生前墓を建てる理由と方法

お墓を生前に購入することは縁起が良い。家族と相談の上、生前墓を検討してみましょう。

生前墓とは?徹底解説

  • 生前墓は縁起が良く、税の節税や子どもの負担軽減に役立つ。
  • 生前墓の建立は長寿や再生を願う祝い事で、「寿陵」と称される。
  • 生前墓の建設は墓地選びから開眼供養までの一連の手続きを含む。
  • 生前墓の維持には定期的な参りが必要で、家族の理解が重要。

元気なうちにお墓を建てることは、縁起が悪いどころか、大変縁起がいいことだとされています。

古くは秦の始皇帝がルーツだと言われ、聖徳太子や歴代の天皇たちも生前にお墓を建てて、それを「寿陵(じゅりょう)」と呼びました。

子供に負担をかけることなく、相続税の節税対策にもなる生前墓について綴ります。

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この記事の目次

  1. 生前にお墓を建てる意味
  2. 生前に建立されたお墓のお披露目は祝い事
  3. お墓を建てる流れ
  4. 生前にお墓を建てるメリット・デメリット
  5. 家族からの理解が大事
  6. お墓には相続税がかからない
  7. 生前に建てたお墓の管理
  8. まとめ
  9. 監修者コメント

生前にお墓を建てる意味

元気なうちにお墓を建てる生前墓は、「寿陵墓(じゅりょうばか)」とも呼ばれ、大変縁起がいいとされています。

しかし、そのことを知らない人が増えているのが現実です。

筆者は何千何百というお客様と向き合ってきましたが、いまの時代では、お墓は不幸が起きてはじめて必要だと考えている人が大半です。

まずは、生前にお墓を建てることの意味について考えます。

お墓の2つの役割 死者の埋葬と生者の祈り

私は常々こう考えています。お墓には2つの役割があるのではないだろうかと。

1つは、死者の埋葬です。昔からお墓は埋葬地に建てられましたし、現代でもお墓の地下に遺骨を埋葬します。もう1つは、生者の祈りの場です。遺された家族や子孫は、お墓参りをして、先祖に言葉を語りかけ、そして祈ります。

つまり、お墓とは、亡くなった人のためにあり、同時に、この世に生きている私たちのためにもあるのです。これは、民俗学でも実証されていると思います。

それが「両墓制」と呼ばれる、1人の死者に対して2つのお墓を設けるという習俗です。両墓制では、遺体を埋葬した場所に建てる「埋め墓」と、お墓参りのための「詣り墓」の2つがあります。

前者は死者の埋葬地の墓標として、後者は生者の祈りの石碑としての役割を果たしているのです。

ここには、「死者の供養が遺された者の幸せであり、私たちの幸せが死者供養につながる」という、死者と生者の幸せの交換というお墓の本質が込められています。

お墓を建てるということは、自分たちだけの祈りの場所を作ること

お墓とは、あなただけの、あるいはあなたの家族だけの、祈りの場です。神社やお寺は社会が共有する祈りの場ですが、お墓は自分たちだけの固有の祈りの場所なのです。

お墓には、”死者の埋葬”と”生者の祈り”という2つの役割があると綴りました。生前墓を建てるということは、その時点では、死者の埋葬は不要です。

つまり、私たちの”祈りの場”のために、生前墓は作られるのです。

祈りは、とても大切な行為

私たちは、あまり意識していませんが、実にたくさんのことを毎日の生活の中で祈っています。

「父の病気が早くよくなりますように」

「今度の受験で必ず合格しますように」

「宝くじが当たりますように」

…などなど、大なり小なり、高尚な祈りや低俗な祈りも含めて、とにかく意識的に、あるいは無意識のうちに、祈っているものです。

祈りとは、人間の存在を大きく超えた神仏に、希望の実現を願うことです。私たちは、言葉に出さずに、自分たちの心の中で、いろいろなことを祈ります。

しかし、私たちの心というものは、不安定で、いつもふわふわしているものです。だからこそ石碑は祈りの対象としての力を遺憾なく発揮します。硬く、強く、重く、どっしりと構えてずっとそこに居続けてくれる石碑こそに、私たちは祈りをささげてきたのです。

死者はいなくても、先祖はいる

その家に死者がいなくても、”ご先祖様”は確実にいます。私たちがいまここにいるということは、両親や祖父母と連なる先祖の存在があったからです。

たとえそのお墓の中に遺骨が入っていなくても、自分のルーツである先祖の魂に向かって、生前墓を通して供養を祈ったって構わないのです。私たちの祈りを受け入れてくれるのが、お墓なのです。

さて、ここまでは筆者の個人的な考えや想いをふまえて綴りましたが、ここからは具体的に生前墓がどのように捉えられてきたのかについて、見ていきましょう。

生前に建立されたお墓のお披露目は祝い事

お墓のお披露目は祝い事です。

驚く方もたくさんいますが、お墓の開眼式というのは、ご先祖様の家の完成と、そこに仏様を招き入れることから、おめでたいこととされています。

そのおめでたさから、赤のローソクが使われるほどです。ましてや死者の埋葬のない生前墓ですから、より慶事の意味合いが強いでしょう。

生前墓は縁起がいいとされています。その理由についてご説明します。

寿陵のルーツは秦の始皇帝?

「寿陵(じゅりょう)」の「寿」は長寿や長い命を表す字で、「陵」は皇帝の墓という意味です。

日本では天皇の墓を「御陵」と呼んだりしますよね。中国の皇帝はみな寿陵墓にしたと言われていますし、日本でも古くは聖徳太子から新しくは昭和天皇までが寿陵にしています。

そして、そのルーツこそが秦の始皇帝です。

始皇帝の寿陵は驪山(りざん)と呼ばれる山(現在の中国陝西省)に作られ、驪山陵の造営には70万人もの受刑者が動員されたそうです。

始皇帝は、道教の「不老長寿」を信じたことでも有名です。不老不寿のくすりの「金丹」は金と水銀でできています。水銀の原料は辰砂(しんしゃ)と呼ばれる赤い鉱物で、道教では仙人になるための秘薬の重要な原料ともされていました。

始皇帝は山陵の地下に100もの水銀の川を張り巡らせたそうです。水銀には「不老長寿の願い」が込められているのです。中国の建造物に朱が多く用いられているのも、ここに起源があるようです。

建立者名を赤く塗るのは、朱が「不老長寿」を願う色

お墓に文字彫刻された一部を赤くするのをご存知ですか?これは、まだこの世に生きている人の不老長寿を祈るためです。彫刻される文字のうち、健在の人の名の部分は赤に塗ります。

もしもその人が亡くなられたら、色を消して、白や黒などにします。

  • 生前墓を建てて、すでに戒名をお寺から授かっている場合 

戒名とは、院号・道号・戒名・位号の組み合わせで構成されます。
たとえば「◯◯院▲▲◇◇居士」という戒名の場合、◯◯が院号、▲▲が道号、◇◇が戒名、居士が位号となります。このうち、「◇◇」の戒名の部分の文字を赤くします。

  • 建立者の名前

生前墓であれ、そうでなくても、墓石の裏面や側面に建立者名を彫刻します。

「平成30年5月▲日 山田太郎 建之」

このうち、「太郎」の部分を赤くします。

擬死再生 一度死んで生まれ変わることでより長生きできる

生前にお墓を建てることで、擬死再生が得られるとも考えられます。つまり、一度死に、再び生まれ変わることで、よりよい人生を過ごせるものだと信じられたのです。

この擬死再生の儀礼や習俗は、さまざまなところで見られます。

  • 還暦

還暦、つまり60歳になると、赤いちゃんちゃんこを着てお祝いをします。これは干支が一周して再び巡って来て「赤子に戻る」という意味があります。大人になった人が赤子に戻るということは、擬似的に一度死に、そして再生することを表します。

  • 戒壇めぐり

長野の善光寺や香川の善通寺などにある「戒壇めぐり」もこれと同じです。本堂の下の真っ暗な道を通って出てくることで極楽往生できると信じられました。真っ暗な道こそがあの世なのです。同時に、お母さんのおなかの中をも意味することから「胎内めぐり」とも言われています。

一度死ぬことで、これまでの人生をきれいに清算して、今後の人生をよりよく過ごそうとする、古い人たちの智慧ではないでしょうか?

このようなことから、生前にお墓を建てると長生きすると言われているのです。

お墓を建てる流れ

それでは、生前墓を建てるには、どのような流れになるのでしょうか。 

1.墓地の取得

まずは墓地を取得しなければなりません。
公営墓地、民営墓地、寺院墓地、共同墓地などさまざまな墓地があります。

2.石材店と墓地に同行する

墓地を取得したら、石材店を訪ねて墓地に同行してもらいましょう。
墓地の測量や周囲の環境を確認してもらい、こちらの希望を伝え、石材店からのプロのアドバイスを仰ぎましょう。

3.図面や見積書による提案

墓地を確認してもらい、こちらの希望を伝えます。
CGなどの完成予想図や、それに伴った見積書を作成してもらいます。
内容に納得したら契約書を交わします。

4.現場による工事

工事は主に3回に分けて行われます。
1度目は基礎工事、2度目は外柵工事、そして最後に石碑の据付工事です。

5.開眼供養

完成したら寺院を招いて開眼供養をしましょう。
生前墓は、お墓の中に故人様がいませんが、石碑の中に仏様がおられることで礼拝の対象となります。
考え方は自由ですが、筆者は開眼供養して、定期的にお墓参りすることをおススメします。

生前にお墓を建てるメリット・デメリット

それでは、生前にお墓を建てるメリットやデメリットについて、考えてみましょう。

 メリット

  •  自分のお墓を自由にデザインできる

元気なうちにお墓を建てるからこそ、自分の好きなお墓にできます。
お気に入りの墓地、好きな石材やデザインを選びましょう。 

  • 相続税の節税

お墓や、仏壇や、位牌などの宗教用具は「祭祀財産」に分類され、相続税の非課税対象です。
お墓にかかった費用分は、相続の時には節税になります。

  • 子供に負担をかけない

お墓は個人のものだけでなく、子や孫が受け継いでいく者でもあります。
自分の代でお墓を建てておくことで、子供たちに負担をかけずに済みます。

デメリット 

  • 周りから苦言を呈される、トラブルになる

お墓は、自分だけのものではありません。家族や親族にも関わりがあるものです。
何の相談もなくお墓が建てられてしまったことでトラブルに発展することもあります。
「家墓」と建てるのであれば、予め周りと相談しておきましょう。

  •  生前墓を認めない霊園もある

公営霊園などでは生前墓を受け入れないところもあります。
これは、人気のある公営墓地は空きのない状況が多い上、公共施設は住民に平等のサービスが求められます。
いますぐ墓地が必要な人たちを優先させるための措置でしょう。

家族からの理解が大事

生前墓を建てる時は、家族や周囲の人たちに理解してもらうことが理想です。なぜなら、お墓は、みんなの幸せを願って建てるべきものだからです。

「寿陵」という言葉が用いられているように、手を合わせて祈ることで幸せの状態に近づけます。そして、死後の自分の行き場が分かることで、死後の不安がひとつなくなるという面もあります。

「お墓」と聞くと、ついつい縁起でもないものという風に連想しがちですが、お墓は、先祖と子孫のつながりの場であり、故人を偲びに親族や縁者が集まる場であり、いわば縦軸(先祖と子孫)と横軸(親戚や縁者)とのつながりの交差点です。

自分で自分のお墓を建てても、死後にそのお墓の維持やお参りをしてくれるのは周りの人たちです。そしてゆくゆくはそうした人たちも入るかもしれない場所です。

周りの人たちに理解してもらうことで、よりよいお墓になるでしょう。 

お墓には相続税がかからない

お墓には相続税がかかりません。これは、お墓が「祭祀財産」として課税されないからです。

たとえば、葬儀のあとに必ずお墓を建てなければならないと分かっているとします。相続された遺産の中から墓石費用の捻出を考えていても、そのうちのいくらかは課税されます。

一方、事前にお墓を建てていたら、お墓そのものに対して課税されることはないのです。「いつか建てるならいまのうちに」という理由で生前墓を建てるのもよいでしょう。

ただし、分割払いやローンを組む場合は注意が必要です。相続段階で支払いが済んでいない場合は、相続人がお墓を買ったものとされ、残債に対して課税されてしままいます。

相続税対策でお墓を買う場合は、なるべく現金一括で購入しましょう。

生前に建てたお墓の管理

生前墓を建てたら、寺院に開眼供養をしていただき、きちんとお墓参りすることをおすすめします。盆や彼岸や年末年始など、年に数回でもいいので、お墓掃除をして、手を合わせましょう。

「生前にお墓は建てたけど、いますぐ葬儀があるわけじゃないから、開眼供養はいらない」

「中に遺骨が入っていないからお墓参りに行く必要がない」

こう考える人もいますが、お墓参りしないとお墓はどんどんすさんでしまいます。お墓は埋葬だけが目的ではなく、祈るためのものでもあります。

無理のない範囲で構わないので、定期的なお墓参りをしてあげましょう。

まとめ

いかがでしたか?
お墓は不吉なものではなくて、幸せのシンボルであることを体現しているのが生前墓です。

墓離れが進んでいる時代ですが、お墓参りも、結構いいものです。
お墓参りのために、生前墓を建ててみてはいかがですか?

この記事のポイント

  • 生前墓は「寿陵」と呼ばれ、大変縁起がいい
  • お墓には、死者の埋葬と、生者の祈りという、2つの役割があります
  • 寿陵のルーツは秦の始皇帝
  • 生前墓は「還暦」や「戒壇めぐり」などと同じ擬死再生で、長生きのための智慧です
  • お墓は自分ひとりのものではないので、周りの理解がないとトラブルのもとになるでしょう
  • お墓には相続税がかからないため、節税対策になります

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

生前にお墓を買ったり位牌をつくっておいたりすることを、寿陵といいいますが、そのほかに「逆修(ぎゃくしゅ・ぎゃくしゅう)」という言い方もあります。

逆修とは、仏教で死後の往生菩提に資するため、生前にあらかじめ功徳を積んでおくこと、つまり供養を生前に自らの手で行っておくことをいいます。
お墓や位牌をつくることがその形のひとつというわけです。
生前に供養をしておくと、死後の追善供養に比べて7倍の功徳があると説かれ、平安中期以降、貴族や武家社会を中心に、民間に至るまで広く知られていたともいわれています。

お墓や位牌、仏壇などは祭祀財産といわれ、相続財産とは別の扱いになるため、相続税対策として購入する人がいるのも事実です。
ただし、高価な仏具がいくつもあるなど、日常祭祀として適当でないとみなされる場合には課税対象になります。