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葬儀においては、さまざまな「知らない言葉」が出てきます。また、「名称としては聞いたことがあるけれど、どんなものか分からない」という単語も多いことでしょう。
今回はそんななかから、「守り刀(まもりがたな)」について取り上げていきます。

この記事ではこのような疑問の解消!

  • 「守り刀っていったいどんなもの?」
  • 「どんな宗教で使うの?どんな意味があるの?」「守り刀はだれが用意するの?」
  • 「守り刀っていくらくらいかかるの?」
  • 「そもそも今でも必要なものなの? 見たことがないんだけど…」

こんな疑問に、一つひとつ答えていきます。守り刀がどのような意味を持つのか、守り刀がどのように変わっていったのか、守り刀を用いるときの注意点と様式などを、丁寧に解説していきます。

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  • お墓選びで注意するべきポイントを詳しく知りたい

など、数々の不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
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1.守り刀(まもりがたな)とは?

守り刀の結び方(袋がない例)

まず、「守り刀とは何か」について解説していきましょう。

葬儀において「守り刀」という単語が用いられるときは、基本的には「亡くなった方をお守りするために置かれる刀」として解釈されます。

神式や仏式においては、亡くなった方の心身を守るために、お体の上もしくは枕元に刀を置きました。仏式においても神式においても故人は北枕でお休みしていただくことになりますが、そのときに胸の上か枕元に置くわけです。

このとき、守り刀は足の方を刃先にして置くことになります。

1-1.守り刀の役割

守り刀を置く理由は、仏式神式では微妙に異なることもあります。しかし元々この2つの宗教は一体となって存在していたため(「神仏習合」)、守り刀の「置く理由」についても、共通している概念が存在します。それが、「故人を守るためのもの」という概念です。

もともと守り刀の風習は武家社会になじんでいたもので、故人の体を魔物から守るために使われていました。また、現在よりご遺体の保存が難しかった時代は、「猫からご遺体を守る(=猫は光物を嫌うから)」という理由もあったようです。

「故人を守るために置くものである」という点は共通していますが、それ以外の部分においては、仏式と神式では考え方が異なるわけです。それについて解説していきましょう。

1-1-1.仏式における守り刀の役割

仏教においては、「亡くなった方は、49日間をかけて死後の道をたどる」という考え方があります。この死出の旅と、そこで行われる裁きによって、人がどこにいくかが決められるわけです。これは「四十九日(までの)供養」というかたちで、現在を生きる人にも根付いています。

死出の旅は決して平穏なものではありません。その旅をつつがなく終えるために、守り刀が用いられていました。守り刀はその名前の通り、「お守り」としての性質をも持つものであったのです。仏式の葬儀においては旅立つときに旅装束として白装束を着せますが、守り刀もまた、その旅支度のうちのひとつだといえるでしょう。

守り刀は、生きている人が行う追善供養の一つとも言えるでしょう。追善供養により亡くなった人の行き先が良きものであるようにと願うわけです。昔は七日ごとに供養を行っていたのも、これが理由です(もっとも現在は、初七日法要と四十九日法要以外の法要は省略されるのが主流です)。

【浄土真宗と守り刀について】

さて、ここで出てくるのが、在来仏教のうちのひとつである「浄土真宗」です。
浄土真宗においては、「守り刀は必要としない」という考え方をとります。

浄土真宗は、非常に信者が多い宗派です。そしてこの宗派は、ほかの宗派とは少し異なる考え方をします。それが、「人は亡くなったらどうなるか」というものです。
在来仏教の多くは、「人は亡くなったら49日間をかけて旅をして、最終的に行き先が決まる」とします。このため、追善供養や守り刀、旅装束が必要になってくるわけです。

しかし浄土真宗においては、「信者が亡くなったらすぐに阿弥陀如来によって、極楽に旅立てる」と考えます。(なお、余談ではありますが、「南無阿弥陀仏と唱えさえすれば救われる」というこの考えが、農民をはじめとした多くの人に受け入れられるようになった理由とも言われています)。
このため、死後の旅をするための守り刀や追善供養は必要ないとされているのです。

ただ、この解釈に関しても、少し考え方は分かれます。
浄土真宗のご僧侶のなかには、「浄土真宗では死を穢れ(ケガレ)としてはとらえない、守り刀は俗習である」と明確に否定する人もいます。
その一方で、「絶対に置いてはいけない、というものではなく、置く必要がないと考えるから」とする説もあります。
また、「ご家族や地域性にもよる。原則として必要ないが、希望されれば置く場合もある」としている人もいます。

このあたりは専門家によっても多少考え方に違いがみられるところですから、「浄土真宗では基本的には守り刀は必要としない」という程度の認識でいるのがよいでしょう。

1-1-2.神式における守り刀の役割

神式と仏式には似通ったところもありますが、神式においては死を「穢れ」ととらえるのが基本となります。このため、この穢れから守るために、守り刀を置いていました。

また、守り刀には、「故人を守るためのもの」であるのと同時に、「故人の穢れから生きている人を守るためのものである」ともされていました。このような考え方も、神式の、「死は穢れである」という考え方からきているのかもしれません。

なお、キリスト教などのほかの宗教では、守り刀が用いられることは基本的にはありません。

コラム~守り刀のもう一つの意味~

さて、この「守り刀」ですが、現在この言葉は「葬儀のときに、故人を守るためのもの」という意味合いで使われるのが主流となりました。

しかしこれは、昔はお嫁入りのときなどに用いられていました。現在でもごく一部では、「嫁入り前などに守り刀をもたせ、それを形見として子どもに受け継いでいく」というやり方があるそうです。
このときには、短刀という形がとられることが多いといえます。長い刀は女性や子どもには扱いにくいからです。

日本刀は1000年以上の時をかけても、きちんと保管しておけば受け継ぐことができるといわれています。一般家庭においてはそれほど有名なしきたりではありませんが、皇室においては、ご出生の折に天皇陛下が守り刀を贈られるという行事があります。これは特に「賜剣の儀(しけんのぎ)」と呼ばれています。

現在でこそ、嫁入り道具や形見として受けついでいくかたちでの「守り刀」はあまり見られなくなりましたが、1つの単語が2つの意味を持つのはなんとも興味深いことではあります。ただし、「大切な人を守る」という意味では2つは同じものだといえるでしょう。

有名な守り刀とその意味について

守り刀には、非常に有名なものがあります。
たとえば、「判官びいき」の言葉の由来にもなった、源義経が使ったと言われている「今剣(いまのつるぎ)」や、時の天下人の手を渡り歩き、三大妖怪を退治したとされる「童子切安綱(どうじきりやすつな)」などです。今剣はその存在自体が確かではないとされていますが、後者は国宝に指定されています。
このような観点から守り刀を見ていくのも、一つの面白さだといえます。

1-2.守り刀に使われる刀 は具体的にどんなもの?

「守り刀」とは、故人を(解釈によっては生者を)守るために用いるものです。かつては実際の刀が使われており、「刃物」としての性質を強く持つものでした。鎌や鍬などの日用品であっても、そこにはきちんとした「刃」がありました。

しかし現在は、刃物としての性質が強い刀が使われるケースはほとんどありません。
現在使われている守り刀は模擬刀(模造刀)であることがほとんどです。これには大きく分けて2つの種類があります。

  1. 金属を使ったもの
    真鍮やアルミニウム、亜鉛などを材質にして造られており、メッキが施されています。模擬刀(模造刀)にも出来不出来、重さなどに違いがあり、場合によってはその重さが武器となることがあります。しかし葬儀に使われる守り刀には武器としての性質は求められません。あくまで、「昔の守り刀のいわれや姿を、現在の葬送儀礼に使うために写し取ったもの」であって、安全に取り扱えるものが使用されています(このため、本来は「模造刀」と「模擬刀」は分けて論じるべきですが、ここでは同じものとして取り扱っています)。

    この「金属を使った模擬刀(模造刀)」は非常に美しく、また存在感もあるため、故人を守るためのものとして利用したいと考える人もいるでしょう。しかし金属を使った刀に関しては、「棺と一緒に燃やしたい」と考えた場合は制限が出る可能性が極めて高いです。そのため、「葬儀が終わるまで故人を守ってくれるためのもの=火葬をするときには入れられない」と考えておいてください。

  2. 木製のもの
    木製のものは、刃の部分を含めて「木」で作られています。重厚感には欠けるものの、鍔(ツバ)がついており、柄(ツカ)と刃が分かれています。また、守り刀の場合はこの上から刀袋をかけることが多いため、木製であってもあまり問題はありません。

    木製の守り刀の場合、安価であるのもさることながら、「故人の棺とともに、一緒に火葬にすることができる」という利点を持ちます。このため、金属を使ったものとはまた異なるメリットがあります。

    「金属を使ったものが良いか、それとも木製のものが良いか」は、結論付けられるものではありません。
    こだわりたい方は、希望の守り刀を葬儀会社に伝え、相談するとよいでしょう。
    葬儀会社のなかには、「金属の・あるいは木製のものしか取り扱っていない」というところもあります。
    そのため、「金属の・あるいは木製の守り刀を希望している」という場合は、はっきりとそれを最初に伝えた方がよいでしょう。

  3. 刀の形をしていないものに関して
    また、「守り刀」としてはいますが、少し変わったところでは、「刀」の形をとっていない剃刀やはさみなどが守り刀として扱われることもあります。ただ、「猫は光るものを嫌う」「魔よけのためのもの」と考えれば、剃刀やはさみなどを守り刀とするのはそれほどおかしなことではないのかもしれません。

【注意】棺に納める守り刀には制限がある

守り刀は、「棺とともに一緒に燃やすか、それともあくまで葬儀(ご遺体安置~棺を閉じるまでの間)の間だけ使うものか」でその処遇が決まってきます。上でも述べた通り、棺とともに焼かないつもりならば金属製の守り刀を使っても問題はありません。しかし「棺と守り刀を一緒に焼く」という場合は、守り刀の材質に注意しなければなりません。

日本では、特段の事情がない限り「火葬」というかたちで故人を弔うことになります。このため、燃えないもの(あるいは燃え残ってしまうもの)や、ご遺骨を汚したり傷つけたりする可能性のあるもの、有害なガスなどを発生させてしまう危険性があるものや爆発の危険性があるものを入れることはできません。

金属性の守り刀の場合、焼け残る可能性が高く、収骨を行う際の妨げとなります。また仮に燃えた場合であっても、その燃えがらがご遺骨の状態を悪くする可能性があるため、一緒に入れることはできません。
「棺と一緒に守り刀も燃やしたい」ということであれば、木製の守り刀を入れるとよいでしょう。これならば問題なく燃やすことができます。

ただ、いずれにしても、守り刀の扱いは葬儀会社によって多少の違いがあります。「守り刀であれば、特にこだわりはない。棺と一緒に焼いても、一緒に焼かなくても構わない」という場合ならば問題はないのですが、

  • 金属製あるいは木製のものを使用したい
  • 棺と一緒に焼きたい(あるいは一緒に焼きたくない)
  • 形や長さにこだわりがある

などの場合は、事前に葬儀会社に相談しておいた方がよいでしょう。

守り刀と法律~銃刀法違反について~

「葬儀のときにのみ使う守り刀」の場合はあまり問われることはありませんが、実は守り刀も銃刀法の制限を受けます。銃刀法とは、「銃砲刀剣類所持等取締法」という法律名の略称であり、1958年に公布されました。簡単にいえば、「銃砲刀剣類は持ってはいけないし、持つ場合は許可が必要だし、取り扱いについても定めるよ」という法律です。
15センチ以上の刀の「所持」には許可がいります。また、この法律は本物の刀だけでなく、模造刀剣の「携帯」にも及びます。

銃刀法違反の話もあり、現在の守り刀は、

  • 本物の刀ではなく
  • 15センチ以下のもの

が主流となりました。

葬儀会社に依頼をして守り刀を手に入れる場合はそれほど大きな問題にはなりませんが、本物の刀を……と考える場合は注意しなければなりません。

では実際の守り刀の置き方やタイミングなどについて解説していきます。

1-3.守り刀が置かれるタイミング

守り刀が置かれるタイミングは、一般的に、「枕飾りがされるとき」です。ただ、「枕飾りがされるとき」と言っても、「そもそも枕飾りがされるときがいつかわからない」という人も多いことでしょう。まずはこのあたりについて解説していきます(なお、現在は病院で息を引き取るケースが多いので、今回もそのような想定でお話していきます)

  1. 死亡診断~末期の水
    医師によって死亡が確認された後、末期の水をとります(宗教によってこの儀式は異なります)。

  2. 清拭~遺体安置~葬儀会社への連絡
    多くの場合、病院で「清拭」までを行ってくれます。これは故人の体を布で拭き、清める行為です。病院によっては死に化粧までをしてくれることもあります。なお、死に化粧などを専門家の手でと考える場合は、そのための業者に依頼をします。

    また、これと並行するようなかたちで、葬儀会社に連絡を行います。

  3. ご遺体の搬送
    病院の遺体安置所は、長くは使えません。このため、故人をお連れすることになります。自宅にお連れするのが一般的ですが、葬儀会場となる場所あるいはそのときに使うご家族の控室にお連れすることもできます。
    ここでご遺体の搬送を頼んだ葬儀会社にそのまま葬儀の手配を依頼するのが一般的ですが、「対応が悪かった」などの場合はほかの葬儀会社を利用することもできます。なお、葬儀会社は原則として365日24時間で対応しています。

  4. 枕飾りを行う
    葬儀会社のスタッフによって、故人は布団に寝かせられます(布団はご家族で手配するケースもありますが、一般的には葬儀社に任せてしまって構いません)。

    このときに、宗教に応じた「枕飾り」がなされます。葬儀を行う際には大きくわけて3つの祭壇が作られますが(枕飾り・本祭壇・後飾り)、枕飾りは葬儀のもっとも初めの段階で作られるもので、非常に小規模なものです。宗教によって違いがありますが、ろうそくや植物(花や樒・しきみなど)はどの宗教でも共通して置かれることが多いものです。

    このときに、「守り刀」が置かれます。故人を布団に寝かせた後に、枕元や胸上に置かれます。このときに置かれた「守り刀」が、そのまま故人(解釈によってはご家族)をお守りするための守り刀となります。このため、「特定の守り刀を使いたい」ということであれば、清拭やご遺体の搬送の段階でお願いをしておくとよいでしょう。また、現在は守り刀自体を使わない葬儀会社も増えているため、特定の守り刀を希望する場合だけではなく、「守り刀を用いたい」という希望自体も伝えておくと安心です。

    この後に枕教(まくらぎょう)を挙げます。枕経とは故人が亡くなった後に枕飾りと故人の枕元で読まれるお経です。現在は省略されることも増えていますし一概に言い切れることではありませんが、筆者の経験上、守り刀を特にと考えるご家庭の場合は、総じて枕経を希望されるケースが多いかと思われます。守り刀を希望されるご家庭の場合、宗教への帰属意識・あるいは菩提寺との関わりが深いからです。

1-4.守り刀はだれが置くの?

「守り刀はだれが置くか」ですが、これはおそらく、ほとんどのケースで葬儀会社のスタッフが担当することになるでしょう。

「長く続いてきた家であり、葬儀のやり方も伝わっている」「家自体が非常に葬儀に詳しい」という特別なケースではない限り、多くの人にとって葬儀は「慣れないもの、慣れることのないもの」です。そのため、「守り刀をどこに、どのように置くか」ということも知らない人が多いからです。

ただ、「故人を守るための道具だから、自分たちで置きたい」などのような希望があれば、葬儀会社のスタッフに伝えてみるとよいでしょう。現在の葬儀会社は、「ご家族と故人のご意向を大切にする」と考えるところが非常に多いため、ご家族のご意向に沿うようにしてくれるケースが多いかと思われます。

守り刀の歴史について

守り刀の歴史は、武家社会に端を発すると考えられています。
武士は己の身を守るために、枕元に剣を置いて寝ていました。また、武家の娘が嫁ぐときには、身を守るための刀としての守り刀を持たされたといわれています。

「刀」は、よく言われることではありますが、武士の魂を表すものでもありました。そのため、葬儀の際にも脇差を置いたとされています。このような風習はやがて町人にも広まっていきます。武士の魂であるのと同時に、「守り刀は死者の魂を守る」「守り刀は猫などから故人を守る」「守り刀は死の穢れから生きている者を守る」という考え方は、町人にとっても受け入れやすいものであったのでしょう。

町人にとって「剣」は遠いものでありましたが、鎌や鍬を使い、故人を守ろうとしました。現在では宗教的な感覚が薄れていきつつありますし銃刀法のからみもあって、真剣そのものを使うことは基本的にはありません。しかしこのような、歴史に裏打ちされた守り刀の伝統は、今でも一部の地域や葬儀で見ることができます。

守り刀は必須?最近では準備しない人が増えている

お墓について考える夫婦

かつてはよく使われていた守り刀でしたが、現在ではやや特殊なものとなりつつあります。地域やご家族の考え方、葬儀会社の考え方に左右されるところも多いのですが、葬儀会社によっては「特別に希望されない限りは、基本的には用意しない」としているところもあります。
このような考え方は15年ほど前にはすでにみられていました。ただ、すべての葬儀会社が「基本的には用意しない」としているわけではなく、5~7年ほど前の葬儀においても、守り刀をよく使う葬儀会社・地域などもありました。

このため、「完全に廃れてしまった文化」とまではいえません。ただ、「必要であるなら、ご家族の方から言い出した方がよい文化」になっていっている、とは言えるかもしれません。

守り刀が廃れていった理由

では、なぜ守り刀が廃れて行ってしまったのでしょうか。それにはいくつかの理由があるとされています。
一つずつ見ていきましょう。

実利的な意味がなくなった

かつて、守り刀は「猫よけ」などの理由がありました。しかし現在は守り刀に頼らずとも、猫から故人を守ることはとても容易です。葬儀が行われる場所としては多くの場合葬儀ホールが選ばれますし、当然ここには猫が入り込む余地がありません。ご自宅で安置する場合飼い猫が寄って来ることはあるかもしれませんが、飼い猫=家族ととらえる人が圧倒的に多いため、この飼い猫を遠ざけるために守り刀を使うということはほとんど考えられないでしょう。

宗教への帰属意識の薄れ

かつての日本においては、「寺請制度(てらうけせいど)」が取られていましたし、今も「檀家」という考え方は残っています。
しかしながら、「信教の自由(宗教の自由)」を取り上げるまでもなく、現在では宗教に対する帰属意識が非常に薄い人も増えています。「実家の宗派が何かもよくわかっていない」という人もいるでしょう。
そのようななかにおいて、宗教的な概念のもとで行われる「守り刀を置く」という行動をあえてとろうとするご家庭も多くはなくなりました。

仏式などの宗教に囚われない葬儀の形よく見られるようになった

「宗教への帰属意識の薄れ」とも関わりがあることなのですが、現在は仏教・神式にとらわれないで葬儀を行うケースもよく見られるようになりました。これは「仏教・神式以外の宗教(例:キリスト教など)で葬儀を行う」こととはイコールではありません。
たとえば、「自分の実家は仏教であったが、自分の葬儀は無宗教で行う」「直葬にするので、宗教的儀式は必要としない」「音楽葬で送られたい」などです。

「葬儀を自分らしくカスタマイズする」「故人の愛したものでお見送りをする」という考え方が増え、葬儀のかたちが多様化した今、守り刀をはじめとする宗教的儀式を必要としないケースも増えてきたわけです。

このような理由が複合的に絡み合い、「守り刀」という文化が省略されるようになっていったのだと考えられます。以前は七日目に行われていた初七日法要が現在では火葬の日に行われるようになったのと同じように(「繰り上げ初七日法要」)、守り刀もまた、時代の変化を色濃く受ける文化となりました。

もっとも、だからといって「守り刀を置いてはいけない」「守り刀は時代遅れである」といえるものではありません。ご家族が希望すれば当然準備はできます。次の項目からは、守り刀を用意する場合のチェックポイントについてとりあげていきます。

4.守り刀はどのように準備する?

守り刀の準備の方法は、大きく分けて2通りです。

  • 葬儀会社に依頼する
  • 自分で用意する

の2つです。

4-1.葬儀会社に依頼して準備する

守り刀は、葬儀会社にお願いすれば用意してもらえます。葬儀会社によって考えは異なり、

  • 枕飾りに含まれる(この場合は「葬儀一式費用」などでまとめられる場合もあります)
  • 基本的には含まれないが、頼まれれば対応する

などがあります。
一式に含まれる場合は、「守り刀だけの値段」を算出することは難しいでしょう。また、木製か金属製かで値段も変わってきます。木製ならば3,000円程度が相場、金属製ならば10,000円~15,000円ほどといったところでしょう。

4-2.自分で購入して手に入れる

守り刀は、自分で購入して用意することもできます。通販などでも手に入れることができますから、故人の好みに合ったものを選ぶこともできます。1,000円程度で買うことのできるものもあります。
ただこの場合も「素材」の問題が出てきます。また、場合によっては葬儀会社を通した方が手に入れやすい場合もありますから、まずは葬儀会社に相談するのが得策だといえます。

【注意】守り刀の素材に制限が出る場合もある

棺に納めるものは金属やガラスなどの燃えないものや、溶けて遺骨についてしまうようなものは避けなければなりません 。
守り刀もともに火葬したいということであれば木製のものを希望しましょう。反対に、「火葬にはしたくない」ということであれば金属製を選んでも問題ありません。

2.守り刀の置き方・結び方

守り刀の置き方のポイントは、以下の2点です。

2-1.守り刀は枕元か胸元に置く

守り刀は、身を守るためのものです。そのため、枕元もしくは胸元に置くことになります。このときは、「どちらに置かなければならない」という決まりは特にありません。葬儀会社のスタッフが置くやり方に従えばよいでしょう。

2-2.守り刀は刃先が足元に向くように置く

守り刀を胸元に置く場合は、必ず刃先が足元に向くようにして置きます。もともと守り刀は「故人を守るためのもの」ですから、故人の喉元につきつけるようなかたちで置いてはならないと決められているのです。

2-3.守り刀の結び方

刀に結び付けられている紐についてですが、これには厳密な決まりはないと剣術の専門家は言いました。
実際の日本刀においては、紐の形はある程度持つ人間の好みによってその結び方が変わります。実利的な意味がないわけではありませんが、現在では、それぞれの好みで、♡型にしたり、『叶』という形にしたりすることがあり、おしゃれのひとつとして考えられています。
特に守り刀の場合、紐の結び方がそこまで厳密に問われることはほとんどありません。守り刀はあくまで儀式的な要素によって置かれるものですし、特に「袋」の結び方においては厳密な決まりはないと考えるのが一般的です。

「本人が昔から剣術をやっていて、見送るときも愛刀と同じ結び方にしたい」などのような特殊な事例でもない限り、「もともとされていた結び方」のまま置いて構わないでしょう。実際、葬儀の現場においても、この「守り刀の結び方」が問題になるケースはほとんどありません。

また守り刀の結び方の例をいくつかご紹介します。参考にしてください。

▽袋がついている刀の結び方

守り刀の結び方(袋あり)

▽袋がついていない刀の結び方

守り刀の結び方(袋がない例)

コラム~守り刀とお線香、守り刀とろうそく

最後に、守り刀と関わりのある「お線香」「ろうそく」について紹介していきます。この2つは、守り刀とは直接関係はないものの、守り刀と同様、「故人を守るためのもの」として使われてきたものです。

お線香について

「お線香」「お香」は、仏式の葬儀につきものです。
これは「守り刀」と同様、故人を守るためのものでした。

香りは故人の食べ物だと考えられていたこと、お香をたくことで死臭を紛らせて野の獣を近寄らせないようにすること、お参りする人の心身を清めると考えられていたことから、お線香がずっとたかれていました。
昔のお香(お線香)を非常に燃焼時間が短かったため、お参りに来る人はみなお香(線香)を持ち寄りました。これが「香典」の始まりだと言われています。

守り刀が廃れていった理由のひとつが、「実利的な意味がなくなったこと」にあるとしました。この「実利的な意味がなくなったため、形骸的に残るあるいは廃れていくもしくはかたちを変えていく」という特性は、葬儀におけるほかのものにも見られます。

そのうちのひとつが、この「香典」です。
線香自体は現在の葬儀でも炊かれるものですが、現在のお線香は昔のそれよりもずっと長持ちします。また、「死臭をごまかして野の獣を近寄らせない」という実利的な効果も、現在においてはあまり意味を持ちません。そのようなこともあり、現在は香典=現金で持ち寄るもの とされるようになりました。
「香典」の意味が変化し、お線香を持ち寄ることはなくなりましたが、相互扶助の精神はかたちをかえて現在に息づいています。

ちなみに、「お線香」の文化は仏教によるものですが、「お香」を使う文化はキリスト教にも見られます。

ろうそくについて

「ろうそく」もまた、お線香や守り刀と同様、故人を守るためにあるものでした。
ろうそくの場合は、「故人が道に迷わずにあの世にたどり着けるように」「火を嫌う獣が近づかないように」という意味を持っています。神秘的な輝きを持つ火は、あの世とこの世を結ぶためのものとも考えられています。

この「火」は、不思議なくらい、数多くの宗教で見られます。仏式はもちろん、神式やキリスト教式の葬儀においても、ろうそくは必ず登場します。そのため、仏式・神式・キリスト教式、いずれの葬儀においても、枕飾りにもろうそくとろうそくを置くための燭台が登場します。その意味では、守り刀よりもさらに、葬儀の場において「メジャーな」ものだといえるでしょう。

なおろうそくは、守り刀よりも扱いに注意がいるものです。現在の守り刀は人を傷つける恐れのないものですが(模造刀や木製であるため)、ろうそくは火災の危険性があります。「ろうそくの火は絶やさないようにする」とされていますが、このような危険性もあり、現在は電気式のろうそくがよく用いられています。


「お線香(お香)」も「ろうそく」も「守り刀」も、すべて故人を守るためのものです。また、それぞれが宗教的な意味を持つものでもあります。ただしこれらのかたちは、長い歴史のなかで少しずつ変わっていっているものです。お線香はそれ自体は絶えてこそいませんが「お線香を持ち寄る」というかたちから「現金を持ち寄る」というかたちに変わっていっていますし、ろうそくも電気式のものが使われるようになっています。
守り刀もまた、木製や模造刀へと姿を変えるとともに、「そもそも用いない」というケースも増えてきました。今後もこれらは少しずつ移り変わっていくものと思われます。

まとめ

「守り刀」とは、故人をあるいは生きている人を守るために置かれるものです。獣や穢れ、魔物を呼び寄せないようにと願い置かれるもので、その起源は武家社会にまでさかのぼるといわれています。
「守り刀」の考え方は仏教と神道に見られるものですが、「亡くなった人は、すぐに阿弥陀如来に導かれる」としている浄土真宗においては、基本的には守り刀は用いません。

現在は銃刀法のからみや、火葬をしたときに故人のご遺骨に汚れがつかないようにという観点から、木製のものが使われます。また、火葬のときに一緒に燃やすわけではない場合は、金属製の守り刀が使われることもあります。これらは通販で購入することもできますが、葬儀会社に依頼するのが一般的です。
また、「守り刀」としていますが、はさみや剃刀を使う場合もあります。

長い歴史を持つ「守り刀」ですが、現在は、

  • 実利的な意味がなくなった
  • 宗教への帰属意識が薄れた
  • 仏式などの宗教に囚われない葬儀のかたちがよく見られるようになった

ことから、守り刀を用いない葬儀も増えています。このため、守り刀を希望する場合は、事前に葬儀会社に伝えておくことをおすすめします。特に、「金属製の、あるいは木製の」というこだわりがあるのであれば、きちんと言っておく必要があります。

守り刀は、枕元か胸元に置きます。足方向に向けておくようにします。枕飾りを行うときに葬儀会社のスタッフが置いてくれるケースが一般的なので安心してください。

「故人を守る」という意味では、お線香やろうそくも守り刀と縁の深いものです。しかしこれらのかたちも、守り刀同様、時代とともに移り変わっていっています。10年後20年後には、また新しいかたちでお見送りがされるようになっているかもしれません。

なお葬儀における準備物などについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

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