「年金だけでは老後資金が2,000万円不足する」というニュースが大々的に報道されました。このニュースが大きく話題になった要因として、老後資金に対し非常に多くの方が関心を持っているという背景があります。

「令和元年度 生活保障に関する調査(※1)」によると、実に84.4%の方が老後生活に不安を感じていると回答しています。この調査から、多くの方が老後生活に不安を感じていることがよくわかります。

しかし、2,000万円という数字の根拠をご存知の方は非常に少ないのではないでしょうか。

先の不透明な未来のことなので老後資金に対して不安を感じるのは当然です。とはいえ根拠を理解することなく不安な毎日を過ごすのは本末転倒となってしまいます。 

そこでこの記事では、老後資金として準備すべき費用についてわかりやすく解説していきます。資金が足りない場合の対処法もご説明していますので、当記事を読むだけで老後資金に関する不安は軽減できるかと思います。ぜひ参考になさってください。

参照1「公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」 

老後資金として最低限必要な金額は約758万円

お金 電卓

老後資金として必要最低限準備すべき金額は7,585,332円です。なぜこのような金額になるのか、根拠をご説明します。

<高齢夫婦無職世帯(65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)家計収支>

収入…206,678(可処分所得)
   237,659(額面収入)

支出…239,947

収支…206,678(収入)239,947(支出)単月33,269円の赤字

上記のケースでは、定年後1ヶ月あたり33,269円、1年間で33,269×12ヶ月=399,228円の赤字という家計収支になっています。
さらにこの赤字額を日本の平均寿命に掛けて計算してみましょう。
厚生労働省の調査(※2)によると、男性の平均寿命は81.41歳、女性の平均寿命は87.45歳となっており、両方の平均値を取れば84歳になります。

日本の老後生活は一般的に65歳からです。したがって老後生活が始まる65歳から平均寿命である84歳までの19年間、赤字額を自己資金で補うことになります。

<老後資金の計算>

年間赤字399,228円×19年=7,585,332円

この金額を見ると、「ニュースで報道された2,000万円に比べてなぜこんなに差額があるの?」と感じますよね。

理由としては2つ挙げられます。1つ目はニュースで報道された資料(※3)のもとになっている家計調査が2017年度のもので、数値が異なる点。2つ目は、報道と資料のギャップです。資料には「20 年で約 1,300 万円、30 年で約 2,000 万円の取崩しが必要」と記載されているだけで、全ての方に2,000万円が必要と書いてあるわけではありません。

ただし、この約758万円はあくまで「最低限度の金額」であり、豊かな老後生活を送るための家計ではありません。なぜならこの金額には、老人ホーム等の介護費用や住宅のリフォームなどに必要な費用、旅行費用等が含まれていないからです。

参照1総務省 2019年(令和元年)高齢無職世帯の家計収支より」
参照2厚生労働省 令和元年簡易生命表について」
参照3金融審議会「市場ワーキング・グループ」」

ここまで、最低限生活するために必要な老後資金について触れてきました。次は豊かな老後生活を送るための資金について解説していきます。

老後の生活で苦労しない資金の目安は1人当たり約3000万円

一般的に、豊かな老後を送るためには3,000万円程度必要とされるケースがほとんどです。

「令和元年度 生活保障に関する調査(※1)」では、豊かな老後を送るために必要な金額として、年金とは別に平均月14万円必要という回答結果が出ています。
この14万円の使い道は旅行や趣味、日常生活費の充実、身内との付き合いなど、豊かな老後を過ごすためには必要不可欠な「余裕資金」です。

14万円を1年間で168万円、それを定年から平均寿命の84歳まで19年間継続すると168万円×19年=3,192万円もの老後資金が必要になるわけです。
この計算であれば、余裕を持ちつつ豊かな老後を送ることができます。

ただし注意点として、全ての方が3,000万円必要になるわけではありません。例えば孫や子どもに対して住宅購入時の援助などが必要なのであれば、3,000万円で足りない場合もあるでしょう。
逆に夫婦世帯だけで住宅ローンも全て完済しており、特に娯楽も必要ないという方であれば、1,000万円で十分事足ります。

このように、老後資金の必要額は個々のライフスタイルによって大きく変わってくるのです。では具体的に老後生活はどのような収支になっているのか、内訳を見ていきましょう。

参照1公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」」

老後の平均収入は手取りで月20万円程度

年金

2019年の家計調査によると、老後の平均収入は約24万円で手取り(可処分所得)は約20万円です。この収入は主に公的年金である「国民年金」と「厚生年金」で構成されています。老後の収入について、わかりやすくご説明します。

公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2つから構成される

老後の主な収入源である公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。

<公的年金の種類>

  1. 国民年金
    日本国内に居住している20歳以上60歳未満の全ての方が加入している年金です。
    国民年金には3つの分類があり、会社に雇用されていない自営業者等は「第1号被保険者」、会社員などで厚生年金に加入している方は「第2号被保険者」、第2号被保険者に扶養されている配偶者の方は「第3号被保険者」となっています。
    ただし第2号被保険者と第3号被保険者は国民年金に直接保険料を納める必要はなく、代わりに厚生年金保険や共済組合が加入者に代わって国民年金に必要な負担を行います。第1号被保険者に扶養されている配偶者は第3号被保険者にはならず、第1号被保険者として保険料を納める必要があります。
    また
    65歳以上の受給権者(年金を受給する権利を持っている人)に扶養されている配偶者も第1号被保険者として保険料を納めなければなりません。

  2. 厚生年金
    常時従業員を雇用する会社に勤めている、70歳未満の被保険者が加入する年金です。
    就業規則や労働契約などに定められた一般社員の所定労働日数と労働時間が
    4分の3以上ある従業員が対象となります。
    株式会社などの法人に正社員として雇用されている場合には、原則厚生年金に加入することになっています。
    手続きは事業主(会社)が行い、保険料の納付は給与からの天引きで徴収されます。

厚生年金にも4つの分類があり、会社に雇用されている人は「第1号厚生年金被保険者」、国家公務員の加入者は「第2号厚生年金被保険者」、地方公務員の加入者は「第3号被保険者」、私立学校振興・共済事業団の加入者は「第4号厚生年金被保険者」となります。

②の厚生年金の対象者は、厚生年金と国民年金の両方に加入します。したがって受給できる年金も国民年金と厚生年金の合計額になります。

対して個人事業主の自営業者等は厚生年金に加入できません。したがって厚生年金は受給できず、国民年金のみの受給になるため、厚生年金対象者よりも少ない年金額になります。

国民年金の平均年金月額は55,000円・厚生年金は146,000円

年金を理解する上で特に気になるのが、やはり受給額ですよね。

令和2年度の国民年金支給額は満額納付者(20歳~60歳の40年間納付し続けた人)で年間781,692円となっており、平均年金受給月額は平成30年度末時点で56,000(※1)です。

厚生年金は国民年金と違い一律の給付額ではなく、報酬に比例して支給額も変動します。平成30年度末時点の第1号厚生年金被保険者の平均年金受給月額は146,000(※1)で、国民年金と比較すると90,000円多くなっています。

このように1口に年金と言っても一律の取り扱いではなく、人によって受給額も異なりますので注意が必要です。また年金は世帯単位ではなく1人単位で支給されます。したがって夫婦の場合は2人の年金の合計額が世帯収入となります。

参照1平成30年厚生年金保険・国民年金事業の概況」

公的年金の受給タイミングは65歳から

公的年金の受給タイミングは、原則65歳からです。
したがって65歳までは、預貯金や退職金でやりくりしなければなりません。

万が一早期退職等で収入面に不安がある場合は、年金受給を早める「繰上げ受給」も可能です。
しかし、早めに受け取った分の年金が65歳以降の受給分から減額されるため減額率は一生変わりません。
したがってよほどの事情がない限り、繰上げ受給は避けて65歳まで自己資金で補うことをおすすめします。

受給タイミングを66歳以降に遅らせる「繰下げ受給」も可能です。この場合、繰下げた期間に応じて最大42%年金額が増額されます。65歳時点で経済的な余裕がある方は、繰下げ受給も検討すると良いでしょう。

老後の収入についてある程度把握できたところで、次は老後の支出について解説していきます。

老後の平均支出は月24万円程度

お金 支出

2019年家計調査報告平均結果(※1)によると、高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)の平均支出は月約24万円となっています。主な支出は下記のとおりです。

高齢無職世帯の平均支出内訳
支出項目 金額 支出全体に占める割合
食費、生活費 66,465円 27.7%
その他の消費支出交際費含 54,708円 22.8%
交通費、通信費 28,314円 11.8%
娯楽費 24,714円 10.3%
光熱費、水道費 19,916円 8.3%
医療費 15,837円 6.6%
住居費 13,677円 5.7%
家具、家事用品 10,078円 4.2>%
被服費 5,999円 2.5%
教育費 239円 0.1%
合計 239,947円 100%

2 総務省統計局 2019年家計調査年報を参考

上記の支出には、老後生活において大きな支出に繋がりやすい「介護費用」は含まれていません。
ゆとりをもって老後生活を送りたい方は、支出例だけでなくご自身の場合にどのような費用が必要になるのか、事前にシミュレーションしておきましょう。

ただシミュレーションしておきましょうと言われても、老後生活にどんな支出を想定するべきなのか、わかりませんよね。
そこで老後生活で特に大きな支出に繋がりやすい費用をまとめました。いずれも老後生活において欠かせない費用なので、シミュレーションする際の参考になさってください。

参照1総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2019年 平均結果の概要」

参照2総務省統計局 2019年家計調査年報」

生活資金

支出の中でも特に大きな割合を占めるのが、食費や日用品などの生活資金です。多くの場合、生活資金は支出全体の約20-30%を占めることになります。年金による収入が20万円だったとしたら、毎月46万円が生活費としての支出でしょう。

このように生活資金は最も大きな割合を占める支出ですが、工夫次第である程度コントロールすることができます。現役のときの家計からある程度の金額を予想しておき、削れる費用をピックアップしておくとよりスムーズに節約することができますよ。

医療費

年齢を重ねる毎に高くなっていく費用として、医療費があります。支出割合の目安としては、全体の5-10%前後でしょう。ただし年を重ねるごとに入院に繋がるリスクが大きくなり、支出目安も高額になる可能性があります。

厚生労働省の調査(※1)によると、病院の入院推計患者数は下記のようになっています。

<病院の入院推計患者数>

【全体】

12,726,000

65-69歳】

1,272,000

70-74歳】

1,303,000

75-79歳】

1,611,000

80-84歳】

1,868,000

85-89歳】

1,745,000

90歳以上】

1,534,000

【全体数に占める65歳以上の割合】

73.3

上記のデータでは、病院の入院者数の約7割が65歳以上の患者です。つまり年を重ねれば重ねるほど入院を伴う病気にかかりやすく、医療費も高くなりやすいということです。

公益社団法人の調査(※2)によると、1入院あたりの平均費用は下記の金額になっています。

<1入院あたりの平均医療費の具体例>

がん…939,048円【3割負担額 281,714円】

(胃、結腸、直腸、気管支及び肺の悪性新生物の平均値)

急性心筋梗塞…1,775,492円【3割負担額 532,647円】

脳梗塞…1,597,077円【3割負担額 479,123円】

このように、医療費は老後生活において大きな負担になります。ただ日本には「高額医療費」という制度があり、自己負担限度額を超えた分の高額な医療費は、後から払い戻されます。

もちろん毎年入退院を繰り返すリスクも想定しておかなければなりません。このようなリスクを想定すると、老後生活に入る前にある程度の余裕資金を確保しておくのが望ましいでしょう。

参照※1厚生労働省 平成29年患者調査の概況」

参照※2公益社団法人 全日本病院協会 2019年医療費年代別資料」

介護費

老後生活で高額になりやすい費用として、介護費用があります。

親族に介護してもらう場合は必要のない費用ですが、外部の人に介護してもらう場合は必ず考慮しておかなければなりません。介護保険の自己負担割合は所得によって異なり、1-3割となっています。例えば65歳以上の単身世帯で所得が340万円以上ある方は、3割負担になります。

ただし日本には「高額介護サービス費(※1)」という制度があり、一定限度額以上の自己負担は免除されています。高額サービス費の自己負担限度額は世帯の所得によって変わり、ひと月あたり15,000円~44,400円が限度になります。この金額を超えた分は後日払い戻されます。

介護費用は非常に幅が広いので一般的な例を挙げるのは難しいですが、家計経済研究所資料(※2)によると、20166月時点の居宅介護サービス費用の全国平均は15,742/月となっています。したがって、老後生活においては月15,000円の介護費用が1つの目安額になりますね。

参照1厚生労働省「月々の負担の上限が変わります」」

参照2「公益社団法人 家計経済研究所資料」

娯楽費

老後生活において、やはり楽しみも重要ですよね。そこで確保すべき費用が娯楽費です。

娯楽費の目安は月2-3万円ですが、こちらの目安は人によって大きく異なります。海外旅行にたくさん行って老後を全力で楽しみたいなどであれば、頻度によっては月10万円以上娯楽費を確保する必要があるかもしれません。

娯楽費の目安額を考える際は、現在ご自身がされている趣味等の出費を参考にしてみるのも1つでしょう。娯楽費は人生の楽しみに直結する費用ですので、ある程度余裕を見ておくのがおすすめですね。

その他の出費

老後資金の中で軽視してしまいがちなのが、その他の出費です。特に老後は時間の余裕が生まれやすく、必然的に現役時代よりも身内の付き合いが増える傾向にあります。

そうなれば孫にプレゼントなど思わぬ出費が出てきます。また孫の結婚式を祝ってあげたくて、一部費用を援助することもあるでしょう。

このように、老後生活だからといって支出が著しく少なくなるわけではありません。総務省統計局の資料でも触れられているように、少なくとも月3-4万円の赤字を前提に老後資金を確保していく必要があるわけです。豊かな老後生活を送るための娯楽費も考慮すると、やはり余裕資金を確保しておくに越したことはありません。

老後の資金で抱える悩みを解消するための3つの手段

お金 カレンダー

老後生活の不安を解消するには、やはり資金の確保が重要なポイントになります。ここでは老後資金の悩みを解消するための、3つの手段をご紹介します。

<老後資金の悩みを解消するための3つの手段>

  • 確定拠出年金(企業型、個人型)
  • 国民年金基金
  • 財形貯蓄

それぞれ特徴が異なりますので、分けてご説明していきます。

確定拠出年金(DC

日本の年金は、家に例えると「2階建て」と表現されるのが一般的です。1階の部分に国民年金があって、その上に厚生年金が上積みされるイメージですね。

この2階建ての年金に加えて、3階の年金を作るのが「確定拠出年金(DC)」です。確定拠出年金には企業型と個人型の2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。企業型も個人型もご自身で資産を運用するという点は同じで、運用した資金を年金という形で受け取る仕組みになっています。運用は自己責任なので、運用した結果の収益がマイナスになった場合、拠出額(年金として積み立てた金額のこと)よりも受け取る年金が下回る可能性もありますので注意してください。

確定拠出年金のメリットは、やはり税制面での優遇が大きい点でしょう。企業型確定拠出年金の場合は掛け金が会社から拠出されますが、拠出された掛け金は非課税になります。つまり税金や社会保険料がかからないということです。

例として、個人型確定拠出年金で毎月5,000円ずつ積立すれば、年間60,000円の所得控除が得られ、税金が安くなります。それを20歳~60歳までの40年間継続した場合、たとえ運用益が出なかったとしても240万円分の年金を追加で確保できます。

ただし個人型確定拠出年金も企業型確定拠出年金も掛け金に限度があり、それを超えた金額を拠出することはできません。またどちらも途中解約は原則不可なので、無理のない金額で続けていくようにしましょう。

ここでは企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金の特徴も簡単にご説明しておきます。

企業型確定拠出年金

企業型確定拠出年金は、会社が掛け金を拠出してくれる制度です。会社が出してくれた掛け金をご自身で運用していく仕組みになっています。

企業型確定拠出年金は、制度を導入している企業でしか利用することができません。したがって会社に企業型確定拠出年金の制度が無ければ、個人型確定拠出年金を利用することになります。

企業型確定拠出年金の拠出限度額は、下記のとおりです。

<企業型確定拠出年金の拠出限度額>

  1. 企業の採用制度が、企業型確定拠出年金、退職一時金、中小企業退職金共済…月額55,000円まで
  2. 上記に加えて確定拠出企業年金や厚生年金基金を採用している…月額27,500円まで

先述したように企業型確定拠出年金の運用益は非課税で、会社が従業員に拠出した掛け金も社会保険料や税金がかかりません。受け取る時も退職所得控除や公的年金控除が適用されるので、非常に魅力的な制度になっています。 

勤務先が企業型確定拠出年金の制度を導入しているのであれば、ぜひ活用するようにしましょう。 

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金は、「iDeCo(イデコ)」という名称で認知されている私的年金です。ご自身で拠出した掛け金をご自身の判断で運用する仕組みになっています。

企業型確定拠出年金と同様、個人型確定拠出年金の運用益も非課税です。また拠出した金額も所得控除になるので、税負担を軽減することができますよ。受け取り時も退職所得控除または公的年金控除が適用されるので、非常に税制優遇が大きくなっています。

掛け金の限度額は下記のとおりです。

個人型確定拠出年金の限度額(月額)
国民年金の加入分類 具体的な例 掛け金の月間上限
第1号被保険者 個人事業主、フリーランス等 68,000円
第2号被保険者 勤務先が企業型確定拠出年金を導入していない会社員 23,000円
企業型確定拠出年金に加入している会社員 20,000円
確定給付企業年金(DB)の加入者または公務員 12,000円
第3号被保険者 専業主婦等 23,000円

上記のように、国民年金の加入分類や勤務先の状況によって掛け金の月間上限が変わってきます。勤務先に企業型確定拠出年金が導入されているのであればそちらを優先的に利用したほうが、ご自身の負担を軽減しながら老後資金を確保しやすくなります。

 掛け金の上限額までは全額所得控除なので、収入額に合わせて適切な金額を設定すれば、効率よく老後資金を貯めていくことができますよ。

 個人型確定拠出年金(iDeCo)は各金融機関が取り扱い窓口となっていますので、検討される方は現在利用している銀行や信用金庫に相談してみると良いでしょう。

国民年金基金

国民年金基金は、厚生年金に加入できない自営業者等が加入できる私的年金制度です。国民年金基金に加入すると、国民年金に加えて国民年金基金からも年金を受け取ることができます。

国民年金基金の上限額は月68,000円で、掛け金は全額所得控除になります。したがって節税しながら老後資金を確保することができます。

厚生年金に加入できない自営業者等の第1号被保険者は、どうしても年金の給付額で不利になってしまいがちです。そのような不利を回避するためにも、国民年金基金を積極的に活用するようにしましょう。

財形貯蓄

財形貯蓄とは、給料の天引きで積立していく貯蓄制度です。
給料から積立金が天引きされるので、計画的に貯蓄することができます。多く場合財形貯蓄は、定期預金のように通常の貯金よりも利率が高く設定されています。

老後向けの財形貯蓄は「年金財形」といい、積み立てた金額を60歳以降に年金として受け取れます。

ただし財形貯蓄は確定拠出年金や国民年金基金のように、掛け金が所得控除になるような取り扱いはありません。元本550万円までは利子等に非課税という税制優遇がありますが、5年以上の預け入れ期間や60歳以降の払い出しなどの条件を満たさなければ適用されませんので、注意してください。

また財形貯蓄は通常の貯金とは違い、すぐに引き出すことができません。引き出しまでに1週間程度かかる場合があるので、あくまで長期的な資産形成を目的として利用するのが良いでしょう。

ここまで老後の収支や費用、その不安を解消するための私的年金と財形貯蓄をご紹介してきました。ここからは老後資金を作る上で重要なポイントについてご説明していきますね。

老後の生活は大事|老後資金を作るうえで重要な2つのこと

ここまで触れてきたように、老後の生活を考える上で資金は重要なポイントです。日本の平均寿命で考えると、65歳から84歳まで19年間も生活を継続しなければならないわけです。

楽しく明るい老後生活を送るためには、やはり年金だけでは足りず、老後資金をしっかり確保しておく必要がありますよ。老後資金をしっかり作る上で重要なのは、

  • 老後の生活をイメージする
  • 老後の資金をシミュレーションしておく

2つです。

ここでは、それぞれのポイントについて解説していきます。
「楽しく明るい老後生活を目指したい」という方はぜひ実践してみてださいね。

 老後の生活をイメージする

老後資金を作る上で非常に大切なのが、「老後の生活をイメージする」という点です。

これを聞くと、「当たり前だ」と感じてしまうかもしれません。しかしながら、実は老後生活のことをイメージした上で現役を引退される方は非常に少ないのです。

「高齢者の金融リテラシー(※1)」レポートでは、退職金の金額を把握した時期について、なんと退職時期の1年以内と回答した人が全体の3分の2を占めています。つまりほとんどの方は老後生活において非常に重要なはずの退職金の具体的な金額を、退職直前にしか把握していないということです。

例えば今まで仕事に充てていた時間が長かった方は、その時間を何に使うのかを考えてみましょう。
その時間を娯楽に使うのであれば娯楽費が現役生活よりも膨らみますし、孫や子どもと頻繁に付き合うのであれば、交際費がかさむことになります。

このように、具体的に老後生活をイメージしてみるのです。それだけでも準備すべき費用を明確に把握できるようになりますよ。

参照1フィデリティ退職・投資教育研究所 20192月「高齢者の金融リテラシー」」

老後の資金をシミュレーションしておく

老後生活をイメージしたら、ご自身がどのようなものにお金を使いたいのか、ある程度把握できるはずです。それをより具体的にするために、老後資金をシミュレーションしてみましょう。

具体的にシミュレーションすればするほど、老後生活に入った後のギャップが少なくなりますよ。

では、シミュレーションして足りない分の老後資金はどのように準備すれば良いのでしょうか?今から実践できる方法について解説していきますね。

老後に安心した生活を送ろう!いまから老後の資金を準備する方法

実は、老後資金を作る方法はたくさんあります。もちろん難易度の低いものから、ある程度専門知識を持って行わなければならないものまで、あらゆる選択肢があるわけです。
大切なのはご自身に合った方法を見つけ、それを継続的に実践し続けること。なぜなら老後資金は金額も大きいため、一朝一夕で作れるわけではないからです。

ここでは老後資金を作る方法の中でも、

・今すぐに実践できる

・比較的難易度が低い

・老後資金作りにおいて効果が大きい

という3つの条件を満たす方法をご紹介していきます。

家計費用を見直す

最も簡単かつすぐに取り組める方法として、「家計の見直し」があります。

家計の見直しにおいて特にチェックしていただきたい支出を3つピックアップしました。

  • 生命保険
  • 通信費
  • レシートのない出費

生命保険に関しては、特に「住宅ローンの団体信用生命保険と重複箇所がないか」をチェックしてみましょう。
よくあるケースでは、生命保険で死亡保障をかけつつ、さらに住宅ローンで死亡の保障を掛けているケースです。
住宅ローンの団体信用生命保険は契約者の死亡時に残高をゼロにしてくれるもので、生命保険のように毎月の支払いは必要ありません。したがって重複で過剰な保障になっているのであれば、生命保険の見直しを行いましょう。

通信費に関しては、格安スマホや従量制のプランに変更することで、月5,000円~7,000円程度の節約が可能です。その節約で浮いたお金を20年間積み立て続ければ、120168万円の老後資金を作ることができますよ。

レシートのない出費も通信費などと同様にチェックして節約してみましょう。

このように、家計の節約は「痛みの伴わない出費から削減する」のが非常に重要なポイントです。ご自身で実践可能なものから試してみてくださいね。

定期預金を始める

老後資金を手堅く貯める方法として、定期預金があります。定期預金は通常の預金よりも利率が高く、利息の分だけ元本が増えていく仕組みになっています。

また定期預金はすぐに引き出すことができず、申請から口座着金まで一定の時間が必要です。このような特徴から「お金が手元にあるとすぐに使ってしまう」という方におすすめです。

ただし2020年現在の定期預金は、従来に比べて非常に利率が低くなっています。
したがって利息による元本増加はあまり期待できません。あくまでも「安全かつローリスクで資金を貯める方法」と認識しておきましょう。

確定拠出年金を始める(DC

記事内で触れた確定拠出年金を始めるのも、老後資金の形成には非常に有効です。
基本は投資による資産運用なのでリスクはありますが、運用益は非課税で、拠出した掛け金も所得控除や社会保険料の免除などで税制面の優遇があります。つまり通常の資産運用よりも資金が手元に残りやすくなっているのです。

確定拠出年金には企業型と個人型がありますが、企業型は勤務先が導入していなければ利用することができません。したがって、

  • 勤務先に確定拠出年金制度がある…企業型確定拠出年金を活用
  • 勤務先に確定拠出年金制度がない…個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用

というように判断するのが良いでしょう。

確定拠出年金がおすすめなのは、老後資金の形成に一定の期間を設けられる方です。確定拠出年金の資産運用で一定以上の成果を得るためには、長期の時間が必要です。
したがって老後資金の形成に10年以上かけられるような方には適していますが、5年以内である程度まとまった老後資金を作りたい方には適していません。

ご自身が確定拠出年金に適しているタイプかどうか、一度チェックしてみてくださいね。

NISAを始める

 投資による資産運用で老後資金を作る方法として、「NISA」も有効な選択肢です。
NISAとは、投資信託や株式などの売買益にかかる所得税を一定の運用額まで非課税にできる制度です。
つまり運用で得た収益に税金がかからないということです。もちろん投資による運用なので、損失が出るリスクもあります。特に株式取引未経験の方は要注意です。

 老後資金の形成に利用できるNISAは、2つの種類があります。

  • NISA
  • 積立NISA

通常のNISAは、毎年120万円の非課税投資枠が設定され、その金額を運用して得た収益が非課税になります。
非課税期間は最長5年間で、その間は毎年120万円の非課税投資枠が設定されます。したがって最大600万円の投資枠を使って収益を得られるということです。

もう1つの積立NISAは、少額積立による長期の資産形成を目的とする制度です。
毎年40万円の非課税投資枠が設定され、その運用で得た収益が最長20年間非課税になります。つまり合計で800万円の非課税投資枠を確保できて、非課税期間中に得た収益も税金がかからないということです。

積立NISAは比較的長期間の資産形成を目的としていますので、老後資金の確保には通常のNISAより適しています。

まとめると、通常のNISAは短期での老後資金形成を希望する方に適していて、積立NISAは長期間かけてコツコツ老後資金を貯めていきたい方に適しています。
どちらもメリットの大きい制度ですので、ご自身の目的に沿っているほうを活用するようにしましょう。

NISAの窓口は各証券会社や金融機関なので、検討される場合は利用している窓口に一度相談してみてください。

一人で悩んでも分からない場合は老後資金に詳しい人に相談

相談する人

老後資金に関する問題は専門知識が必要な部分も多く、また税制などの把握も必須になるため、1人で悩みを抱え込んでしまいがちです。
もし1人で解決できないのであれば、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみましょう。あなたの希望するライフプランに沿った提案をしてもらえるはずです。

場合によっては専門家の力を借りて現在の支出を見直すことで、100万円単位の老後資金を確保できることもあります。1人で抱え込まず、まずは相談してみるところから始めてみてください。

まとめ

老後資金はまとまった金額が必要になるため、一朝一夕で簡単に用意できるものではありません。だからこそ老後生活を具体的にイメージし、可能なかぎり早い段階でアクションを起こすことが重要です。

当記事で押さえておくべきポイントは下記の6つです。

 ・老後資金として最低限必要な金額は約758万円だが、余裕を持つには3,000万円程度必要になる

 ・老後は最低でも月3.3万円以上の赤字が想定される。赤字額はご自身で用意しなければならない

 ・老後は医療費と介護費が高額になる傾向があるので、万が一の場合の余裕資金を確保しておく

 ・公的年金は2階建て構造になっており、確定拠出年金などの私的年金は3階部分の保障を用意するもの

 ・老後の生活を具体的にイメージしつつ、シミュレーションしておくことが大事

 ・老後資金の形成には様々な手段がある。ご自身に合ったものを実践してみよう

いずれも老後生活を豊かに過ごすための欠かせないポイントです。ご自身の生活を見直しつつ、記事内で挙げた老後資金形成の方法を実践してみましょう。あなたの老後生活が素晴らしいものになるよう、当記事がキッカケになれば幸いです。