記事の執筆
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

大手葬祭業者、大手仏壇・墓石販売業者勤務を経て、葬送コンサルタントとして独立。
起業コンサルティングや人材育成、取材・執筆などを行っている。
近年は葬送関連事業と並行しながら社会福祉士として、また介護職として福祉・介護の現場でも活動。「生き方」「逝き方」両輪の橋渡しを模索中。

「朝はいつも40分ほど散歩するのが日課。その帰りに隣の喫茶店のモーニングを食べます。じっとしていることが苦手なので、日中もけっこう外出することが多いですね。」と語るのは、名古屋の某サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)に暮らすAさん。

Aさんはご主人が亡くなった後、郊外の戸建てに一人で住んでいましたが、車を使わなければ買物すらできない場所であったため、自宅を売却し、都市部への引っ越しを考えていました。そんなときに候補にあがったのがサ高住でした。

「一般的な賃貸マンションでも良かったんですが、年も年だし……、子供達も誰かの目があったほうが安心だということで、サ高住に決めました。」

サ高住とは

サ高住とは、アパートやマンションと同じ賃貸住宅の一種。入居条件は原則60歳以上であれば介護認定の有無は関係ありません(60歳未満の場合は要支援・要介護認定者)。

介護施設ではなく、あくまで高齢者単身者や夫婦世帯の居住を目的とした住宅のため、介護サービスを利用する場合は、外部の事業者(併設されている場合もある)を利用することになります。

サ高住で義務づけられているサービスは2つ。

  • 毎日の安否確認
  • 困ったときの生活相談

その点が他のアパートやマンション、シニア向け住宅とは異なるところ。ただ、その手段や運用方法については決まっておらず、各事業所にまかされています。

毎日スタッフが声掛けをして安否確認をするところもあれば、呼び出しボタンや内線電話で確認するところもあります。人感センサーなどで対応しているところもあります。

サ高住は、高齢者の孤立化を防ぐことを目的に2011年に国が制度化した新たな住まいのカタチです。

日々の安否確認や生活相談を通じて、ひとり暮らしや介護が必要になった方でも安心して地域で暮らし続けることができます。入居者の年齢は85歳以上が過半数で、全体の9割が75歳以上を占めます。

どのような人がサ高住に向いているか

サービス付き高齢者向け住宅の丸・バツ・はてな

自宅では不安、かといって有料老人ホームに入るほどの金額は出せない、という人にサ高住はおすすめです。また要介護になった場合、自分らしい暮らしを維持していきたいという人にもおすすめです。

介護施設の場合は安全・安心がベースにあるため、常時スタッフの見守りのもと、生活援助が行われます。ベッドや車椅子にセンサーが取り付けられ、入浴日が決められ、食事や間食、水分量まで細かくチェックされます。

「車椅子から立たないでください」

「危ないから一人でトイレに行かないでください」

「水分取ってくださいね」

といったスタッフの声が響き渡ります。

これにより身体的なリスクは軽減されるのですが、人によってはそれを煩わしいと感じる人もいるでしょう。

サ高住では基本的に鍵は自分で管理し、プライバシーが守られます。管理室のみのところもあれば、フィットネスジムやフルコース料理を楽しめるダイニングや厨房設備を備えているところもあります。

またサ高住の住宅部分と併設して、訪問介護事業所、デイサービス、居宅介護事業所などが併設されているところもあります。

サ高住で看取りまで生活し続けることは可能か

折り紙でできた毬と作る人たち

昨年、某介護施設で、居室から出てきて「ラーメン食べたい」といった96歳の男性にラーメンを提供した事業所の動画がツイッターで話題になりました。

病院から退院したばかりの方で、しかも十分なフォローができない時間帯、本人のADLに合っていない食形態、と二重三重のリスクが伴うこの対応には、是非を含めて論争が繰り広げられたものでした。

この事例の場合、安全・安心をベースとする介護施設であったこともあって、批判的な意見が目につきました。しかし一方で、「あくまで家族や関係者の合意があったうえのことになるが、自己決定の尊重ができることは理想的。」と肯定的な意見も多かったようです。

しかしこれがもしサ高住だったらどうでしょう。多少の批判はあると思いますが、あくまで住宅というカテゴリであるため、真冬の夜にアイスクリームを買いに行ったり、味の濃いラーメンを夜中に食べることも基本的には自由なのです。

サ高住を終の棲家として考える人は増えていますが、国土交通省調査によると「看取り可能」と公にうたっている施設は63.9%(2020年、第5回サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会資料)。

しかしそれ以外の看取りについて明確に表示されていないサ高住でも、「在宅死と同じ対応をするだけの話なので、家族と医師、ケアマネ、訪問系サービスを組み合わせて対応可」としているところも多いようです。

ただし認知症の場合は要注意。介護施設と異なり、見守りに充分対応できる人員体制になっていないことが多く、入居者同士のトラブル、徘徊による事故などが起こる危険性があるため、「重度認知症の場合は応相談」としているところもあります。

「最期は自宅で過ごしたいと思う人が多いのに、実際は割8以上の人が病院で亡くなっている。暮らしの延長線上でゆるやかな最期を迎えることができるよう、サ高住が終の棲家として担う役割は大きい」と某サ高住の管理者は語ります。

現在、サ高住の登録戸数は260,854戸、7,735棟(2020年11月末時点)。今後も増え続けることが予想され、高齢者の暮らしを支える要になると期待されています。