墓石の名称~部材のひとつひとつの呼び方と意味を分かりやすく解説~

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墓石イメージ

墓石は、さまざまな部位が組み合わさって出来上がります。
手を合わす石塔だけでなく、墓誌や羽目や門柱など、聞いたことのないものばかりでしょう。

しかし、墓石の部位一つ一つにはすべて意味があり想いが込められ、故人様の冥福を祈るために墓石は立てられます。

この記事ではそうした墓石の各部位の名称を1つずつ説明しながら、墓石がなぜ、どのように建てられるのかを解説いたします。

墓石を建てる目的

墓石を建てる目的は、2つあると考えます。
1つは、死者の冥福を祈るため。
もう1つは、生者の幸福を祈るためです。

この2つの目的について、言葉を噛み砕いて説明します。

死者の冥福を祈るためのお墓

日本では、古くから遺体や遺骨の埋葬地に石を置く習慣がありました。

これには、獣が土を掘り返さないようにという衛生的な理由と、死者が甦らないようにという観念的な理由があったように思われます。

そして、森羅万象、つまりこの世のあらゆる自然物に神が宿ると考えた日本人は、埋葬地に置かれた石にも神性や聖性を感じたのでしょう。

石工は石を叩き、形を整え、こうしてお墓は現在の形へと長い時間をかけて発展してきたのです。
土に眠る死者の上に置かれた石は、百年も千年もその場に生き続けるでしょう。

人の一生よりもはるか長い時間、存在し続けられる石だからこそ、私たちは死者の冥福を託すことができるのです。
お墓が石である理由はきっとここにあるでしょう。

生者の幸福を祈るためのお墓

さて、お墓参りする時、みなさんは墓石に向かって何を語りかけますか。
「亡くなったおじいちゃんが天国に行けますように」と、死者の冥福を祈ることでしょう。

しかし中には、「息子が野球でホームラン打ったよ」というような近況報告をする人もいるのではないでしょうか。

あるいは、「息子がホームラン打てるように、おじいちゃんも祈っていてね」と、近況報告は同意を求めるようになり、やがては、「息子がホームラン打てますように!」と、神様や仏様にするように、祈りの対象となることもしばしばです。

供花が供えられた墓前で合わせている両手

日本には、とてもユニークな死生観があります。
死者を49日でホトケにし、33年でカミにするのです。

亡くなったおじいちゃんは、わが家の祖霊として私たちを見守ってくれて、やがては氏神となって村全体の古い先祖へとなっていきます。
こうした共通の死後観、あの世観はいまでも根強く私たちの中で残っています。

お墓は「死者=生者」を確認させてくれる場所

お墓に行くと、亡くなったご先祖様に会える、と言います。
でも、もっと踏み込むならば、お墓では自分たちの中に先祖がいるということを実感させてくれます。

自分たちの幸せは、ご先祖様の幸せで、死者の冥福は私たちの幸せなのです。
私たちが先祖関係の集約として今ここにいる、そして先祖は私たちがいるからその存在があり続ける。

こうしたお互いの相互関係を確認させてくれる場所が、お墓なのです。

また、お墓参りにはマナーもあります。
詳しくは「お墓参りにはいつ行くの?疑問を解消する葬祭マナー」で解説しているので合わせて読んでいただけると幸いです。

お墓を構成する部位の名称と意味

お墓はさまざまな部位で構成されています。
それぞれの名前と用途だけでなく、そこに込められた意味や想いを解説します。

墓石パーツ説明

竿石

竿石(さおいし)とは、お墓のもっとも中心となる部位のことです。
「軸石」や「仏石」などとも呼ばれ、正面に「〇〇家乃墓」などと彫刻します。

この竿石にお性根が入るとされているので、お墓の中でも最も大切な場所だと言ってもよいでしょう。

竿石は、お性根が入る大切な場所

みなさんは、お墓参りに行くときにどこを見て手を合わせますか?

お墓の中に遺骨があるからと言って、遺骨に向かって手を合わすのかというと、実はそうではなく、この竿石に向かって手を合わせ、語りかけていませんか?
お墓におけるお性根は、竿石に込められています。

「お性根」と呼ばれる概念はとても難しいのですが、「魂」みたいなものだと思えばよいでしょう。
仏様の魂や、死者や先祖の魂はこの竿石に込められているのです。

竿石の大きさが石塔のボリュームを決める

従来の和墓の場合、竿石の大きさで、石塔全体のボリュームが決まります。
これは特に、お墓の世界にルールや規格があるわけではありません。

また、お墓は地域によって形状が大きく異なるので、日本全国で統一のものがあるわけでもありません。
その地域によって伝統的に建てられたお墓の寸法は、知らず知らずのうちに私たちの美意識になじむように決められてきたのでしょう。

1つの例として、「神戸型」と呼ばれるお墓の形があります。
神戸型では「9寸二重台」「尺角(=10寸)三重台」というように呼ばれます。

9寸二重台は、9寸幅の竿石に台石が2つ。
尺角三重台は、1尺(=10寸)幅の竿石に台石が3つ、の意味です。
9寸(約27cm)の竿石の場合、高さは大体2,3尺から2.4尺(約69㎝から72cm)。

上台は幅が1.4尺(約42cm)で高さが1.2尺(約36cm)。
下台は幅が2.1尺(約63cm)で高さが1.1尺(約33cm)。
このように、暗黙の内に寸法の黄金比のようなものがあります。

お墓の形や地域によってさまざまですが、どの地域でも、竿石の幅はお墓の大きさや予算を決める上で大きな指針になります。

竿石の彫刻

竿石にはさまざまな文字を刻みます。

竿石に刻む文字について

  • 家名や宗派の言葉
    竿石の正面には「〇〇家之墓」などと彫刻します。
    その他、それぞれの宗派で唱えられている言葉、たとえば真言宗であれば「南無大遍照金剛」、浄土真宗であれば「南無阿弥陀仏」、日蓮宗であれば「南無妙法蓮華経」などを彫刻することもあります。
  • 建立年月日と建立者名
    裏面や側面には建立の年月日や建立者の名前を彫刻します。
    場合によっては上台に彫刻することもあるでしょう。
  • 戒名
    戒名を彫刻する場合は竿石の側面に彫刻します。
    もともとは昔のお墓は1人につき1つの石塔だったので、竿石正面に戒名を刻みました。

    時代が江戸時代になり、イエ制度が普及し夫婦関係が重視されるようになってからは、竿石正面に夫婦の戒名を並べて彫刻するようになりました。

    そして、『墓埋法』が制定されてからは、個人墓や夫婦墓ではなく、1つの石塔で先祖代々を祀る代々墓が主流となり、戒名は竿石側面に彫刻するようになったのです。

上蓮華

上蓮華(うえれんげ)とは、竿石と上台の間に挟み込む飾り石で、竿石を乗せるための蓮華彫刻が施された部材です。
泥池に咲く蓮の花は、仏教の中でも特に大切にされてきた花で、経典や仏教美術など、さまざまな意匠がなされています。

仏像や仏画を見ても、仏様は蓮の花の上に立つ、あるいは座禅する形で描かれます。
位牌も、札板の下には必ず蓮が施されています。
お墓においても、本尊である竿石を蓮の花の上に載せることは大変な功徳とされています。

また、蓮華彫刻は、まさに石工の腕が試される仕事です。
途方もない手間をかけて作り上げられた”すじ蓮華”などは、その仕上がりがほれぼれするほどで、ご本尊を乗せるに値するでしょう。

ただし、費用がどうしもてかかってしまうので、蓮華のないお墓の方が多いのが実情です。

下蓮華

下蓮華(したれんげ)とは、上蓮華と対となるものです。
上蓮華のみと、上下蓮華と選べますが、上下蓮華の方が費用がかかる分、美しいでしょう。
下蓮華は上台の天面を加工して作ります。

スリン(座布団)

スリンとは、竿石と上台の間に挟み込む飾り石です。
蓮華台を簡略化したものだと言われます。
関西地方では「座布団」と呼ばれ、まさに仏様をお乗せする座布団の役割を果たします。

上台

上台(うわだい)とは、台石の中で一番上部に据えられる石のことです。
下蓮華の項目でも触れましたが、上台の天面を加工することで、さまざまなデザインができます。
上蓮華に対応してなされる”下蓮華”では蓮の花ビラ状に加工します。

その他、亀のおなかのようになめらかなこう配をつけた”亀腹加工”や、傾斜を付けた水が流れるような”水垂加工”などがあります。

中台

中台(なかだい)とは、台石の中で真ん中に据えられる石のことです。
中台を「下台」と呼ぶ地域もあります。

芝台(しばだい)

芝台とは、台石の中で一番下部に据えられる石のことです。
この芝台を「下台」と呼ぶ地域もあります。
また、1つの石で作るものに対し、4つの石を組み合わせて作る場合は「四つ石」などとも呼ばれます。

カロート

カロートとは、遺骨を納める場所のことです。
カロートにもいろいろな種類があります。
地上に作られるカロートや、地下に埋蔵されるカロートなど、さまざまです。

カロートタイプ

また、中を棚状にしたものもあれば、底面を土にして自然に還るつくりのものもあります。
九州などにいくと、このカロートがどんどん大きくなり、やがては沖縄の亀甲墓のように、人の住む住宅までに大きくなります。
これは先祖の家であるお墓を大切に考えている証でしょう。

儒教で見られる遺骨に対しての信仰など、大陸文化の影響を強く受けている名残だと思われます。

水鉢

水鉢(みずばち)とは、水を供えておくための石です。
天面にくぼみ(「水溜」と呼ばれる)を作っておき、お供えの水や雨水が常に溜まるようにしておきます。

死者がのどの渇きに苦しみために作られたものだと思われます。
この水溜は、江戸時代などの古いお墓でも、台石の天面に作られているものもあります。

また、地域によってはこの水鉢がカロートへの繰り穴を塞ぐ役目も果たしています。
ずっと水を溜めておくために汚れやすく、専用のステンレスのおとしも販売されています。

花立

花立(はなたて)とは、花を供えるための石で、左右一対で置かれます。
花立の穴の中も水が溜まりやすいため、ステンレスのおとしが販売されているだけでなく、最近では横穴を開けて、水が外に流れ出るよう工夫されています。

香炉

香炉(こうろ)とは、お線香を供えるための石です。
香炉にもさまざまな種類があり、丸型の香炉、屋根付き香炉などがあります。
また、宗派によってはお線香を寝かすので、寝かせてお供えができるステンレスの皿も販売されています。

拝石

拝石(はいせき・おがみいし)は地域によって用途が異なります。
関東地方などではこの拝石がカロートのふたの役目を果たします。納骨の先には拝石を動かします。
関西地方では石塔の前に置かれる敷石である踏み石のことを指し、この上に立ってお参りをします。

卒塔婆立

卒塔婆立て(そとばたて)とは、卒塔婆を建てるための部材です。
石で作られたものやステンレス製の既製品などがあります。

墓誌

墓誌(ぼし)とは、先祖や死者の戒名を刻むための板石です。
「霊標」「戒名板」「法名碑」などとも呼ばれます。
本来、戒名は石塔正面に刻んでいました。

時代が下るに連れて、1つの石塔が代々墓の役目を果たすようになり、正面には家名などを彫刻し、そのため個別の戒名は竿石の側面に彫刻するようになったのです。

しかし、竿石だけではスペースに限りがあるために、石塔の脇に墓誌が置かれるようになりました。
霊標には、ひとりひとりの戒名、生前の名前、命日、年齢などを彫ります。

墓誌の大きさは施主の希望によってさまざまです。
表面と裏面で20名前後は彫刻が可能でしょう。

羽目

羽目(はめ)とは、墓域を囲む石のことです。「外柵」や「玉垣」などとも呼ばれます。
羽目にはいろいろなデザインがあり、どのような形にするかで墓域全体の印象ががらっと変わります。

最も多いのは、角に擬宝珠(ぎぼし)と呼ばれる柱を立てて、ゆるやかに湾曲させた延石を据えます。

また、さらに和風の趣きを表現したい場合には、小柱と呼ばれる柱を立てて、まるで神社の玉垣のように設えることもかのです。
このあたりは、石材店の腕の見せ所で、石塔やまわりのお墓との調和を考えてデザインしてもらうとよいでしょう。

根石

根石(ねいし)とは、墓域を囲む石ので、土台となる部分です。「巻石」や「腰石」などとも呼ばれます。
外柵は(墓域を囲む石の総称)は、この根石と羽目の組み合わせででき上がります。
基礎部分が根石。その上に乗るのが羽目です。

予算がない人や、シンプルなお墓を希望する人は、羽目を省きますが、根石は絶対に必要な部材です。
墓域を囲むということで、ひとつにはお隣の墓域との境界の役目を果たします。

もうひとつは、この根石の高さがそのまま盛土の高さとなり、この上に石塔が乗ります。
地下納骨の場合は、この根石の内側に採石や土が埋められます。
地上納骨の場合は、この根石の内側にカロートが作られるのです。

踏石

踏石(ふみいし)とは、お参りにする時に人が立つための敷石です。「敷石」や「拝石」などとも呼ばれます。

長方形に切り取られて板石の表面を本磨きにしたものや、一部を浮き上がらせて叩き加工にしたものなどがあります。
最近は、全面石貼りの「フローリングタイプ」が人気です。

見た目がきれいで、掃除がしやすい反面、雨の日など、石が濡れているとすべりやすいので気をつけましょう。

門柱

門柱(もんちゅう)とは、墓域の前面の左右に置かれる柱石のことです。「親柱」などとも呼ばれます。
一般の住宅でも、玄関の手前に門柱を設置します。

来客者を迎える大切な役目を果たします。
お墓の門柱の場合は、正面に家名や家紋を彫刻します。
また、門柱の上に灯籠を乗せることもあります。

灯籠

灯篭(とうろう)とは、そもそもは明かりを灯すための照明器具です。

寺院や神社などの参道に置かれる立灯篭、寺院の本堂で天井から吊るされる吊灯籠、日本庭園で置かれて水面を照らす雪見灯籠、墓前に置く墓前灯籠などがあります。

火は神聖なもので、暗闇を照らし、邪気を払うことから、お墓の前にも灯篭が置かれるようになりました。

また、灯篭の灯りは独立したものであり、お墓のローソクを灯すための火立て〈風防灯)とは別物と考えられています。風防灯は石塔を照らすもの。墓前灯篭は墓域全体を照らすものと考えればよいでしょう。

物置石

物置石(ものおきいし)とは、手荷物を置くための石です。
円柱形に切り、天面だけを磨き加工にしたもの。
扉を付けて石の内部が収納スペースになったものなどがあります。

墓石の選び方については、「墓石の価格・種類・デザインや選び方がわかる!後悔しない購入方法」でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

どこまで建てるべき?一般的なお墓に使われる部分

ここに挙げたものすべてを墓域内に据え付けようとすると、広大な土地と費用が必要となります。
お墓はあくまでも手を合わせられればいいのです。
そういう意味では、石塔だけがあれば立派なお墓です。

ただし、納骨のためにはカロートがいりますし、隣との境界のためには根石や羽目が必要です。
最近の都心部では1㎡(1m角)よりももっと狭い墓地も当たり前になってきました。
その場合は、石塔だけで十分なのかもしれません。

まとめ

それでは最後にこの記事のおさらいとしてまとめました。

この記事で解ったこと

  • 墓石は死者の冥福を祈り、生者の幸福を祈るために建てる
  • ”竿石”には魂が込められ、家名や戒名や建立者名を彫刻する
  • 仏様を乗せるものとして、”上下蓮華”や”スリン”がある
  • 台石として”上台”や”下台”や”芝台”がある
  • ”カロート”は遺骨を納めるとても大切な場所
  • 石塔の前には水のお供えの”水鉢”、花を供える”花立”、線香を焚く”香炉”がある
  • カロートのふたは、関東では”拝石”と呼ばれる板があり、関西では”水鉢”がその役目を果たす
  • 塔婆を立てるための”卒塔婆立”はステンレス製や石製がある
  • 墓域を囲む外柵は”根石”(”巻石”とも呼ばれる)の上に"羽目”(”玉垣”とも呼ばれる)を置いて、さまざまなデザインがある
  • 墓域の前面は、”踏石”を置く
  • 前面の両脇には”灯篭”や”門柱”を置く

一口にお墓・霊園と言っても、豊かな自然を背景にしたり、規模や宗派だけではない様々な特色があります。
お住まいの地域・ご実家の近隣などで、どんな霊園があるかご覧になってはいかがでしょうか?

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