の下にご遺骨を収める」というかたちになりますが、個別型の場合はご家族・故人の希望をある程度シンボルツリー選びに反映することが可能な場合もあります。
また、墓碑などを置くことが可能な場合も多く、総じて合葬型・集合型よりも自由度が高くなる傾向にあります。
ちなみにこの方法の場合、ペットと一緒に眠ることが可能なケースが多いと思われます(ただし、「ペットだけを先に埋葬して、その後に人間が入る」というかたちは無理なことが多く、人間が入るときにすでに旅立っていたペットのお骨を一緒に入れるやり方一般的)。
また、個別の埋葬の場合は数は少ないものの、「樹木葬にした後でも遺骨を取り出してほかのところに改葬すること」が可能な施設もあります。
このようなことから、合葬・集合型は「すでに植わっているシンボルツリーの下で、みんなで賑やかに過ごしてもらう弔いのかたち」、個別型は「ある程度自由がきくシンボルツリーの下で、個人あるいは家族で眠りたい人のための弔いのかたち」といえるでしょう。
なお、実際には施設によってシンボルツリーの考え方もご遺骨の収め方にも多少の違いはあります。
そのため、ある程度「この施設にしたい」という絞り込みができた段階で、きちんと確認するべきです。
樹木葬のシンボルツリーに適した木の特徴
樹木葬におけるシンボルツリーは、「絶対にこれでなければならない」という決まりがあるわけではありません。
「ばら」なども、その華やかさとあでやかさから好んで取り入れる公園型の樹木葬施設もあります。
ただ、一般的には下記のような木がよく選ばれています。
シンボルツリーに選ばれる木の特徴
- 人々馴染みがある木
- 葉っぱの緑がきれいな木
- 転生を想起させる落葉樹
それぞれ見ていきましょう。
街路樹で使われるような人々に馴染みがある木
まず、「訪れる人にとって、なじみ深い木」がよく選ばれる傾向にあります。
桜の木などがこの代表例です。
柔らかい雰囲気を持つものが多いこと、慣れ親しんだ木々に包まれて眠れること、またお参りに来る人にとっても親しみやすいものが多いことから、好んで選ばれるものです。
霊園内を明るい雰囲気にする葉っぱの緑がきれいな木
樹木葬の場合、施設によって違いはあるものの、基本的には「明るい雰囲気のなかで亡き人を弔う」「気持ちのよい空間で、故人にもお墓参りに来た人にも過ごしてもらう」というコンセプトで設計されているところが多いようです。
そのため、従来の墓地にあるような「落ち着いた、静謐で、厳粛な雰囲気」よりも、「明るくて、健やかで、穏やかに過ごせる場所」を目的としたシンボルツリーが好まれる傾向にあります。また、花だけでなく、葉っぱの緑が美しい木が選ばれる傾向もあります。
人生の転生を想起させる落葉樹
一年中緑をたたえる「常緑樹」も美しいものですが、樹木葬のシンボルツリーとしては「落葉樹」もよく選ばれています。
これは、冬になると(より正確にいうのであれば「気温が下がると」)葉っぱが落ちて枯れてしまう木のことをいいます。
この「寒くなると葉っぱが落ちて寂しい景色になる」ということから、樹木葬施設の一部は落葉樹に対して否定的な見方をしています(このような考え方の樹木葬施設は、好んで常緑樹を使います)。
ただ落葉樹の場合、「寒くなったら葉っぱを落とし、春になったら芽吹き、夏になるとまた美しい緑色をたたえること」を繰り返していきます。
そのためこれが、「転生輪廻(輪廻転生とも)」を連想させると考える人・施設もあります。
常緑樹と落葉樹のどちらがよいかという話はしばしば話題に上りますが、そこに優劣はありません。
自分たちの死生観や供養のスタイルに合わせた方を選べばよいでしょう。
故人が愛した木(条件付き)
樹木葬を選ぶ人の多くは、「自然のなかで眠ること」に価値を見出します。
そのような人の場合、「特に好んだ木・花がある」という場合が多いことでしょう。
合葬型・集合型の場合は、すでにある木の下に埋葬されることになりますから、自分好みの木を選ぶことはできません。
しかし個別型の場合、故人が愛した木の下に眠ることが可能であるケースが比較的多いといえます(個別型であっても、「桜のみ」などのケースもあるので要確認)。
多くの場合、施設側が提示する木のラインナップのなかから自分の好きなものを選ぶことになるでしょう。
この「木のラインナップ」は施設によって異なりますが、一般的によく知られたシンボルツリーが提示されることが多いため、「好きな木が一本もない」となることはあまりないと思われます。
また、全国的に見ても数が少ないものの、「持ち込んだ花木を植えられる」としている樹木葬施設もあります。
「本人が家で育てていた花木を植えてシンボルツリーにしたい」と思うのであれば、このような施設を選ぶとよいでしょう。
「故人が愛した木をシンボルツリーとしたい」という場合は、個別型であることを前提です。
そのうえで、「施設が提示するラインナップから選べればよいのか(あるいは施設が提示するラインナップのなかに好みの木がある)、それとも自分で持ち込みたいのか」をしっかりと決めたうえで施設選びをしなければなりません。
樹木葬で使われる木の種類
ここからは、樹木葬で使われる具体的な木の種類について取り上げていきましょう。
国内最初の樹木葬はヤマツツジ
日本で初めて樹木葬を行ったのは、岩手県一関にある祥雲寺だといわれています。
この祥雲寺が行った樹木葬は、現在でいう「里山型」に分類されるものでした。
その里山型のシンボルツリーとして採用されたのが、「ヤマツツジ」だったとされています。
ヤマツツジは、ツツジ科に分類される半落葉樹の低木であり、赤~ピンク色の花を咲かせます。
可愛らしい花を付けることもあってでしょうか、現在でも多くの樹木葬施設でこのヤマツツジをシンボルツリーとして採用しています。
人気があるのは日本人の心に寄り添う桜の木
非常に人気のあるシンボルツリーとして、「桜」もあります。
桜をシンボルツリーに据えた樹木葬は特に、「桜葬(※NPO法人エンディングセンター登録商標)」という単語で紹介されることもあります。
「桜」は、日本人にとって非常に特別な意味を持つ木です。
古典文学などにおける「花」は多くの場合この「桜」を指し(時代によってはこの限りではありません)、歌などのモチーフにもよく使われてきました。
桜の花の見事さは、お花見の文化に象徴されるものであり非常に素晴らしいものです。
また、兼好法師の徒然草に「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」とあるように、満開のときだけではなく、散った姿も美しいと讃えられています。
散り際の潔さも相まって、桜は日本人の死生観を象徴する木としてもよく取り上げられているものです。
このような「桜」は、観賞用としても死生観を映し出すものとしても非常に人気の高いものです。
合葬型・集合型・個別型、いずれの埋葬方法でも積極的に用いられるシンボルツリーだといえます。
街路樹や庭木でも使用される木が選ばれている
桜やヤマツツジは日本の樹木葬において非常によく採用されているものではありますが、それ以外にもカエデやオリーブ、ハナミヅキなどの木もよくシンボルツリーとして選ばれています。
これらはいずれも、街路樹や庭木として用いられることが多いものであり、私たちにとってなじみ深いものでもあります。
色鮮やかな緑を誇ったり、常緑樹であったり、可愛らしい花をつけたりといった特徴があるため、人生の終の住処を彩るのにふさわしい木だと考えられているのでしょう。
自分の好きな木を選ぶことのできる霊園は少ない
「最期のときを過ごす場所だから、注文住宅を建てるようにシンボルツリーも自分の好きなものを選びたい」と考える人は多いものです。
しかしこれはかなり難しいものでもあります。
その理由と現状について見ていきます。
木々の持ち込みについて
一般の樹木葬施設を利用する場合、「自分たちで機微を持ち込んで、それを植えること」はかなり難しいといえます。
一部の樹木葬施設では「持ち込んだ木をシンボルツリーにしてもよい」としていますが、非常に少数派です。
ある程度選択肢を与えられる樹木葬施設であっても、「樹木葬施設が提示する木のなかから、好みのシンボルツリーを選んでくれ」という形態をとることが多いといえます。
なお、合葬型・集合型では、シンボルツリーを自分で選ぶことはできません。
施設を決める際に、「桜をシンボルツリーにしているところにしよう」「カエデが好きだからカエデのところにしよう」とすることくらいしかできません。
好きな木を選ぶことができない、その理由
「自分の持ち込んだ木」を使えないことには、きちんとした理由があります。
まず、樹木葬施設の場合、「全体の調和」を大切にするところが多く見られます。
樹木葬施設の運用ポリシーは施設によって異なりますし木々は育っていくものですが、全体で見て美しく違和感のないものにすることを前提としています。
特に公園型の場合はその傾向が強いと思われます。それぞれがばらばらの木を植えることは、景観を保つという観点から見た場合マイナス点が多いのです。
もう一つは、管理の問題です。
樹木葬施設の場合、家族が毎日足を運んで木々の手入れをする……というかたちでの管理形態は基本的にはとりません。
施設側が樹木を管理し、手入れをし、養生をしていきます。
そのなかで、扱いの極めて難しい繊細な木があった場合、管理が非常に難しくなります。
また持ち込まれた時点の木の調子などをしっかり把握する必要もあるため、難易度が高いのです。
このような理由からほとんどの樹木葬施設では、「樹木葬施設側が提示したシンボルツリーのなかから選んでください」としているのです。
また、施設側が提示するシンボルツリーであっても、条件によっては「今はこれを選べない」といわれる場合もあります。
木の種類にこだわりがある場合(特に持ち込みを希望する場合)は、金額や立地などを横に置き、まずは「自分たちの希望するシンボルツリーを入れられるかどうか」を基準にして施設選びをしていく必要があります。
樹木葬のシンボルツリーが枯れた場合は植え替えが行われる
シンボルツリーに選ばれる木は、施設側が丁寧にケアをしてくれます。
ただ、シンボルツリーも「植物」である以上、枯れる日が来ることもあるでしょう。
この場合は、植え替えを行ってくれる施設が多いかと思われます。
ただ、「木が枯れるのは自然の摂理であり、人の生命と同じである」という理念のもと、あえてそのままにしておく樹木葬施設もあります。
「枯れたシンボルツリーをそのままにしておかれるのは嫌だ」という場合は、施設を決定する前に「シンボルツリーが枯れたときにはどのような対処をしてくれるのか」と確認しておくとよいでしょう。
樹齢が霊園の年数と比例するとは限らない
シンボルツリーは「その霊園にずっといるもの」という印象が強いからか、シンボルツリーの樹齢=霊園の年数、と考える人もいるかもしれません。
しかし、シンボルツリーの樹齢と霊園が建てられてからの年数は必ず一致するわけではありません。
たとえば樹木葬を取り扱う施設のなかには、樹齢1000年を超えるオリーブをシンボルツリーとして据えているところもあります。
海外から旅をしてきたオリーブを植え、今後もずっと霊園を見守ってもらおう……という考え方からこれが採用されたといわれています。
木は植え替えが可能なものですから、このようにして「すでにある木」をシンボルツリーとして使うことが可能なのです。
木は、正しく育てれば人間よりもずっと長生きする可能性が高いものです。
私たちが生まれるずっと前に芽吹き、そして私たちが死んだ後もずっとそこに居続け樹齢を刻み続けるシンボルツリーは、それを愛する人にとって、特別なものとなるでしょう。
公園型・ガーデニング型の樹木葬で使用されている植物
ここまでは「シンボルツリー」の話をしてきましたが、前述したように樹木葬のときに用いられる植物は「木」だけではありません。
「お花」もまた、樹木葬施設を彩るものだといえます。
この「お花」を用いる霊園は、公園型の霊園が多いといえます。
「公園型」にはさまざまな種類があります。
シンボルツリーを中心に据えた広々とした霊園もありますが、ばら園のようになっていて一見しただけでは霊園だとはわからないような麗しい霊園もあります。
この2つを明確に分ける言葉は存在しません。
ただ、後者の方を特に「ガーデニング霊園」と呼び分ける場合もありますから、ここではそのような呼び方を使っていきましょう。
ガーデニング霊園の場合は、ヨーロッパの庭園のようなかたちでまとめられるケースが多くみられます。
アーチが配置されていたり、足元をレンガで舗装していたりするのです。施設によっては噴水を置いているところもあります。
このようなガーデニング霊園では、「ばらの花」がよく用いられます。
ばらの花はトゲがあること、また死者を弔うには華やかすぎるものであることから葬儀の場面ではあまり用いられませんが(故人が好きだった場合は取り入れることもあります)、ガーデニング霊園においては積極的に使われます。
ばらの持つ美しさや香り、鮮やかさが、故人やご家族の心の慰めになる……という意図があるのかもしれません。
また、ばらの咲き誇る霊園は見た目にも美しく、インパクトがあります。
「ばらで作られた霊園は、初夏の時期以外は寂しそう」と思う人もいるかもしれません。たしかにばらの花は初夏によく咲きます。
ただ、品種や育て方にもよりますが、秋にも「秋ばら」として花をつけます。
施設側に確認することをおすすめしますが、「1~2週間だけ華やかで、それ以外はまったくだめだ」というようなことにはなりにくいと思われます。
現在は葬儀でも「花祭壇(一般的な白檀の祭壇ではなく、花を主体として構成する祭壇)」が注目を浴びています。
「花が好きだった人だから、花祭壇で送った」というご家族にとっては、特にこの「ガーデニング霊園」は相性のよいものだといえるかもしれません。
この記事のまとめ
「シンボルツリー」は、樹木葬において非常に重要な意味を持つものです。
墓碑の代わりになり、故人とご家族を慰めるものになり、手を合わせる対象ともなるものです。
なお、シンボルツリーはほかのところから植え替えることもあるので、「シンボルツリーの樹齢=霊園が建てられてからの年齢」とまではいえません。
街路樹で使われるような馴染みのある木、緑が美しい常緑樹、人の生まれ変わりを予感させるような落葉樹がさまざまな霊園でシンボルツリーとして植えられています。
具体的な樹木名としては、ハナミヅキやヤマツツジ、カエデやオリーブなどが挙げられます。
また、日本人の死生観ともマッチしやすい「桜」は、「桜葬」などのような言葉がつけられるほど特別な木だといえます。
なお、ガーデニングタイプの霊園では、華やかな「ばら」が選ばれることもあります。
故人の愛した木をシンボルツリーにしたいと考える場合、霊園への確認が必要です。
「木の持ち込み」は、管理や景観の問題から好まれないことが多いからです。
「どうしても木を持ち込みたい」ということであれば、「持ち込みが可能な霊園」でソートをかけてからほかの条件をすり合わせた方がよいでしょう。
なお、「霊園側が提示するシンボルツリーの候補のなかから好きなものを選べる」というシステムをとっているところはかなり多いといえます(ただし、いずれにせよ、シンボルツリーを自分で選べるのは個別型の場合のみと考えてください)。
原則として、シンボルツリーが枯れた場合は霊園側で植え替えをしてくれます。
ただ、「自然に任せることをよしとする」という霊園では植え替え作業が行われないこともあります。
このため、植え替えが必須なのであれば事前に「枯れたときはどうするのか」を聞いておく必要があるでしょう。
自然のなかで眠ることを望み樹木葬という弔いのかたちを選ぶとき、シンボルツリーはとても重要な要素となります。
故人の好みとご家族の思いを反映したシンボルツリーを選びましょう。
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監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
樹木葬は自然葬の一部としてカテゴリ分けする場合もありますが、墓地として許可を得た場所に樹木葬区画を造成して埋蔵するので、海洋散骨とは異なり墓地になります。墓地である以上、管理規則等に従い、納骨方法も墓地の仕様に合わせた形で行います。例えば「粉骨にして納骨」「骨袋に納めて納骨」「骨壺に納めて納骨」といった決まり事があれば、その通りに行いましょう。
樹木葬といっても、樹木とは名ばかりで、小型の墓石が並んでいるだけの樹木葬墓地もあります。骨壺に納めて納骨し、一定期間が過ぎると取り出して別の場所に移すタイプの樹木葬墓地もあります。