樹木葬の納骨方法や特徴などを詳しく解説
新しい供養法として、樹木葬が注目されています。
都営霊園が樹木墓地や樹林墓地を開設し、申込者が殺到していることから、樹木葬はこれからさらに広がりを見せるように思われます。
しかし、社会全体から見てみるとまだまだ少数派の樹木葬。
前例が少ないからこそ、あとで後悔を感じる人もいるようです。
この記事では、樹木葬をお考えの皆様が後悔することないように、納骨方法や特徴などを丁寧に解説いたします。
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樹木葬とは
樹木葬とは、石ではなく、樹木を墓標にしたお墓のことです。
お墓と言えば石塔を建てることが一般的ですが、ここ最近は樹木葬がにわかに注目されるようになっています。
樹木葬は「自然葬」の内のひとつ
樹木葬は、「自然葬」と括られる供養の方法の内のひとつです。
この自然葬の根底には、海や山に遺骨を還すことで、大きな自然の循環の中に回帰していく考えがあります。
しかし、従来のお墓も遺骨を土の中に埋葬していたために、「自然に還す」という点では実はあまり変わりません。
むしろ、埋葬地にお墓などの人工の構造物を作らない、人の手のあまり加わらない葬法が、自然葬と呼ばれています。
戦後から高度成長期にかけて、お墓はひとつのブームを起こしました。
日本中のあちこちに墓地が造成され、区画整理された墓域の中に家族墓が建立されていったのです。
しかし、バブルが崩壊し、景気が低迷することで、死後の供養にお金を掛けられない人が増えました。
重ねて、家族のあり方は大きく変わり、1つのお墓の中で先祖代々を祀り続けるシステムは限界を迎えています。
むしろこうした現実的なライフスタイルの変化が、樹木葬をさらに広げる一因になったのだと思われます。
樹木葬の特徴
樹木葬の特徴は、次の3つで説明できます。
石を使用しない
樹木葬は木を墓標としたお墓です。
従来のお墓は遺骨の埋葬地に墓石を建立しますが、樹木葬では苗木を植樹します。
墓石は、手入れが行き届いていればいいのですが、お参りがされずにあれてしまったお墓はこちらに薄気味悪い印象を与えてしまいます。
一方、樹木葬であれば、そもそも植物は自生しますから、利用者にとっても印象がよいのでしょう。
加えて、墓石を採掘するためには山から切り出さなければなりませんが、樹木葬ではそうした環境破壊をしなくても済みます。
継承を必要としない
多くの樹木葬は、跡取りのいない人たちに選ばれています。
石のお墓であれば、利用者が亡くなったあともお墓だけがそこに残ってしまいます。
墓じまいをするためにも、それなりの手間や費用がかかりますが、そもそも跡取りがいないというのに、誰が責任もってしてくれるのでしょう。
樹木葬の多くは、最終的には永代供養にする前提で契約が交わされます。
お墓を継承する必要がないのは、跡取りがいない人たちにとっては大きな安心感につながります。
費用を安く抑えられる
樹木葬は、一般的な石のお墓よりも費用を安く抑えられます。
墓石を建立するためには、まずは墓地の永代使用料を支払い、そして墓石の費用を石材店に支払います。
面積や墓石のグレードによって費用は異なりますが、合計で200万円から300万円くらいはかかります。
一方、樹木葬の場合は、墓地の永代使用料の支払いは必要ですが、墓石が樹木なので、費用を大幅に抑えられます。
相場は50万円前後だと思われます。
樹木葬が選ばれる理由
日本で樹木葬がはじめて行われたのは、1999年に岩手県一関市の祥雲寺が開設した「樹木葬公園墓地」です。
以降、樹木葬は人々の注目や関心を集め、いまでは日本全国で樹木葬を行う霊園や寺院が増えています。
また、民間霊園や寺院だけではなく、公営霊園でも樹木葬への取り組みが始まっており、東京都営小平霊園の樹木墓地と樹林墓地は、毎年多くの申し込みで溢れ、高倍率の抽選となっているほどです。
どうしてここまで樹木葬が選ばれるようになったのでしょうか。その理由をご説明します。
少子高齢化や核家族化でお墓のあとをみてくれる人がいない
樹木葬に限らず、納骨堂や永代供養など、昨今増えている新しい供養の方法は、その根底に「跡取りがいない」「墓守がいない」という、世代間のつながりが希薄になっているという問題があります。
なにも、親子の仲が悪くなったということではありません。
少子高齢化という点で見ると、昔は兄弟がたくさんいるのが当たり前でしたが、いまでは一人っ子世帯も多いことでしょう。両親の介護や供養を子一人が背負うのはそれなりに大きな負担です。
また、核家族化という点では、親と子が別々の場所に住むのが当たり前の時代です。
このような社会の状況で、従来のように世代を超えてお墓を守っていくこと、新しいライフスタイルの中では無理が生じてしまうのです。
従来の墓石では、利用者が亡くなったあとも石は残ります。
しかし樹木葬では、すでに遺骨は土に還りますし、墓標である苗木も自生してくれます。
人の手を必要としないという点では、いまの時代にあった供養法なのかもしれません。
遺骨を自然に還すことができる
樹木葬では、遺骨を自然に還すことができます。
墓石の中のカロートで遺骨を保管するのではなく、土に直接還すことで大自然の営みの中に自身の死後を預けられるという考えに、多くの人の心をつかんでいるのでしょう。
ただし、気を付けたいのは、すべての樹木葬が直接土に還すわけではないということです。
霊園型の樹木葬墓地など、カロートを用いた樹木葬もたくさんあります。
この場合、一定期間はカロート内に遺骨を保管し、一定期間が過ぎたら合葬にされるでしょう。
石材の切り出しや墓地の造成など、環境破壊を防げる
樹木葬は、環境にやさしい供養法です。
従来のお墓では、墓石のための石材を山から切り出さなければなりません。
ダイナマイトで発破して岩石を切り出します。
採石場によっては地下100メートルも深い所まで重機を下ろして岩石を採掘します。
また、墓じまいの際には、墓石はすべて採石され、バラスに再利用されますが、それにも費用がかかるために、悪徳業者が墓石を不法に投棄して社会問題になったのは記憶に新しい所です。
樹木葬の種類
樹木葬の墓地にも、特徴によっていくつかの種類に分けられます。
種類別に、1つずつ細かく見ていきましょう。
里山型の樹木葬
里山型の樹木葬とは、山全体を墓地とした場所での樹木葬です。
日本で樹木葬がはじめて行われたのは、1999年に岩手県一関市の祥雲寺が開設した「樹木葬公園墓地」で、これこそが里山型の樹木葬の原型でしょう。
現在は、別院の知勝院というお寺が経営をしています。
祥雲寺は、所有していた山林を、地域住民の同意を得た上で、経営許可を取得しています。
穴を掘って埋葬し、墓石やカロートなどの一切の人工物を禁じています。
これは、「美しい里山を後世に残す」という理念のもとなされているためです。
また、取得した墓地は承継者が続けて利用できますし、万が一承継者が途絶えてしまった場合は、改葬されずに永続的に保護されます。
自然保護、そして自然回帰という点において、最もあるべき樹木葬の形だと言えるでしょう。
都市型・公園型の樹木葬
都市型・公園型の樹木葬とは、一般的な墓地に設置された樹木葬墓地です。
霊園や寺院の境内の中で行われる樹木葬で、墓標が石から木に代わる以外は、一般的な墓地と同じと思えばよいでしょう。
里山型と違って、墓地は造成され、墓石やカロートなどの人工物を用いるために、「里山型」と比べると、厳密な意味で自然志向とは言い難い面があるかもしれません。
ただし、都市部で里山型の樹木葬の実施は不可能に近いものがあるために、家から通える距離の中で樹木葬墓地を見つけようとすると、この「都市型・公園型」にならざるを得ないでしょう。
お墓に、個別のお墓や合葬があるように、樹木葬も個別の区域と合葬があり、主に次の3形態に分けられるでしょう。
- 個別の樹木葬
従来のお墓と同じで、個別に墓地を取得し、埋葬します。
その上に墓石を建てるのではなく、苗木を植えるのが、お墓と樹木葬の違いです
埋葬は、土の中に直接するケースもありますが、多くはカロートの中に納骨します。 - シンボルツリー
共有の樹木に手を合わせ、納骨は個別に行います。
シンボルとなる大樹のまわりに複数のカロートが設置されており、その中に納骨します。
カロートの上には、墓石や石板を設置します。 - 合葬タイプ
樹木も共有のシンボルツリーに手を合わせ、埋葬も他の人と同じ場所に埋葬します。
植樹もなく、個別のカロートや墓石も不要のため、樹木葬の中でも最も安く抑えられる方法でしょう。
ガーデニング型樹木葬
ガーデニング型の樹木葬は、「都市型・公園型」に含まれる樹木葬墓地です。
ただし、墓地の設計や景観が、イングリッシュガーデン風に作られており、墓地を連想させない雰囲気の中で樹木葬ができます。
ガーデニング型の樹木葬でも、個別埋葬、合葬タイプなどがあります。
樹木葬に納骨する流れ
樹木葬と一般のお墓では、納骨方法に違いなどがあるのでしょうか?
樹木葬の納骨について、くわしくまとめました。
樹木葬への申込
まずは、樹木葬に申し込みをしましょう。
これは、一般的な墓地を取得するのと同じような流れで行われます。
空きがあればすぐに取得できますし、都営小平霊園のように、定員に対して申込者が多い場合は抽選になります。
永代使用料を支払えば、すぐに墓地は取得できるでしょう。
また、墓石の建立のように時間を要しないために、比較的早く納骨できます。
納骨のタイミング
納骨のタイミングに決まりはありません。
早く納骨することで気持ちが落ち着く人もいれば、ずっと故人様のそばにいたいとしばらく自宅に置いておく人もいます。
自分たちが望む日を納骨の日とすればよいでしょう。
いつ納骨すべきか分からない人は、故人様の区切りとなる日を選ぶのがよいでしょう。
仏教の場合は、四十九日や、一周忌や、三回忌などがそれにあたります。
納骨の方法
お墓の場合は、墓石の下部のカロートの中に納骨します。
樹木葬の場合、タイプによって異なります。
- 土の中への埋葬
土に穴を掘って、その中に焼骨を埋葬します。
焼骨は骨壺から取り出して、さらしの袋などに移し替えて埋葬します。 - カロートの中に埋蔵する
カロートが設置してある墓地の場合は、骨壺に納まった状態で埋蔵します。 - 合葬
合葬とは、他の方と同じ場所に遺骨を埋葬することです。
合葬タイプの樹木葬では、墓地によって土の中への埋葬と、カロートへの埋蔵とがあります。
樹木葬に納骨する際にかかる費用相場
樹木葬にかかる費用の相場はおおよそ、50万円から80万円くらいでしょう。 はじめに永代使用料を一括で支払う形態もあれば、契約時に初期費用を支払い1体埋葬するごとに追加の費用を払う形態をとっているところもあります。
また、個別に樹木葬する場合は、個別の墓地を取得し、永代使用料を支払いますが、シンボルツリーのタイプ(大樹のまわりにある個別のカロートに納骨する)や合葬タイプの場合は、もっと費用を安く抑えられるでしょう。
樹木葬の費用内訳
樹木葬の費用には、次のものが含まれます。
- 永代使用料
個別に墓地を取得する場合、墓地の使用料を支払います。お参りの人が続く限り、永代に渡っての使用権が得られます。 - 永代供養料
樹木葬は、承継をしないことを前提に契約する人がほとんどです。お参りの人がいなくなっても、寺院や霊園が永代供養をしてくれます。 - 植樹費用・墓石や石板
埋葬地に植樹する苗木。あるいはカロートタイプの場合は、小さな石碑や石板などを据え付けます。
樹木葬を選ぶ前に考えたほうがいいこと
樹木葬はまだ登場したばかりの新しい葬法です。
注目を浴びてはいるものの、まだまだ圧倒的な少数派です。
だからこそ、前例も少なく、樹木葬をえらんでしまったがために後悔してしまったということも起こり得ます。
樹木葬を選ぶ前に、以下の点を注意しましょう。
樹木葬を選ぶ前の注意点
- 家族や親族の理解は得られているか
樹木葬の大きな特徴に、承継の必要がないというものがあります。
跡取りがいない人であればいいのですが、承継できる人がいるにも関わらず樹木葬に踏みきる場合は。家族や親族の理解を得ないと、トラブルのもとになります。
お墓は、自分たちの眠る場所であるだけでなく、遺された人が故人様を偲びに会いに来る場所でもあるからです。 - 供養の方法をきちんと確認しておこう
樹木葬は、一定期間は個別供養して、その後に永代供養にするというスタンスが多く採用されています。
一定期間とは、13年や33年などです。
自分たちの死後、どのように永代供養がなされるのかを事前に確認しましょう。 - お参りをして満足を得られるか
これまで、墓石へのお墓参りが当たり前だっただけに、樹木へのお参りで本当に満足できるのか。
人によっては物足りなさを感じることもあるようです。
また、礼拝の対象が樹木で、周囲も雑草が生えて荒れてしまうこともあるでしょう。
樹木葬以外のお墓を建てない供養法
樹木葬以外にも、お墓を建てない供養法はたくさんあります。
- 納骨堂
納骨堂とは、納骨壇と呼ばれる施設を持った建物のことです。
室内にあるため、天気に左右されずにお参りができます。
また、従来のお墓のように掃除の負担も少なく、高齢者でも安心してお参りができます。 - 永代供養
永代供養とは、死者や先祖の供養を寺院などに任せることの総称です。
一般的なお墓であれ、樹木葬であれ、納骨堂であれ、お参りの人がいなくなると、中にある遺骨は永代供養にします。
通常、合祀塔と呼ばれる一回りも二回りも大きな石塔の中で、複数の人の遺骨を保管、あるいは埋葬し、年に数度の合同法要で供養されます。 - 散骨
散骨とは、パウダー状にした遺骨を山や川、海に撒く葬法です。 散骨を規定する法律がないために、法的にはきわめてグレーな方法ですが、海への散骨が、最も近隣住民に迷惑を掛けないことから、多くの散骨業者は海洋散骨を取り扱っています。
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まとめ
この記事で解ったこと
- 樹木葬とは、石ではなく、樹木を墓標にしたお墓のこと
- 樹木葬は継承を必要としない
- 樹木葬は費用を安く抑えられる
- 樹木葬が選ばれる理由には、跡取りがいない世帯の急増、自然回帰という理念、環境破壊の防止が挙げられる
- 里山型の樹木葬とは、山全体を墓地とした場所での樹木葬
- 都市型・公園型の樹木葬とは、一般的な墓地に設置された樹木葬墓地
- ガーデニング型は、墓地や霊園を連想させない明るい雰囲気の樹木葬墓地
- 納骨のタイミングに決まりはない
- 納骨は、土の中かカロートの中に行われる
- 樹木葬にかかる費用の相場は50万円から80万円
- 家族や親族の理解を得ないと、トラブルのもとになる
- お墓を建てない他の供養法に、納骨堂、永代供養、散骨などがある
監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子
最近、新聞の折り込みに樹木葬のチラシが入っているのをよく見かけるようになりました。石材店や墓地販売業者からは「樹木葬の問い合わせが多い」という意見もよく耳にします。一般の方に樹木葬のイメージを尋ねると、たいてい「遺骨が自然に還るイメージ」「墓石がないので安価」等の答えが返ってきます。しかし実際は骨壺に納めて納骨するタイプも多いし、カロート部分がコンクリートで固められているケースもあります。墓石がないので、価格は抑えていますが、複数人分となると割高になってしまうケースもあります。
また、樹木葬とうたっているわりには樹木がそもそもなかったり、芝生墓地という名称のほうが適当だったりする墓地もあります。このように樹木葬といっても、見た目、納骨方法、供養方法等さまざまです。実際に足を運んで比較検討し、数年後どのようになっているか、という点までイメージできる樹木葬墓地を選ぶことをおすすめします。