黄檗宗のお墓の特徴とは?お墓参りの作法も知りたい!

【黄檗宗 お墓】アイキャッチ

黄檗宗のお墓とは?徹底解説

  • 黄檗宗のお墓は形状自由で、和型や五輪塔など多様なデザインが見られる
  • 墓石には「南無釈迦牟尼仏」や円相、家名、戒名、没年月日を刻むことが一般的
  • お墓参りは作法固定せず、供養の心を持ってマナーと順序を尊重することが肝要

日本のさまざまな宗派の中でも、黄檗宗(おうばくしゅう)は江戸時代に日本へ伝わった、比較的新しい宗派です。
黄檗宗のお墓の特徴やお墓参りなどの作法について、詳しく解説されている書籍が少ないということもあり、現在ではまだ黄檗宗に関する情報を入手しづらい状況となっています。

「黄檗宗でお墓を建てたいけど、どのようなお墓を選んだらいいのか分からない!」という人も多いのではないでしょうか。

この記事を読めば、黄檗宗のお墓の特徴や、お墓参りの作法がすぐに分かります。
さらに、黄檗宗の宗派の特徴や法要の作法まで、簡単に知ることができます。

まずは、黄檗宗の概要を見ていきましょう。

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この記事の目次

  1. 黄檗宗の概要
  2. 黄檗宗のお墓の特徴
  3. 黄檗宗の開祖や本山を知る
  4. 黄檗宗の法要と経典について
  5. お墓参りの時期に決まりはない
  6. 【先祖供養を大切に】黄檗宗のお墓参りの方法
  7. 筆者ピックアップ!黄檗宗のお寺
  8. まとめ
  9. 監修者コメント

黄檗宗の概要

黄檗宗は、臨済宗(りんざいしゅう)・曹洞宗(そうとうしゅう)と並ぶ、日本三禅宗の一つです。
禅宗(ぜんしゅう)とは、仏教の中でも、特に座禅を重んじる宗派の総称です。
では、黄檗宗には他の禅宗の宗派と比べ、どのような特徴があるのでしょうか?

禅宗のなかでも中国の特色が強い

黄檗宗は、江戸時代に中国の僧侶によって日本にもたらされた宗派です。
よって、黄檗宗ではお寺の作りやお経の読み方、使用する仏具などに、中国の特色が色濃く見られます。
例えばお寺が明朝様式という中国式の建築だったり、お経を唐音(とういん)という中国語の発音で読んだりします。

中国の特色が強く見られる黄檗宗ですが、同じ禅宗である臨済宗とは、実は多くの共通点があります。
次は、黄檗宗と臨済宗の共通点や関係について見ていきましょう。

臨済宗との関係

黄檗宗は、臨済宗と深く関係した宗派です。
黄檗宗と臨済宗とでは、お経の読み方などは異なりますが、教えや修行方法・儀式や作法などが同じなのです。

そもそも、日本で黄檗宗が開かれた当初は、正統派の臨済禅を伝えるという意味で「臨済正宗」や「臨済禅宗黄檗派」と名乗っていました。
また、明治9年に黄檗宗がひとつの宗派として独立する以前、日本政府によって黄檗宗は「臨済宗黄檗派」と改称させられたこともあります。

なお、同じ禅宗の曹洞宗と黄檗宗とでは、坐禅を除き、修行方法や儀式、作法などが異なります。

ここまで、黄檗宗の概要について説明してきました。
次は、黄檗宗のお墓の特徴について詳しく見ていきましょう。

黄檗宗のお墓の特徴

和型墓石

黄檗宗のお墓にはどのような特徴があるのでしょうか?
お墓の形や、墓石に刻む文字などを順番に解説していきます。
まずは、お墓の形から見ていきましょう。

お墓の形に決まりはない

黄檗宗では、お墓の形に決まりはなく、どのような形のお墓でも良いとされています。
現在、日本で多く見られるのは、縦長の石を上に乗せた和型墓石というお墓です。
他にも、五輪塔(ごりんとう)という、塔をかたどった墓石もあります。

最近では、横長の石を置いた洋風の墓石や、オリジナルデザインの個性的な墓石も増えてきています。

お墓は、先祖や故人を供養し、拝む場所となります。
新しくお墓を建てる時には、さまざまな形の墓石の中から、末永く愛されるものを選ぶと良いでしょう。

墓石の形を決める際には、お墓の種類も重要なポイントとなります。
次は、お墓にはどのような種類があるのか、解説していきます。

納める遺骨の数で変わるお墓の種類

お墓の種類は、納める遺骨の数によって変わります。
ここでは、一般的なお墓の種類を3つ紹介します。

  • 家墓…先祖代々の遺骨を納めた、一族のお墓
  • 個人墓…一人の遺骨だけを納めるお墓
  • 夫婦墓…夫婦二人だけを納めるお墓

お墓の種類をふまえて、次は墓石に刻む文字について見ていきましょう。

墓石の正面によく刻まれる言葉

黄檗宗では、墓石の正面に刻む文字に決まりはありません。和型墓石の場合、一般的に「〇〇家先祖代々之墓」や「○○家累代(るいだい)」というように、家名が刻まれます。
また、黄檗宗では「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」という言葉を刻む場合もあります。
「南無釈迦牟尼仏」とは、「お釈迦様を信心します」という意味の言葉です。

他にも、成仏することをあらわした「円相(えんそう)」という〇印を文字の頭に刻むこともあります。
例えば、「〇■■家先祖代々之墓」と刻みます。(■■には家名が入ります)

次に、五輪塔や洋風の墓石、オリジナルデザインの墓石には、どのような文字が刻まれるのかを紹介していきます。

五輪塔に刻まれる文字

花が供えられている五輪塔

五輪塔の場合は、「空」「風」「火」「水」「地」のそれぞれをあらわす梵字(ぼんじ)を、上に積まれた石から順番に刻みます。
梵字とは、古代インドで使われていたサンスクリット語の文字のことです。
また、梵字の他に、「○○家」といった家名を刻む場合もあります。

洋風墓石やオリジナルデザイン墓石に刻まれる文字

洋風の墓石やオリジナルデザインの墓石には「〇〇家」といった家名や、「心」や「感謝」「やすらぎ」などの好きな言葉を刻むことが多いようです。

では、墓石の側面や裏面にはどのような文字が刻まれるのか見ていきましょう。

墓石の側面や裏側に刻む言葉

墓石の側面や裏面には、埋葬者の戒名(僧侶につけてもらう名前)や俗名(生きていた時の名前)、没年月日、享年(数え年)などが刻まれます。
また、墓石の建立年月日を刻むこともあります。

埋葬者が多い場合など、墓石に文字を刻めなくなった場合は、墓石の横に墓誌(ぼし)という石を建てて、その墓誌に埋葬者の戒名などを刻みます。

また、生前にお墓を建てた場合、戒名や俗名に色を塗るという風習があります。
次は、その風習について説明していきます。

墓石に刻まれた文字が赤いのは寿陵(じゅりょう)

墓地や霊園などで、墓石に刻まれた文字が赤く塗られていることがあります。
それは、生きている人の戒名や俗名を表しています。

生きているうちに建てるお墓を「寿陵(じゅりょう)」と呼び、
寿陵では生前に戒名や俗名を刻んだ場合は赤く塗っておき、その人が故人となった時に塗った赤色を落とします。

おさらい!黄檗宗のお墓を見分けるポイント

ここまで、黄檗宗のお墓の特徴について解説してきました。
もう一度、黄檗宗のお墓に見られる特徴をおさらいしましょう。

  • 墓石正面に「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」という言葉が刻まれている
    お釈迦様を信心しますという意味の言葉です。
  • 墓石正面の文字の頭に円相(えんそう)という〇印が刻まれている
    「〇印+■■家之墓」というように刻まれます。

この2つのポイントで、黄檗宗のお墓を見分けることができます。
ただし、同じ禅宗である臨済宗や曹洞宗でも、「南無釈迦牟尼仏」という文字や、円相を刻むことがあります。

次は、黄檗宗とはどのような宗派なのかを見ていきましょう。

黄檗宗の開祖や本山を知る

黄檗宗を開いた人物である開祖は誰なのか、黄檗宗にゆかりのあるお寺はどこなのか、黄檗宗の教えや特徴はどのようなものなのかを、順番に紹介していきます。
まずは、黄檗宗の開祖について紹介していきます。

黄檗宗の開祖は中国の隠元隆琦(いんげんりゅうき)

黄檗宗は、1654年中国の僧侶「隠元隆琦(いんげんりゅうき)」によって、日本に伝えられました。
隠元は黄檗宗の他にも、インゲン豆やスイカ、タケノコ、レンコンなどのさまざまなものを日本に伝えたことでも有名です。
インゲン豆のインゲンとは、黄檗宗の開祖、隠元のことなのです。

次は、黄檗宗の教えを簡単に解説していきます。

黄檗宗の教え

黄檗宗は「唯心(ゆいしん)の浄土(じょうど) 己心(こしん)の弥陀(みだ)」という教えです。
「唯心」とは、「目で見えるすべての存在や事象は心がもたらしたもので、この世に実在するのは心だけである」という考えで、「仏さまも我々の心の中にある」という意味です。
つまり、「唯心の浄土 己心の弥陀」とは「自分の心の中に極楽浄土を見いだし、自分の心の中にある仏さまに気づくこと」という意味なのです。

では、黄檗宗ではどの仏さまをまつっているのでしょうか?

黄檗宗の本尊は「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」

お寺の中心に置かれる仏像を「本尊(ほんぞん)」といい、一番重要な仏さまとされます。
黄檗宗の本尊は「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」です。
ただし、お寺のゆかりによっては「釈迦牟尼仏」以外の仏像を置いても良いとされています。

次は、黄檗宗独特の作法について見ていきましょう。

黄檗宗の経典の読み方「法式梵唄(ほうしきぼんばい)」とは

黄檗宗では「法式梵唄(ほうしきぼんばい)」という、独特の経典(お経)の読み方があります。
法式梵唄は、法要の最初に読まれる香讃(こうさん)や、黄檗宗で日常的に読まれている禅林課誦(ぜんりんかじ)といった経典を、4拍子を基本としたリズムで、節をつけてテンポよく読みます。

さらに、法式梵唄では木魚(もくぎょ)や太鼓、ドラといった、楽器のような法具をたくさん用いて経典を読むので、まるで音楽のような読経となっています。
この、法式梵唄の作法は、全て立って行われます。
これは、中国には床に座る習慣がない、という理由があるからなのです。

黄檗宗の法式梵唄で使われている木魚は、現在では多くの宗派で使われるようになりました。
次は、木魚が日本に広まったのはなぜなのか、簡単に説明します。

木魚(もくぎょ)は黄檗宗から広まった

僧侶がお経を読む時に「ポク..ポク..ポク..」と叩く、木製の丸い法具を木魚(もくぎょ)と言います。
現在ではほとんどの宗派で使用されている木魚ですが、黄檗宗が開かれる前までは、日本では使われていませんでした。

当初は、黄檗宗だけがお経を読む時に木魚を用いていたのですが、複数人でお経を唱える時にお経がよくそろうといった理由などから、後に臨済宗をはじめ、多くの宗派で使われるようになりました。

次は、黄檗宗の大元となるお寺はどこなのか見ていきましょう。

本山は黄檗山萬福寺(おうばくさんまんぷくじ)京都府宇治市

全国にある宗派のお寺を統轄しているお寺を本山(ほんざん)と呼びます。
黄檗宗の本山は、京都府宇治市にある黄檗山萬福寺(おうばくざんまんぷくじ)です。
萬福寺は1661年に隠元によって、中国の建築様式で建てられた、純中国式のお寺です。

ここまで、黄檗宗について紹介してきました。
次は、黄檗宗の法要について、詳しく見ていきましょう。

黄檗宗の法要と経典について

お墓の前で読経する僧侶

法要について、黄檗宗の作法に触れながら解説していきます。
また、経典(きょうてん)という、黄檗宗の葬儀や法要などで読まれるお経についても見ていきましょう。

法要の回数や種類は他の宗派と変わらない

黄檗宗で行われる法要の回数や種類は、仏教の他の宗派と同じです。
葬儀後の法要は、死後7日目から始まり、以後7日ごとに営まれます。
そして、通常は四十九日で喪に服する期間が終わる、忌明け(きあけ)となります。

一周忌からの法要は「年忌法要(ねんきほうよう)」と呼び、一般的には三十三回忌まで行われます。
三十三回忌の後は五十回忌がありますが、最近では多くの場合、三十三回忌をもって弔い上げ(といあげorとむらいあげ)とし、その後の年忌法要を行わないようになってきています。

また、法要の回数や時期は、お寺や地域によって少し異なります。

では、法要を行う日程はどのように決めるのでしょうか?

法要を行う日は祥月命日(しょうつきめいにち)

法要は、故人が死亡した日と同月同日の祥月命日(しょうつきめいにち)に行います。
もし命日が平日の場合は、命日の前の土日などに行うのが一般的です。

年忌法要の一覧

一周忌から三十三回忌までの法要の時期と概要を、一覧にしました。
法要の時期の数え方は、三回忌以降からは亡くなった年を1年目として数えますので、間違えないように注意してください。

法要時期概要
一周忌亡くなった翌年の命日遺族・親族・友人・知人も列席し、読経と焼香、その後は会食をします。
三回忌死後2年目
七回忌死後6年目
十三回忌死後12年目遺族・親族で読経と焼香、その後は会食をします。
十七回忌死後16年目十三回忌以降は列席者を減らしていくことが多いです。
二十三回忌死後22年目親族も列席せず、遺族のみで法要を行うという家もあります。
二十七回忌死後26年目
三十三回忌死後32年目遺族・親族・友人・知人も列席し、読経と焼香、その後は会食をします。

なお、お寺や地域によっては、二十三回忌と二十七回忌を行う場合と、この2つの代わりに二十五回忌を行う場合があります。

次は、法要で読まれる経典について解説していきます。

葬儀や法要で主に読まれる経典

一般的に、黄檗宗の葬儀や法要では、主に「般若心経(はんにゃしんぎょう)」や「観音経(かんのんきょう)」が読まれます。
ただし、黄檗宗は他の宗派とは違う発音で経典を読みます。
なので、他宗派の発音の般若心経を知っている人でも「今読まれている経典が般若心経だと気づかない」ということもあります。

では、黄檗宗の経典の発音は、他の宗派とどのように違うのかを見ていきましょう。

黄檗宗の経典の読み方

黄檗宗の経典の読み方は、「唐音(とういん)」という中国の発音なので、日本の他の宗派の発音と全く異なります。
他宗派で読まれている経典の発音は「漢音(かんいん)」という発音です。
ここで「般若心経(はんにゃしんぎょう)」という経典の、最初の2行を例に、黄檗宗と他の宗派の読み方の違いを見ていきましょう。

般若心経の一文黄檗宗の発音(唐音)他の宗派の発音(漢音)
般若波羅蜜多心経。ポゼポロミトシンキンはんにゃはらみたしんぎょう
観自在菩薩。カンツサイプサかんじざいぼさつ


このように、黄檗宗は他の宗派とは全く違う発音で経典を読むという特徴があります。
しかし、最近では唐音だけでなく、漢音で経典を読むことも併用されるようになってきています。

次は、法要や葬儀の際に必要となる、黄檗宗の焼香の作法を見ていきましょう。

【6つの手順】黄檗宗の焼香の作法

黄檗宗の焼香の作法を、6つの手順に分けました。

  1. 念珠(数珠)を左手に持ち、僧侶に一礼する
  2. 仏前に向かって合掌し、一礼する
  3. 香を右手の親指と人差し指でつまみ、左手をそえて額の前に軽くささげてから香炉に入れる
  4. もう2回、3番の動作を繰り返す
  5. 仏前に合掌し、一礼する
  6. 僧侶に一礼する

黄檗宗の正式な焼香の回数は3回とされています。
しかし、法要や葬儀の列席者が多い時などは、2回や1回となる場合もあります。

次は、法要の際に用いられる塔婆について、詳しく見ていきましょう。

法要に用いられる塔婆(とば)とは?

塔婆(とうば)とは、正式には「卒塔婆(そとば)」と言います。
「卒塔婆」は、サンスクリット語で塔という意味の「ストゥーパ」に漢字をあてたもので、もともとはお釈迦様の遺骨を納めた仏舎利(ぶっしゃり)という塔を意味していました。

では、卒塔婆をお墓に立てる理由は何なのでしょうか?

法要で塔婆をあげる意味

塔婆を建てることは、昔から、故人のために多大な功徳があるとされています。
最初は石で作っていた塔婆が時代によって変化し、現在では板で作った板塔婆(いたとば)が主に用いられています。

法要の際には板塔婆をあげて供養しますが、この塔婆供養には「一切の不浄を除いてその場所を浄土(仏や菩薩の住まう場所)とし、霊の安住地とする」という意味もあります。
一般的に板塔婆は、法要が終わった後に、お墓の裏側にある「塔婆立て」に立てます。

次は、板塔婆に書かれている文字について解説していきます。

黄檗宗の板塔婆に書かれている文字

板塔婆の表面の上部には「キャ・カ・ラ・バ・ア」というサンスクリット語の、梵字(ぼんじ)という文字を書きます。
梵字の他にも「大円鏡智(だいえんきょうち)」や「平等性智(びょうどうしょうち)」などの、経典の文章に出てくる文字を書く場合もあります。
梵字や経典の文字の下には、故人の戒名や、何回忌などの供養の趣旨を書きます。

そして板塔婆の裏面には、供養の年月日や供養主の名前を書きます。
また、禅語(ぜんご)という、禅宗で使われる独特の言葉を書く場合もあります。

板塔婆を立てておく期間に決まりはない

法要の後に板塔婆を立てますが、いつまで立てておくか、期間に決まりはありません。
しかし、長い間放置したままにすると板が朽ちてしまい、お墓を汚すことになってしまいます。

なので、お墓参りの時などに、古くなった板塔婆は、きちんと撤去しましょう。
墓地によって、指定の廃棄場所があったり、お焚き上げを行ってくれたりするので、住職や墓地の管理者などに聞いておきましょう。

ここまで、黄檗宗の法要について説明してきました。
次は、お墓参りの時期について見ていきましょう。

お墓参りの時期に決まりはない

黄檗宗をはじめ、どの宗派であっても、お墓参りの時期に決まりはありません。
一般的には、お盆やお彼岸、故人の命日、お正月にお墓参りをする人が多いです。

しかし、お墓参りは何回でも行って良いので、就職や結婚など人生の節目に、先祖や故人に報告をしに行くのも良いでしょう。
お墓参りとは「先祖や故人への供養」なので、できるだけ行くようにしましょう。

では、お盆とお彼岸は、具体的に何月何日を指すのでしょうか?

お盆とお彼岸の具体的な時期

ここで、お盆とお彼岸の具体的な時期を簡単に説明しておきます。
お盆とお彼岸の期間は、故人の魂と交流できると考えられているので、お墓参りに行く人が多いのです。

  • お盆…7月13日~16日の3日間、または8月13日~16日の3日間
    ※7月と8月のどちらの期間をお盆とするかは、地域によって異なります
  • お彼岸…春分の日と秋分の日の、前後3日間を合わせた7日間
    ※お盆とは違い、お彼岸は1年に2回あります

次は、お墓参りの方法について見ていきましょう。

【先祖供養を大切に】黄檗宗のお墓参りの方法

お墓参りをする女性

お墓参りの方法に、黄檗宗特有の決まりというものはありません。
しかし、お墓参りのマナーやお参りの順番など、最低限守っておきたいことがありますので、順番に紹介していきます。

まずは、お墓に行く前にすることを解説していきます。

お墓参りをする前に挨拶をする

お墓参りに行く際、すぐにお墓に行くのではなく、必ずお寺の住職や管理事務所に挨拶をしましょう。

お墓がお寺の敷地内にある場合は、住職に挨拶をしてから、お寺の本堂の中央に置かれた本尊という仏像にも合掌し、一礼します。
本尊への合掌と一礼は、建物の外からでも良いとされています。

管理事務所がある場合は、管理人に挨拶をして、桶や柄杓など必要なものを借りておきましょう。

次は、お墓参りの全体の流れを見ていきましょう。

【6つの手順】お墓参りの流れ

では、お参りの流れを順番に解説していきます。
6つの手順に分けましたので、お墓参りに行く際には確認しておきましょう。

  1. 住職や管理事務所に挨拶をする
    お寺の住職や本尊、墓地の管理事務所がある場合は、お墓に行く前にまず挨拶をしましょう。

  2. お墓に挨拶をする
    お墓の前で合掌し、故人や先祖に挨拶をしましょう。

  3. お墓の掃除をする
    お墓の周りの落ち葉や雑草を取り除き、墓石の汚れなどを雑巾などできれいに落とします。
    墓石に苔などがこびりついている場合は、歯ブラシやタワシでこするときれいになりますが、強くこすりすぎると墓石を痛めますので注意が必要です。
    仕上げに乾いたタオルなどを使い、墓石に水気が残らないように拭き清めましょう。
    また、古くなった板塔婆があれば撤去し、墓地の決まりに従って廃棄します。

  4. お供え物をする
    お墓に花を飾り、お菓子や飲み物、故人の好きだったものなどをお供えします。
    お菓子や飲み物などのお供え物は直接墓石に置くのではなく、2つに折った半紙を敷いてからお供えしましょう。

  5. お参りをする
    一人ずつ、順番にお参りをして線香をあげます。
    お参りの時は、立ったままではなく、しゃがむなどして低い位置から、合掌をします。
    次に、数珠を手に掛けて、拝みます。

  6. 後片づけをする
    お供え物は置いたままにせず、持ち帰ります。
    地域によっては、お供え物をその場で食べるという習慣もあります。
    また、ゴミが出た場合は、必ず持ち帰りましょう。

お墓参りの流れは、この6つの手順です。
次は、黄檗宗で使われる数珠について解説していきます。

黄檗宗の数珠は「看経念珠(かんきんねんじゅ)」

黄檗宗で用いられる正式な数珠は「看経念珠(かんきんねんじゅ)」です。
同じ看経数珠でもいろいろな種類があり、108個の玉と2個の親玉がついたものが黄檗宗の看経念珠です。
金属の輪が入っている看経数珠は曹洞宗の数珠なので、間違えないように注意してください。
数珠を購入する際には、黄檗宗の看経念珠と指定すれば確実です。

次に、黄檗宗の看経念珠の持ち方を説明していきます。

看経念珠の持ち方

看経数珠を用いて合掌する時は、まず、一重の大きな輪をひねって二重にします。
次に、左手の親指と人差し指のあいだに掛け、房は下に垂らすようにします。
そして、数珠を両手ではさむようにして、合掌します。

ここまで、黄檗宗のお墓参りについて解説してきました。
次の章では、お墓参りの持ち物を紹介していきます。

お墓参り持ち物リスト

お墓参りで必要となるもの、あると便利なものをリストにしました。
使い方などの簡単な解説もありますので、お墓参りに行く時にはぜひ参考にしてください。

お供え物の花花立ての数に合わせて用意しましょう
植木ハサミ花立てに合わせて、花の茎の部分を切り揃えます
お供え物のお菓子や果物など故人の好物など、自由にお供えしてください。帰る時は、その場で食べるか持ち帰りましょう。
半紙お供え物は直接石に置かず、二つ折りにした半紙の上に置きましょう
線香墓石の数に合わせて、1束~2束ほど
ロウソクロウソクで線香に火をつけるのが正式な作法です
ライターまたはマッチロウソクに火をつけます
数珠黄檗宗では「看経念珠(かんきんねんじゅ)」を使います
ほうきお墓周りの枯葉などを掃除します
シャベルお墓周りの草を抜く際にあると便利です
タワシ墓石に付いた苔や、拭いても取れない汚れを落とします
雑巾墓石に付いた汚れを落とします
タオル掃除し終わった墓石を、水気が残らないよう拭き清めます
バケツタワシや雑巾をゆすぎます
ゴミ袋枯れた花や抜いた草など、ゴミはきちんと始末しましょう

筆者ピックアップ!黄檗宗のお寺

ここで、筆者オススメの黄檗宗のお寺を2つご紹介します。
それぞれのお寺の見どころなども挙げていますので、参拝の際にはぜひ参考にしてください。

黄檗山萬福寺(おうばくさんまんぷくじ)京都府宇治市

黄檗宗の本山としても紹介した「黄檗山萬福寺(おうばくさんまんぷくじ)」は、京都府宇治市にある、広大な敷地を有したお寺です。

萬福寺内の建物は左右対称に配置されており、さらに各建物は「卍(まんじ)くずし」と呼ばれるデザインや、円い窓、桃の実の形をした「桃符(とうふ)」という装飾など、他の宗派のお寺では見られない珍しい作りとなっています。

また、境内にある弥勒菩薩(みろくぼさつ)は、七福神の布袋さまの姿をしていることでも有名な仏像です。
萬福寺では2月と8月を除く毎月8日に、布袋さまの姿の弥勒菩薩にちなんだ「ほていまつり」が開催されています。
「ほていまつり」では手作り市やお茶席、音楽の演奏などか行われています。

他にも萬福寺では、3日前までに予約をすれば、隠元が中国から伝えた精進料理「普茶料理(ふちゃりょうり)」を味わうことができますよ。

霊泉山禅林寺(れいせんさんぜんりんじ)東京都三鷹市

東京都三鷹市にある霊泉山禅林寺(れいせんさんぜんりんじ)は、通称「禅林寺」と呼ばれています。
当初は、江戸時代の大火によって三鷹に移住させられた町民によって、浄土真宗本願寺派のお寺として建てられました。

しかしその後、台風で建物が倒壊し、寺院の再建の際に黄檗宗のお寺「禅林寺」となりました。

この禅林寺の敷地内には、文豪の太宰治や森鴎外のお墓があります。
太宰治の誕生日と遺体が発見された日が、くしくも同じ6月19日だったため、毎年6月19日は「桜桃忌(おうとうき)」と呼ばれ、太宰治を偲んで全国各地から禅林寺に毎年大勢のファンが集まります。

桜桃忌には禅林寺だけでなく、三鷹市内でも太宰ゆかりの地を巡るツアーなどのイベントも行われています。

また、森鴎外の命日7月9日は「鴎外忌(おうがいき)」と呼ばれ、こちらも桜桃忌同様、全国からファンが集まります。

まとめ

それでは、この記事で解説してきた内容を、最後にもう一度振り返ってみましょう。

  • 黄檗宗のお墓の形には決まりはない
  • 黄檗宗の墓石に刻む文字には決まりはない
  • 黄檗宗では「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」や円相(えんそう)を刻むこともある
  • 黄檗宗の開祖は隠元(いんげん)
  • 黄檗宗の本山は、京都府宇治市にある黄檗山萬福寺(おうばくさんまんぷくじ)
  • 黄檗宗の法要の回数は、他の宗派と同じ
  • 黄檗宗の法要では主に「般若心経(はんにゃしんぎょう)」や「観音経(かんのんきょう)」が読まれる
  • 黄檗宗の経典は唐音(とういん)で読まれる
  • 黄檗宗の法要や葬儀では「法式梵唄(ほうしきぼんばい)」が行われる
  • 黄檗宗では法要の後に板塔婆を立てて供養する
  • 黄檗宗で用いられる数珠は看経念珠(かんきんねんじゅ)

黄檗宗のお墓には、墓石の形や刻む文字についての決まりはありませんが、「南無釈迦牟尼仏」や円相が刻まれるという特徴があります。

お墓参りには黄檗宗独特の作法というものはありませんが、黄檗宗で使われる看経念珠を用いて、正しい方法で心をこめてお参りをしましょう。

監修者コメント

監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

黄檗宗は禅宗のひとつですが、中国では臨済宗の一派と考えられています。日本では中国風の寺院が多かったことで、臨済宗とは趣を異なる形で発展していきました。黄檗宗の開祖は、隠元です。あのインゲンマメを中国から日本にもたらしたことでも知られている僧侶です。隠元は、江戸時代4代将軍の家綱から、京都の宇治に土地を寄進され、中国の山の名前をとって黄檗山万福寺を本山とする黄檗宗を開きました。

禅宗系では、食もまた修行であるとされ「精進料理」が禅文化のひとつとして馴染みがありますが、隠元が伝えた普茶料理も精進料理です。「普茶」とは「普く(あまねく)大衆と茶を共にする」という意味。万福寺では普茶料理をいただくこともできます。