秋分の日は「お墓参りの日」理由と疑問を解説!

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墓前で手を合わせる人

今年(2020年)の秋分の日は9月22日ですが、秋分の日が「お墓参りの日」だということをご存知ですか? 全国1100を超える石材店や石材関連業者で組織する日本石材産業協会が始めた取り組みで、2013年に日本記念日協会に申請し、制定されました。「国民の祝日に関する法律」では、秋分の日の趣旨を「祖先をうやまい、亡くなった人をしのぶ」こととしていることから、同会では秋分の日とお墓参りを結びつけ、普及活動を行っています。

この記事の目次

  1. 秋のお彼岸でお墓参りをする理由
  2. お墓参りの時に持っていくと良いもの
  3. よくあるお墓参りの疑問
  4. まとめ
  5. 監修者コメント

秋のお彼岸でお墓参りをする理由

お彼岸と川

お墓参りといえばまずお盆が思い浮かびますが、暑さがやわらぎ、秋の気配を感じる中で行うお彼岸のお墓参りもまた気持ちがよいものです。しかし、なぜお盆のわずか1ヶ月後に、お墓参りのための行事が設けられているのでしょうか。

日本独自の仏教行事 悟りの境地にたどりつくためのお彼岸

お彼岸についての基本を押さえておきましょう。

彼岸は一年を通して重要な仏教行事のひとつで、日本全国のお寺では彼岸法要が行われます。しかし、インドや中国などでは彼岸はなく、日本だけの独自の風習です。

「彼岸」とは向こう岸の意味。つまり、煩悩に苦しむ私たちが住むこちらの世界に対し、迷いや苦しみのない向こう岸を目指すことが仏教的な彼岸の意味です。お彼岸は7日間ありますが、そのうちの6日間で「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる6つの修行を行い、彼岸の中日にご先祖様に感謝する日としています。

彼岸は日願 西に沈む夕日に想いを馳せる

浄土系の宗派ではことさら彼岸を重んじます。浄土思想では、阿弥陀如来が作った極楽浄土への往生を願い、この浄土が西の彼方にあるとされているからです。真っ赤に染まる夕日が真西に沈んでいくその光景に、人々はこの世の苦しみを憂い、死後の往生を願ってきました。まさに「日に願う=彼岸」なのです。

「観無量寿経」と呼ばれるお経では、極楽浄土に行くための16の方法が書かれていますが、その最初に説かれているのが、真西に沈む太陽を見つめる「日想観」です。平安時代のころから行われているものとされていますが、四天王寺(大阪市)で春と秋に行われる日想観には、いまでも多くの参拝者を集まります。

季節の区切りにご先祖さまに感謝する

彼岸は、仏教の立場からすると、先祖供養よりも悟りに至るための修行期間のようなものなのですが、しかし庶民にとってはやはり先祖供養の日として行われています。「暑さ寒さも彼岸まで」ということばがあるように、昼と夜の時間が同じになる彼岸を境に、夏は秋へと移ろい、私たちの生活も新しい季節へと変化させていきます。季節の区切りにお墓参りをするということは、それだけわたしたち日本人が死者や祖先を親しく感じながら、感謝と祈りの念をいだいて日々を送っていることを表しているように思います。また、日本では秋分は稲刈りの季節でもあります。秋のお彼岸ではことさらご先祖さまとともに1年の収穫を喜び、感謝するのです。

お墓参りの時に持っていくと良いもの

手桶と仏花

夏のお盆に比べると、秋のお彼岸は暑さもやわらぐ絶好のお墓参り日和です。持ち物を工夫することで、さらにお墓参りが充実したものになるでしょう。

お供え物

お墓参りの際にはお供え物を持参します。お花、お供え物、線香やローソクなどです。おはぎのような、秋のお彼岸ならではのものをお供えするとより雰囲気が出て、心を込められるでしょう。ただし、最近ではほとんどの墓地や霊園が、食べ物や飲み物をお供えしたままにしておくことを禁止しています。お供え物は自宅に持ち帰ってお下がりとしていただきましょう。

掃除道具

お墓参りにはお墓掃除が必須です。掃除道具を充実させておくことで作業がスムーズにはかどります。墓石を拭き取るタオルやスポンジ、花立や彫刻部分の内側を磨くための歯ブラシや柄付きブラシなどがあれば便利です。

その他・便利グッズ

お彼岸とは言っても、残暑が厳しいこともしばしばです。帽子やタオル、水分補給のための飲み物などの暑さ対策をして、体調を崩さないよう気をつけましょう。長時間の作業になるのであれば日よけのためにパラソルなどを持ち込んでも良いでしょう。また、墓地には蚊などの虫がたくさんいます。蚊取り線香や虫除けスプレーがあればストレスなくお墓掃除ができます。

よくあるお墓参りの疑問

丸とバツのカード

お墓参りに関する素朴な疑問にお答えします。

質問:「お墓に水をかけてもいいの?」

お墓に水をかけてもいいか、よくないかの論争はいろんな所で目にしますが、水をかけることはなんら問題ありません。一部、「(墓石を人の体と見立てて)頭から水をかけるのは失礼だ」「急に水をかけると墓石が割れてしまう」などの声がありますが、前者は仏教的な根拠はありませんし、後者に至っては、普段から屋外で雨の水にさらされる墓石ですからなんら問題ないでしょう。

実際に筆者は何百件と墓前法要の現場に立ち会っていますが、各宗派のさまざまなお坊さんが、墓地や墓石に水をかけるよう家族に促しています。

ちなみに、墓石には「水鉢(みずばち)」と呼ばれる石があり、そこに必ず水をためるためのくぼみが作られています。これには雨水を溜めて、お供えの水がなくならないようにするという意味があります。

質問:「彼岸花をお供えしてはいけないのはなぜ?」

秋のお彼岸といえば彼岸花です。田んぼのあぜ道や墓地の側に咲く真紅の花は別名「曼珠沙華」とも呼ばれ、その語源は法華経にさかのぼります。

さて、この彼岸花をお供えのお花にしてはいけないと言われています。筆者の故郷では、「彼岸花を家に持ち帰ったりお墓に供えたりすると火事になってしまう」と言われたものでした。

不吉なお花とされる彼岸花。しかし人々はこの有毒性の花を害虫や害獣予防のために利用してきました。人為的に彼岸花を植えることで、ネズミやモグラや虫などから田畑を守り、墓地を荒らす動物を防いできたのです。また、彼岸花にまつわる迷信は、子どもたちが毒のある彼岸花に触れないための戒めから始まったものだと言われています。

まとめ

秋分の日はお墓参りの日。空を見上げれば秋空が広がり、気持ちの良い空気の中でお墓参りができるでしょう。「季節が変わったね」「今年も無事に収穫できました」「あんなことやこんなことがあったよ」と、お花とお供え物を持って、ご先祖さまに会いに行ってみてはいかがですか?


監修者コメント


監修者
終活・葬送ソーシャルワーカー
吉川美津子

お墓にお供えする花の種類について、あまり気にする必要はないのですが、日持ちのする花が好まれます。トゲのある場合は、清掃の際にケガをしやすいので避けるか、トゲの部分はあらかじめ取ってお供えしましょう。ユリについては「キリスト教をイメージするのでダメ」という人もいますが、実は日本はユリ王国ともいわれ、北海道から沖縄まで15種ものユリが自生しています。ユリは古事記にも記録があり、万葉集でも〇首詠まれているほど日本人に馴染みのある花なのです。
お供えする際には、花粉が落ちると墓石に色が付いてしまう可能性があるので、あらかじめ取っておくと良いでしょう。