「お墓のお墓」とは、不要となった墓石(無縁墓)を受け入れて供養する場所のことで、主に寺院や石材関連業者が運営しています。「無縁塚」とも呼ばれます。

墓じまいされたお墓は、産業廃棄物として処理されるのが通例ですが、これまで魂のこもっていた墓石を廃棄物として扱われることに抵抗を覚える人もたくさんいます。こうした人たちの受け皿として「お墓のお墓」があります。墓じまいが増えている昨今、その需要は急激に伸びています。

この記事では、「お墓のお墓」がどのような場所なのか、その仕組みや時代背景、さらには墓じまいされた墓石がどのように扱われるのか、日本全国の「お墓のお墓」の情報も交えながら、詳しく解説してまいります。

「わがやのお墓をどうしたらいいだろか」と迷われている方もたくさんいることでしょう。この記事を読んでいただいて、自分たちのお墓をどのように扱えばいいのか考えるきっかけになれば幸いです。

「お墓のお墓」とは役目を終えた墓石を受け入れ・供養する場所

「お墓のお墓」とは、 墓じまいをして、本来の役目を終えた墓石を引き受けて供養してくれる場所のことです。通常不要になった石材は産業廃棄物処理業者を通じて再利用あるいは処分されます。しかし、墓石の中でも仏石(「●●家乃墓」や「南無阿弥陀仏」などと彫刻された石)には、仏さまやご先祖さまの魂が込められているとされ、粉砕処分することに抵抗を覚える人もいます。 このような人たちが「お墓のお墓」に仏石を移して、「無縁墓」として供養をしてもらうのです。

「お墓のお墓」は全国に存在する

「お墓のお墓」そのものは日本全国に存在します。お寺の境内や霊園の中など、あらゆる場所で見ることができます。ただし、それらの多くはその墓地や霊園の中で墓じまいされた墓石をまとめるのであって、外からの無縁墓(不要になった墓石のこと)を受け入れる場所は限られます 。

お墓のお墓が広く世間に知れ渡ったのは、広島県福山市にある宗教法人「不動院」です。テレビのニュースで取り上げられ、多くの人たちがその光景を驚きを持って目にしたことでしょう。不動院には約7万㎡の土地があり、そのうち1万2千㎡を墓石安置所として用いているとのことです。(詳しくはのちほどご紹介いたします)

お墓のお墓ができた背景

「お墓のお墓」ができたのには、どのような背景があるのでしょうか。そこには、社会情勢と、お墓に対しての人々の思いが交錯します。

墓じまい・無縁仏の増加といった社会情勢

墓じまいを増加させている一番の理由は、核家族化と少子高齢化です。これまでのお墓は、子孫が祖先のお墓を承継して、世代を超えて守っていくものでしたが。しかし現代の核家族社会では親子が別々に住むのが当たり前で、家族のつながりのシンボルとしてのお墓を守ること簡単ではありません。加えて、少子高齢化が進み、親の供養をする子の負担が増大しています。このような理由から、お墓を手放す人が増え、行き場のなくなったお墓のためのお墓が求められるようになったのです。

お墓のお墓を運営するお寺の住職の想い

「お墓のお墓」を運営するのは大変なことで、お寺側の想いがなければ成り立ちません。さまざまな事情があるとはいえ、これまで魂の宿っていたお墓を処分するというのはやはり悲しいものです。先祖に敬意を持ってほしく、その手助けをしたいという住職の想いがあるからこそ、外からの墓石の受け入れているのでしょう。

墓石の不法投棄問題

墓じまいが増えている昨今、多くの人がご先祖さまが祀られてきた墓石を粗末にできないと感じています。そんな中、不要となった墓石の不法投棄が社会問題になっており、世間を揺るがせたニュースは私たちの記憶に新しいところです。

淡路島の不法投棄問題

2008年、兵庫県淡路市の山中に膨大な数の不要となった墓石が不法投棄されているというニュースが駆け巡りました。墓石回収業者が有料で墓石を引き取り、そのまま山中に捨てていたのです。こうした事例はその後も他府県でも見られ、逮捕者も出ています。もちろんこれは悪徳業者によるものに違いないのですが、墓じまいの数が増えていることが社会全体に可視化され、そのことの是非を問うきっかけになったニュースです。

福岡市の護岸工事への墓石利用

福岡市では、護岸工事の資材に不要となった墓石を再利用したことが話題になっています。県の調査によれば、1964年頃に運び込まれたもので、擁壁が崩れないよう根固めとして用いられているとのこと。古くから用いられているものなので、「このままでよい」という声もあれば、「墓石を用いるなんてありえない」という声も上がっているようです。

こうしたニュースが話題に上るということは、それだけ私たちの中に、たとえ魂が抜かれたものだとしても、ご先祖さまのお墓を粗末にしていいのかという心理が働くことを意味します。「お墓のお墓」が求められている理由をこうしたところから見ることができるのではないでしょうか。

「お墓のお墓」は墓石の処分に抵抗がある方に選ばれている

老人の仲間5人

これまで長らく仏さまやご先祖さまの魂が込められていた墓石だからこそ、処分に抵抗がある方がたくさんいます。

これまでご先祖さまが守ってきたお墓を自分の手で処分するわけですから、「墓石の中でも、せめて魂が込められていた仏石だけでも処分せずに供養したい」と考えたくなるものです。

「お墓のお墓」は、そんな行き場のないお墓や、家族の思いの受け皿としての役割を果たしているのです。

一般的に撤去後の墓石は「廃棄物」となり「リサイクル」される

墓じまいされた墓石は、石材業者を通じて、産業廃棄物として処理されます。墓石以外にも、台石や巻石などの石材、土台に使われた栗石やバラスや残土、さらには基礎工事で固められたコンクリートやその中に敷き詰められた鉄筋など、これらはすべて分別して処理しなければなりません。

実際の現場では、墓じまいを行った石材業者がこうした不要物を持ち帰り、都道府県知事の認可を受けた産業廃棄物収集業者が回収し、中間処理業者に運ばれます。再生可能なものは採石されて、バラスや砂利石となって新たな建築資材として用いられます。
再生不可能なものは産業廃棄物として処理されます。

これまで大切に守ってきた墓石が、最終的には「廃棄物」となり「リサイクル」あるいは「処理」される、このことをを踏まえて墓石をどうしたいかご自身で考えを巡らせてみてはいかがでしょうか。

「お墓のお墓」に限らず、今ある墓石の今後について考えたいという方は「お墓・墓石の相談窓口」にご相談ください。また今あるお墓を撤去し、新しい形の供養をしたい方は「墓じまいとは?費用相場・手続きの流れを解説」の記事をご覧ください。

また、お墓のお墓についてより詳しく知りたい方は、このまま記事を読み進めてください。

全国にある「お墓のお墓」を紹介

中高年夫婦の相談を受ける終活カウンセラー

日本全国にある「お墓のお墓」。普段お参りに行くお寺や霊園の中にも、不要となった墓石をまとめている場所を見たことがあるのではないでしょうか。そうした場所もれっきとした「お墓のお墓」なのです。この章では、日本全国の代表的な「お墓のお墓」をご紹介いたします。

宗教法人「不動院」(広島県)

料金 1竿2,500円
問合せ先 084-976-8194

広島県福山市の不動院では約1万2千平方メートルという広大な敷地に無縁墓を安置しています。墓石の大きさに限らず1竿2,500円で預かってくれます。また、台石、巻石、ブロック、残土、崖石など、墓じまいをすることで出てしまう石材なども、1トンあたり6千円引き受けてくれます。その上、仏壇、墓標、卒塔婆などのお焚き上げにも応じてくれるとのことです。「お墓のお墓」が世に知れ渡ったのは、さまざまなメディアが不動院を取り上げたからで、まさに火付け役です。

滋賀県石材組合連合会の無縁塚(滋賀県)

問合せ先 https://ohminoishiku.jp/contact/contact.html

※または、滋賀県石材組合連合会の会員店にお問い合わせください。

滋賀県石材組合連合会では、無縁となった墓石を産業廃棄物として処分するのではなく、無縁塚で供養してくれます。塚には立派な宝篋印塔が立ち、定期的に寺院による供養もしてます。場所は大津市南小松の丁場(採石場)跡。かつて墓石を切り出していた場所で、無縁墓石を安置しています。運営から20年以上経過して、すでに数千基の仏石を受け入れているとのことです。

金蔵寺無縁塚(京都府)

問合せ先 075-331-0023

京都府と大阪府の県境近くの山中にある天台宗金蔵寺が管理する有縁無縁供養塔には、1万を超える無縁墓がきれいに並べられています。無縁塚の正面には礼拝ができるための場所も設けられており、お寺がきちんと供養、管理している姿が想像できます。

妙楽寺(愛知県)

問合せ先 0565-90-2853

妙楽寺は愛知県豊田市にある真宗大谷派の寺院です。愛知県内の墓石を中心に不要となった墓石を引き取り、その数は2万基にも及び、妙楽寺では毎月供養しているとのことです。現住職の父が石材店を営んでいたことから、約40年前に無縁墓を引き取り、初めの頃は年に10基程度だったものがいまでは年間400基に及ぶと言います。通常の形の墓石なら供養料は7千円から2万5千円です。

来見寺(茨城県)

茨城県北相馬郡利根町にある来見寺には、無縁塔があり、1300もの墓石があります。400数十年に及ぶお寺の歴史の中で、無縁墓となってしまった墓石を一箇所に集めて供養をしたものです。昨今の墓じまいの多さから無縁塚が注目されていますが、お墓の無縁化そのものは、昔からあったことがうかがい知れます。

無縁塚は全国にあるが案内が無い場合が多い

無縁塚は、日本全国にありますが、大々的に公に案内していないことの方が多いでしょう。理由はいくつか考えられます。

ひとつには、無縁塚を檀家や墓地の利用者向けに設けており、対外的に事業として無縁塚を運営しているところが少ないこと。

もうひとつは、個人が墓石を持ち込むことは珍しく、石材店を通して無縁塚を利用することがほとんどだからです。

日本全国に点在する無縁塚。では私たちが墓石を無縁塚を利用するのはどうすればよいのでしょうか。次章でその流れを詳しく解説いたします。

「お墓のお墓」を利用するまでの流れ5ステップ

不要になった墓石を「お墓のお墓」に安置するにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。その流れを解説いたします。

  1.  無縁塚の管理者に問い合わせる
  2. 石材店に相談する
  3. 遺骨の次なる納骨先を決める
  4. 墓じまいの許可を得る
  5. 墓石を撤去し「お墓のお墓」へ移動させる

①無縁塚の管理者に問い合わせる

まずは無縁塚の管理者に連絡を取って、不要となった墓石を引き取ってもらえるかどうかを問い合わせましょう。その際に、どのように搬入すればいいのか、出張引き取りに応じてもらえるのか、費用がどれくらいかかるのかなどを確認します。

②石材店に相談する

無縁塚に墓石を安置する場合、自分たちで搬入することはほとんどありません。通常は、墓じまい工事を終えたあと石材業者が無縁塚まで石を運びます。ですから、無縁塚への安置を希望するのであれば、石材店に相談しましょう。もしも希望の無縁塚があれば、墓石をそこまで運搬してくれるかを確認します。特定の場所を希望しているのでなければ、石材店が知っている無縁塚に安置してもらいましょう。

③遺骨の次なる納骨先を決める

墓じまい工事や無縁塚の手配と合わせて、遺骨の次なる納骨先もきめなければなりません。次のような選択肢が挙げられます。

  • 新しいお墓
    新しくお墓を建てて、その中に遺骨を埋葬します。遠方にある先祖代々の墓を処分して、自分たちが今住んでいる場所の近くに新たなお墓を構える、というケースが多いようです。
  • 納骨堂
    納骨堂は、寺院や霊園などで、建物の中に設けられた納骨施設です。仏壇型、ロッカー型、自動搬送型などのさまざまな納骨堂があります。
  • 樹木葬
    樹木葬とは、植栽や草花などを礼拝の対象にした新たなお墓の形です。埋葬を土の中にじかにするケースもあれば、カロートの中に納めるケースもあります。大自然の山の中で土に還るよう埋葬される「里山型」と、都市型霊園の中の樹木葬専用区画、あるいは専用墓地として利用される「霊園型」に分けられます。

④墓じまいの許可を得る

石材店と新たな納骨先の手配が完了したら、墓じまい工事のために、2つの場所から許可を得なければなりません。霊園と役所です。霊園には墓石撤去工事と墓地の返還の申請をし、役所には遺骨を移すために改葬許可を申請します。

  • 霊園への墓石撤去と墓地返還の申請
    ほとんどの霊園では、墓じまいをしたい旨を伝え、必要書類に内容を記入するだけで受理してもらえます。また、改葬許可証を得るためには改葬元による「納骨証明書」が必要なので、あわせて発行してもらいましょう。

    気をつけなければならないのは、お墓が寺院の境内にあり、離檀(りだん:檀家関係を解消すること)をともなうときです。離檀しなければならない理由をお寺の住職に話さなければなりませんし、場合によっては離檀料を納めなければならないこともあります。

  • 役所への改葬許可申請
    遺骨を別の場所に移すことを「改葬」と呼び、改葬元の役所が発行した「改葬許可証」を改葬先の寺院や霊園に納めなければなりません。記入しなければならない情報は、申請者の情報、新旧墓地の情報、遺骨の情報(故人名、死亡年月日、本籍地など)、改装元の管理者の証明などです。

墓じまいの必要書類についてはこちらの記事に詳しくまとめています。「もっと知りたい!」という方はぜひとも読んでみてください。

⑤墓石を撤去し「お墓のお墓」へ移動させる

霊園や行政から許可を得たら、いよいよ墓じまい、そして墓石を「お墓のお墓」に安置します。

通常、墓じまい工事で解体撤去された墓石は、専門処理業者にて処分してもらいますが、無縁塚に安置したい墓石だけは、処理業者に引き渡すことなく無縁塚に運んで安置してもらいます。無縁塚が現場の近くにあれば、解体後すぐに移動できますし、もしも遠方にあるのであれば、日を改めて移動します。家族の立会いが必要かどうかは状況によって変わります。

墓石を処分したくない方へ「墓石の再利用」という選択肢

ポイントを示す女性

墓じまいされた墓石は、都道県知事から認可を受けた運搬業者や中間処理業者を通じて処分されます。再生可能なものは、再生砕石にして土木や建築の資材として再利用されます。

このように処分、あるいは資材として再利用されることに違和感がある人が、「お墓のお墓」への安置を希望するのですが、それ以外にも不要となった墓石を用いて小さなお地蔵様や、モニュメントのようなものを作るケースも見られます。

具体的に商品化しているものの一例として、墓石のメモリアルプレートがあります。墓じまいや墓石の回収、運搬、墓石のリサイクル工事の専門業者・株式会社美匠(奈良県)では、墓じまいの墓石作成する記念品「メモリアルプレート「証」」を手がけています。プレートの表面に想い想いのことばを彫刻し、硬質アクリルでできたスタンドに入れて立てかけられるので、自宅の中できれいに飾っておくことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「お墓のお墓」がここまで注目を集めているのは、それだけ墓じまいが多いことと、わたしたちが墓石を粗末に出来ないと考える、その両方を表しているように思えます。自分たちのお墓をどのように扱えば、納得いく供養ができるか。この記事を読んでくださり、じっくりと考えていただければと思います。

では最後に、この記事のポイントをまとめます。

    • お墓のお墓とは
      「お墓のお墓」とは、不要のなった墓石を受け入れ供養をしてくれる場所のことです。
    • お墓のお墓ができた背景
      核家族化や少子高齢化などで墓じまいが増えたこと。それに加えて、墓石を粉砕処分することに抵抗を覚える人が「お墓のお墓」を利用します。
    • お墓のお墓(無縁塚)を利用する流れ
      • 無縁塚の管理者に問い合わせる(又は石材店に相談をする)
      • 遺骨の次なる納骨先を決める
      • 墓石を撤去する許可を得る
      • 墓じまい工事を終え、仏石を「お墓のお墓」へ移動させる
    • ~メッセージ~
      「お墓」はご先祖様に想いを馳せることができ、私たちがご先祖様と繋がりを感じることができる、大切な存在です。
      今一度、「今あるお墓をそのままにして大丈夫か?」「本当にお墓は撤去すべきなのか?」ということを考えてみてください。


監修者コメント


監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

墓じまいなどでお墓を整理してしまった後、これまで使用していた墓石は「産業廃棄物」として扱われ、解体・撤去後は砕石されます。こうして細かくなった墓石は、舗装道路の下層路盤材等に利用されるなど、リサイクルされます。そうはいっても、墓石は高価で、中には希少価値の高い石材もありますから「もったいない」と思うのは当然です。「中古品で売ることはできるのか」という相談を受けたこともありますが、実際に使用されていた墓石を中古品で売ったり買ったりしたという例は聞いたことがありません。「魂が宿っている」とういう考え方もあり、他人が使用したものを買い取って使う性格のものではないからでしょう。
古い墓石を一カ所に集めて供養するスタイルもありますが、慣習の域を超えてしまうと、社会問題となりかねませんので、あまり積極的にお勧めはしていません。どうしても残していきたい場合は、墓石の一部を使って珠数や仏像など別の形に加工してみてはいかがでしょうか。