記事の執筆
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

大手葬祭業者、大手仏壇・墓石販売業者勤務を経て、葬送コンサルタントとして独立。
起業コンサルティングや人材育成、取材・執筆などを行っている。
近年は葬送関連事業と並行しながら社会福祉士として、また介護職として福祉・介護の現場でも活動。「生き方」「逝き方」両輪の橋渡しを模索中。

樹木葬の印象を実際のギャップ

樹木葬というと、どのようなイメージを思い浮かべますか。

セミナー等で参加者に問うと「遺骨が土に還るイメージ」「墓石がいらない分値段が安い」「大自然の懐に抱かれているイメージ」といった答えが返ってきます。

このイメージは正解でもあり不正解でもあります。

樹木葬をうたう墓地でも、骨壺ごと納骨するケースは多いですし、夫婦や家族単位になると通常の区画より高くなるケースも多々あります。また都市部の樹木葬墓地は「大自然の懐」とはほど遠いのが現状でしょう。

樹木葬といっても、一般の方にはイメージだけでその内容までは伝わっていないような気がします。

樹木葬が誕生したのは約20年前

樹木葬が誕生したのは1996年。岩手県の祥雲寺(現在の法人格は知勝院)が、里山保全を目的として雑木林を切り開き、散骨ではない自然葬法の墓地として運営を開始したのがはじまりです。

それから20年の間に、多くの樹木葬墓地が誕生しました。

特に横浜市が2006年、横浜ドリームランド跡地に開設した霊園「メモリアルグリーン」に樹木葬墓地を造成。東京都が2012年、小平霊園内に樹林墓地を造成した頃から注目度がUPするようになります。

その当時、私はよく「樹木葬墓地は発展途上。あと10年くらいはさまざまなタイプの樹木葬墓地が登場することになる」とセミナー等でお話ししていたような気がします。

まもなく10年になろうとする今でも発展途上であることは変わらず、まだしばらくは玉石混合状態が続くのではないかと思われます。

樹木葬が人気な理由は「承継者不要」であること

インターネットで「樹木葬」と検索してみてください。

多くの樹木葬墓地が画像とともに紹介されていると思いますが、なかには「これが樹木葬?」と疑いたくなるような画像も出てくるはずです。

「樹木葬」とネーミングをつければ注目されやすく、売りやすい傾向にあることもあって、各霊園や開発業者、販売業者、そして寺院等の宗教法人は「樹木葬」の墓地の造成に力が入っていると思います。

しかし樹木葬墓地の人気は、単に値段やイメージにひっぱられているのではなく、承継者不要で購入できる点が大きいのではないかと思います(※一部を除く)。

お墓は子々孫々承継してくことを前提として建てられていましたが、家族関係の変化等によりそれが難しくなった現代では、お墓の個人化が急激に進んでいます。

生涯未婚率の増加、少子化等も拍車をかけ、お墓を守っていくことが難しくなる世の中になると想定され。「継ぐ人がいなくても可」とする樹木葬墓地は、現代のニーズにマッチするお墓のシステムとして注目されているのです。

樹木葬を検討した50代女性の実話

葉子さん(50歳、仮名)もそんな樹木葬に魅力を感じているひとり。

5年前に父が、昨年母が亡くなり、お墓を探している。自分は一人っ子で独身。「墓石を建てることに意味を感じていないので樹木葬にしたい」というのが希望でした。

早速、都内にある樹木葬墓地の資料を取り寄せ、見学に行くのですが「イメージと違う」と躊躇します。

意味を考える人

葉子さんが抱く樹木葬のイメージは「広々とした空間に木々が生い茂り、時折鳥のさえずりが聞こえる……」自然美あふれる里山のようなものを想像していました。

しかし都内の樹木葬墓地は、墓地として開発された土地の一角にあるものが多く、和型の墓石に囲まれた小さなスペースに草が取って付けたように生えている程度で「樹木葬墓地」と称しているところも少なくありません。

「墓石は必要ない」と思っていても、墓石やタイル状のプレートとセットで購入しなくてはいけない区画もありました。芝とタイルの某樹木葬墓地を見たときの感想は、思わず「駐車場かと思った」

郊外へ目を向ければ、それこそ森を切り開いたような自然美あふれる樹木葬墓地もありますが、車の運転をしない葉子さんにとっては、電車やタクシーを乗り継がないとお墓参りに行けないような場所は、現実的ではないと考えます。

また「欲を言えば、自分たちに縁のある土地・地域が良い」と考えると全く知らない土地を永眠の地とすることに多少抵抗がありました。

そんな中、葉子さんがみつけたのがガーデニングタイプの樹木葬墓地でした。一年を通して季節の花々が墓参りの人の目を楽しませてくれる洋風庭園風の墓地です。

世田谷やすらぎ墓苑 花壇葬セレナージュ

こちらの樹木葬墓地の場合は墓標となる墓石をセットで購入することになるので、最低でも全部で200万円程度かかり(石種を選んだのでさらに高くなってしまった!)、金額としては決して安くはありません。

しかし場所も生まれ育った生活圏から近く、馴染みの商店街もあり、何より自分が通った学校の近くに位置していたことが決め手となりました。

もちろんお墓を継ぐ承継者がいなくても購入は可能。使用期間が決まっていて、自分の死後、期限が来たら遺骨を取り出して寺院の方で合葬し供養・管理してくれるシステムとなっています。

「最初抱いていた樹木葬のイメージとは随分違ってしまったけれど、お墓探しをしているうちに、自分が両親をどう弔っていきたいか見えてくるようになった」と葉子さん。

「自分はあまり信心深い方ではなかったけれど、お墓参りの度に寺院の本堂にお参りするようになりました。お盆やお彼岸の法要会にも参加するようになり、なんとなく親孝行ができたような気がします。ただやっぱり高いですね、墓石は必要ないと思っていたのに、墓石やデザインに凝ってしまったので予算オーバーでした。でも父と母、私の3人が入れるお墓で、交通至便なところを探していたので納得はしています」

最後に

樹木葬墓地といっても、全体の雰囲気はもちろん、納骨方法、供養方法、費用もまちまち。探しているうちに「ピン」とくるお墓、それがご縁なのかもしれません。


編集者の一言

一口に樹木葬といっても、里山にある自然に囲まれたスタイル、霊園の一角に芝生を敷いたスタイル、さまざまあります。樹木葬という言葉とイメージだけで実際の場所を見ずに決めてしまうと、後々「想像と違った…」という事態になりかねません。
またスタイルに限らず、樹木葬は季節によっても見せる顔が変わります。実話にあった葉子さんのように、1年を通して自分や大切な先祖が満足できるお墓はどんなものか?を考え、後悔のない選択をしていただきたいです。