8月のお盆のあとにすぐにやってくる秋のお彼岸。ともに死者や祖先を供養する行事であることに変わりはないのですが、季節が変わることでお供えものも異なってきます。お盆とお彼岸の違いに目を向けながら、それぞれのお供えものについて考えてみます。

【ここが違う!】お盆と秋の彼岸の意味

ポイントを示す女性

まずはお盆とお彼岸の違いについておさらいしておきましょう。 

お盆は、8月13日から15日に行われる仏教行事です。古代インドの盂蘭盆会(うらぼんえ)や中国の中元節 (ちゅうげんせつ:道教に由来する年中行事で、死者の罪が許される日とされている)などが融合して日本に定着しました。

この期間に祖先がわが家に帰ってくるとされ、多くの人が故郷に帰省して家族や親戚と過ごします。法律が定める休日ではないので官公庁にはお盆休みはありませんが、多くの民間企業ではお盆の3日間を挟んで大型連休にしています。 迎え火や送り火、お墓参り、お坊さんの棚経、盆踊りなど、お盆行事の多くは、死者や先祖供養のために行われています。

一方のお彼岸は、毎年春と秋の年2回行われる仏教行事です。それぞれ春分と秋分を彼岸の中日として、前後3日間、合計1週間をお彼岸とします。 春彼岸には五穀豊穣をご先祖さまに祈願し、秋彼岸には農作物の収穫をご先祖さまとともに喜びました。

ちなみに、2020年の秋のお彼岸は、9月19日(土)が入り、22日(火)が中日、25日(金)が明けです。

お彼岸は、お盆と異なり日本にしかない行事です。彼岸の中日は祖先に感謝をし、残りの6日間は「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる6つの修行をして悟りを目指す期間としています。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言われることばですが、春分と秋分は昼夜の時間が同じになる、つまり太陽が真東から上り真西に沈む日です。古くから人々は真西に沈む太陽に自分たちの幸せを祈ってきました。また、春の訪れや秋の収穫を喜ぶ、いわば季節の区切りの行事としての意味合いもあります。

  お盆のお供えもの

お盆飾り

お盆のお供えものは盛大に行われます。これには「施餓鬼(せがき)」の意味が強くあります。

施餓鬼とは読んで字の通り「餓鬼に(飲食を)施す」という意味で、お盆は先祖だけでなく餓鬼の霊に対しても供養も行うのです。

仏教では、餓鬼道(がきどう)は飢えと渇きに苦しむ世界で、どんな食べ物や飲み物も手に取るだけで火に変わってしまうと説きます。そんな餓鬼たちに飲食をお供えすることで、その善行が巡り巡ってご先祖さまの供養につながるのだと考えられています。こうした物語を背景とした上で、夏は豊かに実った野菜や果物がたくさん採れる季節です。お盆の風習としてさまざまな食べ物が意味を持ってお供えされます。

迎え団子と送り団子

お盆には、13日の迎え盆に「迎え団子」を、15日や16日の送り盆に「送り団子」を供えます。迎え団子はタレやあんこなどをかけ、送り団子は何もつけない白団子が一般的です。個数は地域によってさまざまで、仏教の六道輪廻にちなんだ6個、十三仏信仰と絡めた13個、中には20個という地域もあるようです。 

精進料理

仏壇や精霊棚にお供えするための小さなお膳に精進料理を供えます。このお膳のことを仏膳、霊供膳、盆膳などと呼びます。仏膳の器は全部で5つあり、ごはん、汁物、煮物、和え物、漬物などを並べます。精進料理なので肉や野菜は供えません。

キュウリとナス

夏野菜の代表のキュウリとナスですが、それぞれに割り箸を刺して足を作り、キュウリを馬、ナスを牛と見立てます。ご先祖様は馬に乗って早くわが家にやってきて、牛に乗ってゆっくりとあちらの世界に帰っていくと信じられています。

素麺

夏の食べ物の代表格である素麺もお盆のお供えには欠かせません。地域によっては、精霊棚の四方を囲むしめ縄から素麺を吊るすところや、キュウリやナスに素麺を乗せ、馬や牛の鞍に見立てるところもあるようです。

昆布などの乾物

昆布は「喜ぶ」から転じた縁起物として正月のおせち料理でも用いられますが、お盆のお供えものにも並びます。地域によっては素麺のように精霊棚のしめ縄に括り付けるところもあるようです。暑い季節のため、傷まない乾物もお供えものに選ばれてきたのだと思われます。 

季節の野菜や果物やお菓子など、故人の好物

その他、季節の旬の野菜や果物などを自由に供えます。スイカや桃、瓜や芋など、故人や先祖が喜びそうなものを自由に供えてあげましょう。

水の子

水の子とは、洗い米と夏野菜を小さく刻んだものを混ぜたもので、蓮の葉の上に盛って畳や床の上にお供えします。餓鬼へのお供え物であるため、「餓鬼飯」と呼ぶ地域あります。

秋の彼岸のお供えもの

お彼岸のおはぎと数珠

秋のお彼岸のお供え物と言えばなんといっても「おはぎ」です。改めておさらいですが、おはぎとは「もち米」と「うるち米」を混ぜて炊いたものを丸めて、餡をまぶしたものです。

しかし、同じ食べ物ですが、春にお供えする場合は「ぼたもち」と呼びます。

お彼岸は年に2回ありますが、それぞれの季節の花に見立てて、萩の花が咲く秋は「おはぎ」、牡丹の花が咲く春は「ぼたもち」と呼ぶのです。

 

おはぎとぼたもちのもう一つの違いは餡の種類です。あずきの収穫期である秋のおはぎはつぶあんです。とれたてのあずきのやわらかい皮も一緒につぶして使います。一方、冬を越してしまったあずきは固くなってしまうので、春のぼたもちには皮を取り除いたこしあんを用います。

 

また、あずきの赤は魔除けや長寿など縁起物の色として崇められてきました。お祝いの席で出される赤飯も赤いですし、神社やお寺で赤い鳥居や建物を見たことある人も多いはず。その上、お彼岸の場合は西日の赤を想起させますから、おはぎは死者や生者の幸せを願うお彼岸に最適なお供え物だったのかもしれません。

 

贈答品のお供えもので抑えておく3つのポイント

おうちの方が仏壇やお墓や精霊棚でお供えするのとは別に、親戚やお世話になった方にお盆やお彼岸のお供え物を贈る場合、どのようなものが喜ばれるのでしょうか。季節にあったものや故人が好きだったものももちろんですが、受け取る側が困らないものを選ぶよう配慮しましょう。 

では、どのようなものが困らないのか、そのポイントは、「日持ちがする」「小分けにできる」「あとに残らない」の3点です。焼き菓子やゼリー、飲み物の詰め合わせなどが好まれます。また、食べ物ではありませんが、進物用のお線香もよく選ばれています。

まとめ

お供えものは、死者と生者をつなぐだけでなく、贈る側と贈られる側をもつなぐものです。お供え物のお下がりを分けて食べることを「共同飲食」といい、同じものを同じ場所で食べることで人と人とのつながりを再確認できます。死者とのつながりは自分自身のルーツを確かめることにほかなりませんし、そこに集う人同士とつながることで、よりこの世界を行きやすくなる。死者をめぐる行事の中に、人類の智慧が隠されています。

さて、お供え物は分けるのが基本ですが、分けるというのは、いまの言葉でいうと「シェア」のことです。神仏にささげられたものをシェアしあうことで、お供えものに込められた幸せへの願いが、社会全体に広がるのかもしれません。

コラム【お盆でもおはぎを食べる人が多い】 

あまり知られていませんが、おはぎは、夏は「夜船」、冬は「北窓」とも呼ばれています。、おはぎが一年を通して人々に食されてきたことがわかります。

おはぎは北関東や九州地方を中心にお盆でも供えらます。お盆時期のスーパーにはおはぎが並びますし、実際にライフドットが行ったアンケート調査でも、約7割の人がおはぎを食べると答えています。


監修者コメント


監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

日本のお盆の習俗は、先祖供養という意味だけではなく、イキミタマ(生見玉)といわれる親や長老をねぎらう感謝の意味もあると言われています。盆中には生きている家中の親や年長者に対して、子供達が魚を取って届けるという習俗です。「いきみたまには鍋を貸すだけ」という俗諺もあるように、昔は食料はすべて子供達が持ち寄り、実家では鍋だけを借りて親や年長者のためにお膳を整え、同じものを食べてお盆を迎えられたことをお祝いする習俗がありました。盆の食事にはよく魚が登場しますが文献では、鎌倉時代の「明月記」にお盆に魚を食べる様子が記されています。盆魚の中でも背開きのサバを塩漬けにしてから干したものを盆鯖といいます。山間部においても海水魚が多く食されているのは興味深いところ。時代を経て、七月の中元の贈り物とイキミタマの習俗が融合したと言われています。