霊廟は特定の人物が祀られる場所 意味や役割を詳しく解説 

【霊標】アイキャッチ画像

霊廟とは?徹底解説

  • 霊廟は特定人物を祀る建物。
  • 霊廟は建物、お墓は墓石で区別。
  • 霊廟の起源は中国、東アジア思想が影響。
  • タージ・マハルなど世界に名高い霊廟多数。

「霊廟」という言葉を聞くとみなさんはどんな場所をイメージしますか?
亡くなった人が眠る場所というのはなんとなく分かりますが、神社や寺院、仏壇やお墓と何が違うのでしょうか。

古今東西問わず、世界中で造られている霊廟について調べてみました。
ぜひともこの記事を読んで参考にしていただければ幸いです。

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この記事の目次

  1. 霊廟(れいびょう)とは霊を祭った建物
  2. 霊廟タイプは主に3種類
  3. 霊廟が生まれた歴史・背景
  4. 有名な霊廟のある寺・神社・孔子廟 3選
  5. 海外の霊廟
  6. まとめ
  7. 監修者コメント

霊廟(れいびょう)とは霊を祭った建物

霊廟とは死者や祖先の霊を祀る場所のことです。
主に建物のことを指すのですが、それが転じて墳墓や神殿や寺院も「霊廟」と言われます。

霊廟は特定の人物が祀られている場所

霊廟の定義は実に難しいのですが、いまの日本では「特定の人物が祀られている場所」と捉えられるでしょう。
霊廟を「死者や祖先の霊を祀る場所のこと」とするのであれば、仏壇も、お墓も、神社も、お寺も、すべてが霊廟に含まれることになります。

その中でも神道の神々や氏神を祀る施設を「神社」、仏教的な諸仏や祖先の霊を祀る施設を「寺院」として定着しています。

そうした神社や寺院とあえて区別した「霊廟」とは一体どんな場所なのだろうと考えた時に、特定の人物、特に生前に社会に大きな影響を与えた人物が祀られる場所のことを指していることが分かります。

どんな時代や場所でも人々は死を恐れて鎮めようとした

人間社会では、どんな時代でもどんな場所でも死者の遺体はなんらかの形で(土葬、水葬、風葬など)自然に還し、死者の魂を恐れ、崇めることによってそれを鎮めようとしました。

それこそが世界中のどの地域でも宗教が発生したこと、そしてその宗教がいまもなお生き続いていることの理由でしょう。

死の痛み、死別の悲しみ、死後の未知に対しての不安など、死は人間に対してさまざまな角度から恐怖を与えてきます。

その恐怖を少しでも和らげ、受けいれ、乗り越えるために、あらゆる宗教は死後の世界の物語りを編み出し、亡き人を、あるいは死者や生者を超越する神仏を崇めたのです。

ただ死者の遺体を処理すればいいのではなく、それに付随する「魂」のようなものをきちんと鎮めなければならない。

だからこそ墓や霊廟が造られ、人々は死者の鎮魂と冥福を祈りました。
埋葬や墓の形に違いはあれ、この根源的で本質的な部分は人類共通でしょう。

霊廟とお墓の違い

亡くなった人を祀る場所という意味では霊廟もお墓も同じものです。
ただ、お墓は墓石でできているのに対して霊廟は建造物だという大きな違いがあります。

そして、お墓には遺骨を埋葬しますが、霊廟は遺骨を埋葬する場合もあれば、埋葬地が別に設けられているケースもあります。
礼拝施設だけのとしての霊廟もあれば、埋葬や収蔵も兼ねる霊廟もあるのです。

徳川家康の東照宮の場合

徳川家康の祀られている東照宮では、霊廟とお墓が別々にあります。
江戸幕府の初代将軍である徳川家康のお墓は、久野山東照宮(静岡県静岡市)と日光東照宮(栃木県日光市)にあります。

「宮」という字があてられているため、それぞれが神社で祀られているのは徳川家康本人が神格化された「東照大権現」です。

そして久能山と日光のそれぞれに神社としての社殿があり、境内には徳川家康のお墓の宝塔がそびえています。
同じ境内地ではあるものの、遺骨の埋葬地(お墓)と礼拝施設(神社=霊廟)が区別されているのが分かります。

親鸞(しんらん)の墓所のある大谷祖廟

浄土真宗の開祖である親鸞聖人の遺骨は真宗大谷派東本願寺の大谷祖廟(京都市東山区)に納められています。
大谷祖廟の中でも親鸞聖人の遺骨が納められて祀られる場所は「御廟」と呼ばれています。

浄土真宗では「霊」という概念がありませんが、大谷祖廟、さらにはその中の御廟も広い意味では霊廟と呼べるかもしれません。

親鸞聖人が納骨されている御廟には門があり、その前で礼拝ができます。
門の奥にはお墓があり、真宗大谷派の門徒であれば同じ場所に納骨してもらえます(いわゆる「本山納骨」)。

つまり、大谷祖廟の御廟では、遺骨の埋葬と礼拝を同じ場所で行っているのです。
ちなみに門の奥、つまり御廟の中が具体的にどのようになっているかは職員の人でも知らないほどだそうです。

霊廟タイプは主に3種類

霊廟にもさまざまなタイプがありますが、宗教の違いからご説明いたします。

儒式

東アジアにおける霊廟は中国から始まりました。
先祖祭祀を重要とする儒教では、古代は先祖の死者の頭蓋骨を祀り、時代が下るにしたがって木主や神主と呼ばれるもの(位牌の原型に当たるもの)となり、これらを祀る場所こそが霊廟でした。

有力者ほど霊廟は大きく、一般人の場合は「祠堂(しどう)」と呼ばれる別棟の建物、あるいは住居の中の一室に「祀壇」と呼ばれる場所で先祖を祀りました。

民俗学者の柳田国男は、かつては自宅の中に先祖の霊を祭る「魂棚(たまだな)」があったといいますが、これも祀堂の一種かもしれません。

儒教は日本に仏教が伝来する前から東アジア一帯に広まっていたので、こうした日本古来の信仰に儒教の影響は充分にあったと考えられます。

ちなみに儒教特有の霊廟に「孔子廟(こうしびょう)」があります。
儒教の創始者である孔子の霊を祀る建物のことです。

中国の孔廟(山東省曲阜市)は孔子廟の中でも最大のもので儒教の総本山として厚く信仰を集めています。
日本の孔子廟で有名なのは、湯島聖堂(東京都文京区)、長崎孔子廟(長崎県長崎市)閑谷学校(岡山県備前市)などがあります。

孔子を祀るだけでなく、儒学を学ぶ学問の場として開かれました。

神式

神式の霊廟は神社と思えばよいでしょう。
ただし、日本全国に点在する神社には八百万の神が祀られていますが、霊廟となると神格化された特定の人物、つまりもともとは実在していたが神と崇められるようになった人を祀っているのが特徴です。

また、霊廟としての神社の建築様式は権現造が多いという傾向にあります。
権現造の発祥が静岡県静岡市の久能山東照宮という徳川家康を祀る神社であるという点も興味深いものがあります(徳川家康は死後「東照大権現」として崇拝された)。

また靖国神社(東京都千代田区)も戦没者という実在の人物を「英霊」として神格化して祀っている点で霊廟の要素が強い神社でしょう。

仏式

仏式の霊廟は寺院です。
代表的なものに伊達政宗の霊廟である瑞鳳殿(宮城県仙台市)があります。

絢爛豪華な桃山様式に彩られた瑞鳳殿は、黒漆や極彩色や錺金具(かざりかなぐ)など伝統技術の粋が集結した仙台屈指の観光名所です。

特徴的なのは廟所の中に初代仙台藩主の伊達正宗の遺骨が納骨されているのですが、建物の周囲に殉死した家臣たちの墓石(宝篋印塔)が立ち並んでいる所です。

また、瑞鳳殿は仙台市の経ケ峰公園の中にありますが、その周囲には2代藩主忠宗の霊廟「感仙殿」、3代藩主綱宗の霊廟「善応殿」など、伊達氏に関連する霊廟が並んでいます。

近くに瑞鳳寺という菩提寺があるため、寺院と霊廟が明確に区別されています。
その他、江戸幕府の政治深く関与した天台僧・天海が祀られる慈眼堂(滋賀県大津市)、浄土真宗の開祖である親鸞が祀られる本願寺派の大谷本廟や真宗大谷派の大谷祖廟(ともに京都府京都市)などがあります。

霊廟が生まれた歴史・背景

霊廟は世界各国にありますが、東アジアにおける霊廟の起源は中国だと言われています。
古代中国で起こった儒教では、人間は精神と肉体によって成り立っていると考えられました。

これを儒教的には「魂魄」(こんぱく)と呼びます。
魂魄とは「霊魂」と「形魄(けいはく)」の2つことで、精神と肉体、「心身」という言葉で置き換えれば考えれば分かりやすいでしょう。

そして中国では、「魂は天に昇り、魄(はく)は土に還るもの」と信じられていました。
「魂」という字はみなさんなんとなくイメージできると思いますが、この「魄」という概念こそが、亡くなった人間の肉体、つまりは白骨なのです。

儒教の盛んな中国や韓国などは、日本以上にご先祖様や両親のことをものすごく大切に考えて、その思想が社会基盤にまでなっているほどです。

ご先祖様を大切にすることを大事とした古代の中国人は、亡き古い先祖とともに生活するために年に一度、死者の魂下ろしを行っていました。

その時に用いられたのが、死者の白骨化した頭蓋骨で、この頭蓋骨を祀る場所こそが「廟」でした。
天に昇った魂を廟に祀られた魄(=頭蓋骨)に招き寄せる儀式を定期的に行い、自分たちが死者とともにいることをそのつど再確認していたのでしょう。

時代が下るごとに祀られるのは頭蓋骨から、それに似せた形のものになり、やがて「木主」と呼ばれる木の板となり、これらがいまでも使われている位牌へとなっていったのです。

世界遺産に登録された韓国ソウルの李氏の宗廟は特に有名で、朝鮮や韓国の歴代の国王や王妃などが祀られる皇室の祖先祭祀場です。

その大きさは宮殿と呼んでもいいほどでしょう。
人々が霊廟を建立して祖先をうやうやしく祭祀しているのは、それだけ自分たちのルーツである祖先の存在を大切にしていたことを意味します。

儒教と言えば親孝行を大切にしているイメージがありますが、それは親子関係こそもっとも身近な先祖関係だからです。
中国や韓国や日本人がお墓を大切にしているのも、そうした古代から続く死生観があってこそなのです。

有名な霊廟のある寺・神社・孔子廟 3選

国内で有名な霊廟を寺院(仏教)、神社(神道)、孔子廟(儒教)別に挙げてみました。

有名な霊廟のある寺院3選

大谷祖廟・大谷本廟(京都府京都市)

親鸞聖人の墓所があると言われているの大谷祖廟と大谷本廟。
浄土真宗は江戸時代に東西に分かれてしまったため、東本願寺を本山とする真宗大谷派は大谷祖廟に、西本願寺を本山とする本願寺派は大谷本廟に、それぞれ親鸞の墓所を設けています。
ともに全国の真宗門徒の本山納骨の場として篤い信仰を集めています。

増上寺(東京都港区)

いわゆる「芝の増上寺」は、上野の寛永寺と並ぶ徳川家の廟所と知られています。
歴代将軍の宝塔が祀られていたのですが、太平洋戦争の空襲によって大部分が消失してしまいました。

高野山(和歌山県高野町)

「日本総菩提所」の異名をとる和歌山県の高野山。
奥の院には真言宗の開祖である弘法大師空海が祀られており、いまでも大変多くの参拝者を集めています。
また、奥の院に続く参道では歴史の教科書に出てくるような武将や高僧や有力者たちのお墓が立ち並び、徳川家康も親鸞も高野山にお墓があるほどです。

有名な霊廟のある神社3選

香椎宮(福岡県福岡市)

香椎宮は、古代は神社ではなく霊廟として区別して意味づけられ、明治までは「香椎廟」と呼ばれていました。
祀られているのは第14代天皇の仲哀天皇と神功皇后です。

北野天満宮(京都府京都市)

北野天満宮をはじめとする全国の天満宮は菅原道真を祭神とします。
道真死後に天変地異が続いたこと、道真を左遷したものが相次いで亡くなったことから道真を鎮魂する意味で建てられた神社です。
現在では学問の神様と知られ、総本社の北野天満宮だけでなく、三大天神の太宰府天満宮(福岡県太宰府市)や防府天満宮(山口県防府市)など日本各地で信仰を集めています。

靖国神社(東京都千代田区)

明治2年創建の靖国神社は、明治維新にかけて殉死してしまった志士や国内外の戦争等で命を落としてしまった軍人たちを「英霊」として祀る神社です。
祭神は個別の神様や人物ではなく、護国の英霊246万6千余柱としています。

海外の霊廟

霊廟は日本だけでなく、海外にも数多く見られます。
世界的に有名な霊廟にインドの「タージ・マハル」があります。

総大理石で造られたことで有名なタージ・マハルは、ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが1631年に死去した愛妃ムムターズ・マハルのため建設した霊廟です。

サウジアラビアにある「預言者のモスク」は、メッカのマスジド・ハラームに次ぐイスラム教第2の聖地で、ムハンマドの霊廟でもあります。

キリスト教世界ではさまざまな聖人が大聖堂で祀られています。
パリの「サン・ドニ大聖堂」はフランス王家の墓所と言われており、スペイン・ガシリア地方の「サンチャゴ・デ・コンポステーラ大聖堂」は聖ヤコブが埋葬されていると言われています。

社会主義国や共産主義国では建国者の霊廟が造られます。
ソビエト連邦の「レーニン廟」、中国の「毛主席紀念堂」(毛沢東)、キューバの「チェ・ゲバラ廟」、ベトナムの「ホー・チ・ミン廟」などがあります。

まとめ

いかがだったでしょうか。
定義づけがとても難しい霊廟。特定の人物を祀った建造物であれば、あらゆるものが霊廟と呼べることができそうです。

最後にこの記事のポイントを箇条書きでまとめます。

  • 霊廟とは特定の人物が祀られている場所
  • お墓は墓石でできているのに対して霊廟は建造物だという大きな違いがある
  • 日本の霊廟の起源は中国にあり、中国の古代思想の影響を強く受けている
  • 海外にも数多くの霊廟がある

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

廟という漢字の意味は家屋の覆いに相当する屋根を意味するまだれがあります。

その中に朝のような文字が入っています。
この朝は、草と太陽を表す日の象形文字と、潮流が岸に至る意味の承継文字が合体したもの。

右側の月は、中の横棒がナナメなっていますが、これはもともとの字は舟を意味する「ふなづき」からきたものなんですね。

そこから「朝礼を行う場所」から「王が住む宮殿」「政治を行う場所」「祖先を祀る場所」という意味で使われるようになりました。
廟所はお墓そのものを表すこともあれば、お墓とは別に霊をお祀りする場所を指すこともあります。